広告界の業界団体である公益社団法人全日本広告連盟(全広連)が今年10月、創立60周年を迎えるに当たり、記念大会が5月に青森で開かれました。この企画は全広連と来春60周年を迎える宣伝会議とのコラボレーションの一環で、青森大会のレポートや地域ごとの取り組みを紹介します。
全広連60周年の青森大会の目玉は、大手広告主でブランドや宣伝・制作を統括する5人によるパネルディスカッション。中央大学ビジネススクール・田中洋教授が広告市場の予測と今後起こりうるメディア環境変化について解説したのち、各社の事例がそれぞれ紹介されました。パネリスト同士の質疑も行われ、2時間にわたる密度の濃い議論が繰り広げられました。第1回は、田中教授による基調講演と、トヨタマーケティングジャパン・河本二郎氏の話を中心に紹介します。
▽パネリスト
- トヨタマーケティングジャパン・河本二郎氏
- サントリービジネスエキスパート・久保田和昌氏
- 味の素・島崎紘而氏
- 資生堂・ズナイデン房子氏
- 大和ハウス工業・山本 誠氏
▽モデレーター
- 中央大学ビジネススクール教授・田中 洋氏
【基調講演】進む「メディア分化」――田中洋・中央大学ビジネススクール教授
2020年の広告費、8~9兆に伸長見込み

《コーディネーター》田中 洋氏
電通マーケティングディレクター、法政大学教授、
コロンビア大学客員研究員などを経て中央大学
ビジネススクール教授。日本マーケティング学
会副会長。日本広告学会賞、中央大学学術研
究奨励賞、東京広告協会白川忍賞受賞。
経済産業省がまとめた景気予測シナリオをもとに日本の広告費の推移を予測したところ、2020年の広告費は慎重に見積もって7兆7000億円、成長軌道に乗ったとして8兆9000億円程度に伸長すると見込んでいます。これは11年度(5兆7096億円、電通調べ)の1.5倍ほどで、うちインターネットは2.24倍、マスメディアは1.54倍になると試算しています。
メディアの将来のあり方を占うキーワードは「Media disintegration(メディア分化)」。デバイス、コンテンツ、プラットフォームの3つの要素がより自由に結合して、新しいメディア環境を形成することを指します。コンテンツだけを見ても、ビデオオンデマンド、ユーチューブ、インターネットラジオなど、著作権に縛られながらも、さまざまな形で流通が広がっています。もはやデバイスやプラットフォームを問わなくなりました。