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レシピアプリで販売促進、EC大国イギリスのスーパーマーケット— ロンドン街角レポート(3)

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【前回】「英国軍のリクルート活動2018 — ロンドン街角レポート(2)」はこちら

「イギリスは料理が美味しくない」。この不名誉な評価はこの国へのステレオタイプのひとつになっています。筆者は大学時代、イギリスへ留学し4年半を過ごしましたが、確かに外食が楽しかった思い出はあまりありません。しかし、お料理上手なお母さまを持つ友人宅に招かれて伝統的なイギリス料理を振舞ってもらい、「イギリスで美味しいのは家庭料理なのだ」という認識を持ちました。

しかし、この20年で状況は大きく変わり、以前よりも美味しく、そして健康志向の強いレストランが増えたようです。従来のインド、中国、東欧諸国やアフリカに加え、さまざまな国籍の移民が増加し、バリエーション豊富な多国籍料理が楽しめるようになったことや、国民的に成人病や児童の肥満が課題となり、そこへの問題意識から健康志向が高まったことなどが理由に挙げられるでしょう。ミシュランレストランの数も増えました。

ただ、1000円札1枚でもレストランやカフェで食事を楽しめる日本と違い、多くの店ではサービス料を請求されることもあって、イギリスで外食を楽しむにはお金がかかります。そこで、主な食事は家でということになります。どこの国でもスーパーを見るとその国の人の食卓が覗けると言いますが、イギリスのスーパーでは移民の数を反映してか、近隣のヨーロッパ諸国からアジア、アフリカ、中東などさまざまな国の食材を手に入れることができ、中には日本の食材もあります。普通のスーパーでも味噌、醤油、みりん、酒、豆腐、海苔やワカメ、そばにうどんなどが売られていて、これらは日本人と全く同じ使い方をすることもあれば、味噌や醤油は煮込み料理の味付け、豆腐はサラダなどにも用いられることもあります。

こうした現地の人々にとってはエキゾチックなものを含む食材の数々を紹介し、より多くの人にバラエティに富んだ食を楽しんでもらおうと、イギリスのスーパーには、しばしば下記の写真のようなレシピのリーフレットが置かれています。

日本では有名なレシピアプリは専門企業が立ち上げていますが、イギリスでは同様のレシピ専門サイトの他に、スーパーがつくったレシピアプリが人気です。また、アメリカ、中国に次ぐEC大国と呼ばれるこの国ではオンラインスーパーの人気が高く、スマートフォンやタブレット専用のショッピングアプリやPCサイトを経由して買い物をするのがポピュラーですが、こうしたアプリやサイト内にはそのスーパーが販売している商品で作る料理のレシピが紹介されていて、材料のページには商品リストが並び、クリックするとショッピングページに移動するようになっています。早朝に注文すれば同日夜の配達を頼むことも可能なので、その日の夕食メニューに迷う消費者にとっては買うものを事前に決めて買い物の時間を節約し、効率良く食事の準備を整えることができる便利なアイテムです。そして、スーパーにとっては消費者のショッピング体系を向上させ、売上促進につながる施策でもあります。

下記は参考サイトになります。

全て自社ブランドの商品のみを取り扱う大手スーパー マークス&スペンサーのレシピサイトとアプリ。
http://www.cookwithmands.com

オンラインスーパー最大手 オカドのレシピサイトにあるレシピの一例。Productsのタブをクリックすると、料理に使う食材一覧が出て、クリックするとショッピングサイトへジャンプします。
https://www.ocado.com/webshop/recipe/Alfred-Prasads-Mango-Salad/21367?selectedCategories=9688

実店舗も持つ大手スーパー、セインズベリーズのレシピサイトのレシピ一例。料理の難易度、所要時間、材料費も明示されます。Buy ingredients from this recipeをクリックするとショッピングサイトにジャンプします。
https://recipes.sainsburys.co.uk/recipes

小西純子氏

神奈川県鎌倉市生まれ。英国ウエールズ大学アベリストウィス校にて美術史の学士号、同国マンチェスター大学にてアートギャラリー&博物館学の修士号を取得。日本帰国後、都内外資系ホテルにて11年勤務、総支配人秘書を経て広報を担当。館内での音楽やアートイベントの仕掛け、ホテル滞在経験、レストランでのダイニングエクスペリエンスに特化したプロモーションなどに携わる。趣味は音楽と美術。