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2日間編集室にこもるレベルのものができていた
「あれ? 結局何を不思議に思ってたんだっけ?」
ニューヨークに移ってからの私は、完全に「必死こいてる」状態で、一心不乱に新しい状況と新しい人たちへの対応を続けてきました。
日本で仕事をしている間、外国で仕事をする、という上で私にはとても不思議に思っていたことがあったのです。その秘密を解き明かしたい、というのも海外に移った理由だったはずなのです。
しかし、後ろから迫ってくる巨大な岩から必死で逃げたり、あと数秒で爆発する時限爆弾を解除したり、迫り来る究竟な男たちの大群と一人で対峙したり、みたいなレベルのスペクタクルな日々を送っているうちに、その謎が一体何だったのかを忘れてしまったのです。
そんな「海外で仕事する上で解き明かしたかった最大の謎」が何だったのかを思い出したのは、前々回に取り上げた「cut/copy」のミュージックビデオの編集をしていたときでした。
このコラムにも書いた通り、このビデオの撮影は非常にシビアな環境で行われていたし、撮れていたカットも限られていて、アングルや展開ももともと考えていたのと違ってきていたり、「あーこりゃ編集すごく大変だろうな」「編集室に数日こもって、ゴリゴリやってどうにかなるかどうかだな」「やべーなー」なんて思っていました。
数晩徹夜して、週末もつぶしてとにかく細かく編集しないとダメだろう、という予測をしていたのです。しかし編集をしてくれるエディターはアメリカ人ですし、ワーカーホリックな日本人に付き合ってくれるわけがないだろうとも思っていました。
こちらの人たちは、夜10時まで働けば相当なワーカーホリックの部類で、「いやーよく働いた」なんて言って飲みにでも行ってしまうのです。
とにかく、編集に入る前は不安が大きかったわけです。このビデオをどうにか仕上げられる感じがしなかったのです。焦っていました。
ところが。
エディターに「素材の整理して流れをつくっておくから○○時に来て」と言われて編集室に入り、彼が仮組みした最初の編集を見た瞬間、私は言葉を失いました。
驚くべきことに、大体できているのです。
「あそこをこうして、ああして、順番を変えて…」なんて、自分の脳内でシミュレーションしていたことがほとんど完了している上に、エディターの感覚で、よりよくできそうな部分を見つけて、想定していなかったけれど「確かにこっちのほうがいい」という状態が、最初の段階でできていたのです。
編集点や曲へのシンクロも既にかなり気持ちいい。
私の感覚だと、日本でこれを同じ状態に持って行く場合、誇張ではなくて2日編集室に入ってやっとどうにかなるか、というレベルのものが、既にできていたのです。
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