マーケターが陥りやすいもうひとつの罠と幻想
前回の記事、『
マーケターが陥りやすい「ターゲティングの罠」と「ロイヤリティの幻想」
』の反響が大きかったので、今回はその続編として、森岡毅氏とバイロン・シャープ氏がともに強調するマーケティングで注力すべき指標としての「メンタルアベイラビリティ」(バイロン・シャープ氏の用語では「認知度」と「プレファレンス(選好性)」を合わせたもの)についてさらに解説したいと思います。
なぜなら「メンタルアベイラビリティ」には、マーケターが陥りやすい別の「罠」と「幻想」が潜んでいるからです。すなわちそれは以下のふたつです。
1. ブランドはターゲット層の心の中に唯一の強いポジション(意味)を持つべきである。
2. 広告は消費者に他社と明確に差別化されたブランドの態度変容を起こさせるものである。
これらは長らくマーケターにとっては間違いない真理でしたが、前回のコラムの延長による論理によれば、これらはすべて間違いということになります。それでは、そう語る根拠を説明してきましょう。
ブランドポジショニングはターゲティングの罠と同じ
ジャック・トラウト氏とアル・ライズ氏の共著である『ポジショニング戦略』の中で語られたり、フィリップ・コトラー氏が提唱した「セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニング(STP)」の中にある、ポジショニングという考え方は、顧客の心の中で生まれるブランドに関する記憶と連想について語ったものです。すなわち、それは強いブランドこそ、顧客の心の中に他社とは明確に区別された唯一無二のポジション(意味)が築かれている、ということです。たとえばコカ・コーラなら「リフレッシュする飲み物」のように。
