対談者
大森孝宏 氏:森永製菓 マーケティング本部 菓子食品マーケティング部 新カテゴリーマネージャー
森洋亮 氏:ジェイアール東日本企画 第五営業局 次長
既成概念にとらわれない商品開発を目指したプロジェクトが得た健康というニーズへの気づき
森:『たべるシールド乳酸菌®』シリーズの開発はどのようにスタートしたのでしょうか。
大森:私は、マーケティング部内にある新カテゴリーというグループに所属しています。従来からチョコレート、ビスケット、キャンディーといったカテゴリーで区分けしてマーケティングや商品開発をすすめていますが、そうした枠組みや既成概念にとらわれない、次世代の柱となるブランドを生み出そうとして結成されたグループです。
メーカーとしては顧客視点を意識しながらも、どうしてもプロダクトアウト的になりがちです。そこで、新カテゴリーグループとしては、もう一度顧客視点に立ち返り、お客様のニーズからコンセプトを生み出そうとプロジェクトをスタートしました。そのプロジェクトには、マーケティング部だけでなくもっと幅広くアイディアを求めようという狙いから、営業部門など、さまざまな部署からメンバーを集め、コンセプトづくりをはじめました。
最終的に製造が可能かどうかは、必ず乗り越えなければならない壁ではあるのですが、まずはそこにとらわれず、お客様が求めているもの、今の商品では満たされていない未充足ニーズといったところに着目してアイデアを出すことを目指しました。
森:消費者の行動やニーズについて、何か調査などは行なったのですか。
大森:お客様のニーズについては、普段から実施している生活動向調査などのデータも活用しましたが、特に、お客様の買い物行動の観察やターゲットを絞ったニーズ探索インタビューなどを行いました。
森:開発の議論がどのように『たべるシールド乳酸菌® 』シリーズにつながったのですか。
大森:お客様の根本的な大きなニーズとして「健康でありたい」というものがあります。冬場なら、多くの人が体調を大きく崩さないようにしたいと思っています。まずはそうした大きなニーズに着目しました。
いくつかのターゲット群とニーズと組み合わせ、最も健康を維持したいのは誰かを考えたときに、会社を休めないと切実に思っている忙しいビジネスパーソンをイメージしました。
また、日常的にできる健康法として、多くの人がヨーグルトや発酵食品から乳酸菌をとっています。乳酸菌がなんとなく体に良さそうだという意識もある程度浸透していますが、ヨーグルトはいつでも、どこでも食べられるわけではありません。保管も持ち運びも難しい。そこに未充足ニーズがあるのではないかと想定しました。
森:社会的にニーズの高い健康、それを最も意識しているビジネスバーソンに届けば、より広く受け入れられるだろうと考えたわけですね。商品形態としてタブレットを選んだことと、乳酸菌の活用は森永乳業さんが「シールド乳酸菌® 」を開発していたことも大きかったのでしょうか。
大森:必ずしもシールド乳酸菌® が前提にあったわけではありません。ニーズを考えたときにヨーグルトや乳酸菌の想起につながり、森永乳業さんとのつながりもありましたので、提供を受けることになりました。
タブレットやキャンディーは菓子の中でも管理や持ち運びがしやすいので、どこでも食べられます。当社には40年以上愛されている「森永ラムネ」があり、錠菓に関しては知見がありました。
健康というニーズから導き出した乳酸菌と、新素材「シールド乳酸菌® 」を持っていた森永乳業さんが近いところにいた、私たちに錠菓の知見があったという諸条件が重なったことで誕生することができたという感じです。
森:森永乳業さんとは普段からコミュニケーションを取っているのですか。
大森:常にコミュニケーションは取っています。特に新カテゴリーについては、健康ニーズには常に着目していますので、定期的に情報交換をさせていただいています。私たちの関係は他の菓子会社にはない強みになっていると思うので、今後も差別化ポイントにできればと考えています。
目指すのは「冬の定番」ブランド インバウンドにも商機が
森:当時、シールド乳酸菌®の認知はまだ進んでいなかったと思いますし、それを含んだお菓子ということで、立ち上げ時の苦労はあったのでしょうか。
大森:市場にない商品だったので、私たちも浸透には時間がかかるかもしれない、という覚悟はありました。ただ、機能的にも形状的にもわかりやすさがあったのか、商談での反応も比較的良かったと記憶しています。当時、秋の新商品はチョコレートがメインではあるのですが、そんななかでも予想以上に支持をいただけました。
森:広告などのコミュニケーションはどのような施策をとられたのでしょうか。
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