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アーティストの売り出し方がドラスティックに変わってきた
阿部:2015年に100周年を迎えた安川電機さんから、100周年記念の新社屋のパブリックスペースにモニュメントを作りたいとお話がありました。それを後藤繁雄さんに相談し、名和晃平さんを紹介していただいたのがこのトークショーのきっかけです。今日のテーマは「アートを注文する」で、企業とアートの関係を革新するプロデュースについて、話を進めていけたらと思います。
後藤:90年代終わりぐらいから、コンテンポラリーアートやコレクターの顔ぶれが変わりました。グローバル化が進み、コンテンポラリーアート市場が活性化してきたからです。コンテンポラリーアート市場はグローバルで7兆円近い規模と言われています。アーティストをプロモーションする方法も、これまでの画商が作品を売るビジネスから、ライセンシービジネスや、企業と組み合わせてコンテンツ開発をするなど、大きく変わってきました。しかし、国内には、そうした動きに対応できるコマーシャルギャラリーが開発されていません。そこで、アーティストが企業とジョイントすることでお互いがWin&Winになるような新しい仕組み作りにずっと取り組んでいます。芸能プロダクションならぬ、芸術プロダクションみたいなことをやっているわけです。
安川電機は世界的に有名な産業ロボットの会社です。100周年を迎えたこの企業には、これから100年の間日本の顔になるようなアーティストを選出しなければいけない。そう考え、名和さんをキャスティングしました。名和さんが面白いのは、自分でプロダクションを持っているところです。昔のアーティストは海外の強いギャラリーに移籍することで海外進出したものですが、新しいアーティストは名和さんのように自分でプロダクションをつくり、海外のギャラリーと組んでプロモートしています。アーティストとギャラリーの関係は進化しているのです。今日はこれから名和くんに自身の作品をプレゼンテーションしてもらいます。
名和:彫刻家としての自分の作品をまず見ていただきます。2015年3月に東京のスカイ・ザ・バスハウスで物理的な力を目に見える形にした個展「FORCE」を開催しました。僕は、ひとつの彫刻的概念を、彫刻、ペインティング、ドローイング、映像、舞台など、いろんなメディアに置き換えていきます。例えばこの《Moment(モーメント)》は、振り子運動でドローイングを描くシリーズ。重力を視覚化したペインティング作品《Direction(ダイレクション)》のシリーズも展示しました。また、床に黒いシリコーンオイルのプールを作り、そのオイルを6メートル高の天井に循環させて、そこから糸のようにつながったままオイルが流れ続ける新作《Force(フォース)》も発表しました。天井から落ちてくるシリコーンオイルは、黒い雨にも見えますし、情報がシャワーのように常に流れ続けているようにも感じられます。
また、《PixCell(ピクセル)》シリーズは、インターネットで収集したオブジェに大小のクリスタルガラスの球体で被覆した作品シリーズです。球体はレンズです。いま地球上にレンズを持ったメディアは無数にあります。レンズは視覚メディアの象徴なんです。「PixCell」(映像の細胞)は、世界中のレンズがオブジェに接して塊ができているイメージを表現しています。オブジェはレンズを通してしか見えない存在になっている。極めて現代的なものではないかということで、このフォーマットを作り続けています。
現代美術は、空間に対してどう存在するが大事だと考えています。空間にどういうバランスでアートワークが配置されていて、光や人が入った時にどういう感じになるのか、注意深く探りながら作品を作っていきます。彫刻一つひとつが作品だと思っている方が多いけど、彫刻は単なるオブジェクトではありません。実際は物質体験だったり、思考の体験だったり、「彫刻=体験」なんです。
最新作はベルギーのコレオグラファー(振付師)のDamien Jalet(ダミアン・ジャレ)と共同制作した舞台《Vessel(ベッセル)》で、舞台のコンセプトからステージデザイン、空間の演出まで担当しました。舞台上で激しく動くと個体になり、止まると液体化してずっと沈んでいく、そんな特殊な素材を使用した実験的な舞台になっています。
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