子育てや家族のあり方が多様になる中、企業は従業員の選択をどう支えればよいのか。こども家庭庁・ピジョンとともに、働きながら里親になる人を支える企業の役割と、そこに表れる企業姿勢について考えた。
「配慮」ではなくキャリアを支える
ピジョンが人事施策を通じて目指すのは、「社員一人ひとりが自分らしく輝く会社」だ。同社では、特定のライフイベントを抱える社員だけを手厚く支援するのではなく、まず全社員が仕事とプライベートを両立できる環境を整えることを基本に置く。そのうえで、育児や介護などのライフイベントを迎えた社員も、キャリアを継続できる制度を設計している。
重視しているのが、社員の声を反映し、実際に使われる「生きた制度」にすることだ。ピジョン 人事部 人事労務グループ マネージャーの渡辺雪香氏は、「一人のビジネスパーソンとして、生き生きと仕事をしてもらうためにはどうすべきか」を考え、困りごとを取り除くことが人事の役割だと話す。
それが表れているのが「ライフ・デザイン休暇・休職制度」だ。もともとは、不妊治療を理由に退職する社員を減らすことを目指して設けた制度だった。その後、養子縁組や里親として子どもを迎えることを検討する社員から相談が寄せられ、「新しい家族を迎え入れる」ための制度へと対象を広げた。
多様な「子どもを迎える」選択を支えることは、働きやすい環境づくりであると同時に、企業姿勢を示すことにもつながる。
働きながら里親になる
こども家庭庁 支援局 家庭福祉課 課長補佐の石田有介氏は、さまざまな事情によって実の親と暮らせない子どもが国内に約4万2000人いると説明した。こうした子どもを家庭に迎え入れて養育する仕組みのひとつが里親制度だ。養子縁組とは異なり、里親と子どもの間に法律上の親子関係は生じず、一定期間をともに過ごした後、実親のもとへ戻るケースもある。
里親は、特別な家庭だけが担うものでもない。現在、子どもを受け入れている里親家庭の約半数は共働きだという。講演で紹介された動画には、里親になるため退職を申し出た社員に対し、上司が必要な休業期間を尋ね、人事と相談した結果、休業しながら子どもを迎え入れた事例も登場した。
企業が制度を「知る」ことから
子どもを迎えた直後には、愛着関係を築くために一定期間、密に接する時間が必要になる。一方で、既存の育児休業制度だけでは対応できない場合もある。石田氏は、柔軟な働き方など、企業による理解と支援が里親の精神的な負担を軽減すると話した。
ただ、すべての企業が里親専用の制度を設ける必要があるわけではない。まずは、里親という子育てのあり方を知り、多様な働き方や生き方のひとつとして受け止める。必要になったときに社員の選択を支えられる環境を整えることが、企業にできる第一歩となる。
企業姿勢として伝える
こうした取り組みは、人事部門の中だけに閉じるものでもない。ピジョンでは、人事とコーポレートブランディング部門が連携し、社会の動きと自社の制度を結びつけながら社外発信を進めている。ブランディング側からも、発信できる人事施策があれば共有してほしいと働きかけているという。
制度自体だけでなく、なぜその制度をつくったのか、社員のどのような声から生まれたのかまで伝える。そこには、「社員の生き方にどう向き合うのか」という企業姿勢が表れる。多様な子育てを支えることは、働きやすい環境づくりであると同時に、企業らしさを社内外に伝える機会にもなり得る。
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