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PR会社の仕事は、報道対応だけではない!ロビー活動で「PRアワード」受賞のその後

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日本パブリックリレーションズ協会(PRSJ)が主催する「PRアワードグランプリ」の今年の応募締め切りが迫っている(10月24日17:00必着)。PRアワードは、直近1年間に成果が上がったパブリックリレーションズ(PR)の活動事例を募集し、審査・表彰する、国内唯一のアワードだ。

審査委員長の嶋浩一郎氏(博報堂ケトル 代表取締役社長・共同CEO)と審査員の上岡典彦氏(資生堂 コーポレートコミュニケーション本部 広報部長)は、受賞せずとも、応募過程にすでにエントリーメリットがあると話す(参照)が、せっかくエントリーするのなら受賞に近づきたいし、受賞の暁には、何が待っているのかも知りたい。そこで、昨年初めてグランプリを獲得した、井之上パブリックリレーションズの尾上玲円奈氏に、受賞がもたらす変化について聞いた。

左から、上岡典彦審査員、尾上玲円奈氏、嶋浩一郎審査委員長

グランプリ受賞で、新しい相談やハードルの高い仕事が増えた

嶋浩一郎 審査委員長(以下、嶋):2016年にPRアワードの審査基準などを刷新し、リニューアル第1号としてグランプリを受賞したのが井之上パブリックリレーションズです。エントリーは、クラウド型の経費管理システムを提供する、コンカーの「スマホ利用による領収書電子化を実現した規制緩和PRプログラム」でしたね。グランプリを受賞したことで、何か変化はありましたか?

尾上玲円奈(以下、尾上):国内クライアントから当社にご相談いただく案件数はグッと増えましたね。しかも、コンカーと同じようなガバメントリレーションズを含む相談や、投資家を巻き込むようなインベスターリレーションズ関連の内容が増えています。おそらく、PRはメディアリレーションズ活動だけじゃない、ガバメントリレーションズやインベスターリレーションズもその範疇なのだ、と気付いていただけたのだと思います。

嶋:それは、すばらしいね! PRの技の多様さを業界の内外に指し示したわけですからね。そのコンカーのプロジェクトについて、改めて聞かせてください。

尾上:当社は、2011年に米企業コンカーが日本で事業を開始した当時から、三村真宗社長のパートナーとして同社のパブリックリレーションズ(PR)を手がけてきました。規制緩和を主眼に置いた本プロジェクトは2014年から本格着手したものです。

2016年のPRアワード表彰式の様子。グランプリを受賞した井之上PRの横田和明氏(左)と尾上玲円奈氏(右)。中央は日本パブリックリレーションズ協会 近見竹彦理事長

嶋:最初は、コンカーの事業拡大という目的で本プロジェクトを開始したと聞いています。

尾上:はい、当初はそういう目的でした。しかし、いざリサーチを始めると、紙での経費精算にかかる人件費や保管コストなどは、社会全体で約1兆円のコストになることが試算できました。日本の労働生産性のことを考えたら、コンカー1社の問題ではないということに、クライアントを含めて全員が気づきました。

上岡典彦 審査員(以下、上岡):規制緩和を実現するまでのPRスキルの卓越さは、もちろんすばらしかったのですが、私の心に一番響いたのは、コンカー・三村社長のコメントです。
「最初は売り上げを伸ばすために始めたが、途中からは、社会全体の発展のためにどう役立てるのかという視点に完全にシフトした」とお話ししていました。PR活動を通じて、会社の経営方針、経営者の考え方そのものをも変えてしまったということですよね。PRの持つ“力”を改めて実感しました。

 

コンカーと井之上PRは、e文書法が規制緩和された時の日本全体で期待できる効果を試算。メディアはもちろん、政府、業界団体、経営者、ビジネスパーソンなど、それぞれのターゲットが興味を持つようにわかりやすく提示した。

尾上:三村社長は、“PRの力”を信頼してくれているんです。就任当時、チームで入念に準備したメディアのインタビューで、コンカーの日本進出と新社長就任を世の中に知ってもらうことができた、という経験を通じて、PRについて、とても深く理解していただけるようになりました。今では、PRの概念やフレームワークも積極的に学ばれていて、
「自分たちがやろうとしていることは、マーケティングドリブンじゃない。PRドリブン経営(PRを基軸に経営戦略を考える)だ」とおっしゃっています。

嶋:日本の経営者はマーケティングを重視しがちなのですが、会社経営には、市場の動きをウォッチするマーケティングと、世論の動きをウォッチするPR、両方の視点が欠かせません。自分の経験を振り返っても、マーケティングの思考プロセスとPR的思考プロセスを併せ持った提案をすると、非常にクライアントから感謝されることが多いですね。

次ページ 「グランプリの受賞で、伝統技能が継承されつつある!」へ続く