なぜ、このお店で買うのか?お客様に選ばれる理由をつくるブランド・コミュニケーション
商品・サービスのカテゴリーを問わず、市場におけるコモディティ化が言われるようになって久しい。こうした状況下、EC市場は規模こそ成長基調にあるものの、新規参入事業者が多く、競争は激化の一途を辿っている。
本講演では、ファッションECサイト「MAGASEEK」を運営するマガシークの井上直也氏と、食材宅配ネットスーパー「Oisix」を運営するオイシックスの堤 祐輔氏が登壇。インターネットが急速に普及し始める2000年、時期を同じくして創業した2社が、メディア環境が激変する環境下での、今後の戦略について意見を交わした。
マガシーク・井上氏は「創業当時は『雑誌で見た商品を買える』というコンセプトが事業の柱だったが、ビジネスをさらに拡大させるために、マガシークとしての独自性・ブランド力を打ち出す必要がでてきた」と話し、近年ブランディングに力を入れている背景を話した。
2012年にはサイトの大幅リニューアル、さらに初のテレビCMも放映。そこで打ち出したコンセプトが「自分のためのセレクトショップ」だった。
さらに「洋服は、食品や飲料のような生活必需品ではないが、好きな洋服を着る楽しさや、買った後の心の充足感といったものを伝えていくことで、お客さまに選んでいただけるサイトになるはず」との考えから、コミュニケーションにおいては「明日が楽しくなるファッションサイト」というコンセプトも設定。
買うまでの利便性や商品自体の魅力だけでなく、購入した後の満足度をいかに高めるかも重視している。
またNTTドコモと提携し、10月にはドコモの「dマーケット」内に、ファッション専門のECサイト「d fashion」を開設した。「d fashion」をきっかけに、男性層にもユーザーを増やしていきたい考えだ。
オイシックス・堤氏は「EC事業者は増えているが、コンペティターは意識していない。ある意味、自分たちのライバルはお客さま。
常にお客さまに求められる以上の提案、想像をいい意味で裏切るような新しい提案をして、『新たな市場をつくる』ことを目指している」と話した。
最近ではリアル店舗も開設するなど、創業以来、扱う商品や販売スタイルも拡大している。その背景について、「オイシックスは、食材の小売り業でも、安心・安全の小売り業でもない。創業以来、『食生活の提案』こそが、私たちが提供したい価値と考えている。
だからこそ、『食べるところ』まで考えた、食生活が楽しくなる提案・コミュニケーションを重視している」と話した。具体的には、商品の野菜が届いた頃に、その美味しい食べ方を生産者自らが紹介するメッセージをメールで届けるなど、食べる時の体験がより豊かになるようなコミュニケーションを考え、実行しているという。
商品を売って終わりではなく、購入時の楽しさや購入後の満足度にも着目し、ユーザーの体験価値を高めようとしている2社。
扱う商品、業態は違えども、ブランド飽和と言える時代の中、選ばれる” お店” になるためのポイントは、こんなところにあるのではないだろうか。
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