ユーザーと一緒にブランドを育てるZIMAのファスト・エクスペリエンス
1993年に米国で誕生し、97年に日本で発売されたリキュール「ZIMA(ジーマ)」。知名度ゼロからスタートした同ブランドは、いかにして若者に支持されるお酒となったのか。ZIMAの販売を手がけるモルソン・クアーズ・ジャパンの矢野氏は「ZIMAは若者文化とともに、ここまで育ってきたブランド」と話す。
ZIMAの人気に最初に火が付いたのは都心ではなく、実は富山県。「日本に上陸した当初、ブランドの知名度がほとんどなく、商談もなかなかうまくいかない中、富山県に面白いと言ってくれる取引先がいた」(矢野氏)。
売れた場所も、意外なことに、若者が集まる店ではなく割烹料理店だった。「そうした事実から、我々が思ったのは『ZIMAは場所を選ばない。でも人を選ぶ』ということだった」――消費者の購買行動や、商品・ブランドの認知の広がり方は、企業側の想像を超えるということを実感したという。
そんなZIMAのブランドコミュニケーションにおいては、「ブランドが発信したいことではなく、消費者が何に価値を感じ、どんな問題意識を持っているのかをまず考える」と矢野氏。それらをコミュニケーションの軸に据えることで、消費者の共感を喚起することができるという。
とは言え、最初のうちは大きな予算もなく、テレビCMで広くリーチを獲得し、トライアルを促す施策は実現できない。「そこでまず、飲食店や小売店頭といった購買の現場を起点にトライアルを促す。そしてそれを認知してもらうことで、次のトライアルを生み出す仕組みを考えた。
つまり、『あれ何?私もやってみたい!』という興味・関心を喚起することで、ブランド認知を広げていく戦法” ファスト・エクスペリエンス” を採った」(矢野氏)。
具体的には、無色透明のZIMAにさまざまなリキュールを足してカラフルにする「カラーZIMA」、凍らせて喉ごしを変える「フラペZIMA」、有名人の唇を象ったマスコットを飲み口に装着してラッパ飲みを楽しんでもらう「KISS A ZIMA」など、ZIMAの楽しい飲み方を提案する施策を次々と展開。
いずれも売上が1.5~3倍程度伸びた。店側に大きな負担をかけない施策が好評で、『新しい企画はないの?』と商談にも前向きに応じてもらえるようになったという。
「カルチャーや共感で消費者を引き付け、独特の体験をさせることで、ブランドの世界へと巻き込む。ファスト・エクスペリエンスを通じて、今後もカスタマーエクイティーの向上を図っていきたい」と話した。
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