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「CES2019」と「CES2020」の間 ― いまGlicoの中で、何が起きているのか? スポーツテック篇

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2018年に江崎グリコ(以下、Glico)では、米国・ラスベガスで開催された「CES(コンシューマー・エレクトロニクスショー)2018」に初出展しました。当時は世界的な家電の見本市である「CES」に、なぜ食品メーカーのGlicoが出展したのか? と各種メディアでも取り上げてもらいました。
出展の理由は近年、Glicoがテクノロジーを既存事業に取り入れることで、今までにない新しい顧客体験の提供に取り組んできたためです。以後、2019年の「CES」も継続して視察しています。「CES2020」の開催が来年1月と目の前に迫る中、この1年の間にGlicoの中で起きている、テクノロジーの潮流を踏まえて取り組んだ事例を紹介したいと思います。

【参考】玉井氏による「CES2019」のレポート
デジタライゼーションにより、企業はパーソナライゼーションに舵を切る — 「CES2019」現地レポート①
データ時代に勝ち残るのは、信頼できる企業だけ — 「CES2019」現地レポート②
ボイスが2020年代の新・情報プラットフォームになる — 「CES2019」現地レポート③

スポーツテックの進化に、eスポーツの可能性が見えた

今年1月に開催された「CES2019」で、私が未来の兆しを感じたひとつがスポーツゾーンでした。アスリートのトレーニングやパフォーマンス向上を支援するAI、光学追跡技術、バーチャルリアリティ、そしてシミュレーションゴルフの様に実際に体を動かして体験するテニスや野球、さらにはBOTと対戦するボクシングなど。多様なスポーツテックおよび没入型メディア(VRなど)が登場していました。

こうしたスポーツテックの進化により、拡大が予想されるのが、eスポーツです。これまで私は、eスポーツとゲームを同義にとらえていたのですが、実際に体を動かしながら体験するゲームが今後さらに進化していくことを考えると、eスポーツは、いわゆる私たちが考える、画面に向かってコントロールを動かすザ・ゲームではなくなり、e空間(バーチャル空間なのかもしくは全く新しい没入型の空間)でスポーツをする(実際に体を動かす)というものになっていくと感じるようになりました。

「CES2019」で感じたeスポーツの兆しを受け、「Pocky」をeスポーツに参入させることにし、カプコン様から販売されている対戦格闘ゲーム『Street Fighter V』とのグローバルコラボレーションキャンペーン『Pocky K.O. Challenge』を始めることにしました。「Pocky K.O.」とは、“自分の体力ゲージを「Pockyの比率」の状態”で相手をK.O.すること。eスポーツの中でも存在感のある『Street Fighter V』で、プロアマ問わずPocky K.O.に挑戦して楽しんでいただきたいという体験の提供です。

『Street Fighter』シリーズをはじめ、eスポーツには自分の体力を示す体力ゲージが出てくることが多いですが、これがPockyに見える瞬間があるということに気づいたことがきっかけでした。Pockyに見える状態でK.O.してもらう体験を提供するのはどうだろうか。一見馬鹿らしい、でもやってみたくなる、さらに意外と難しい。そんな体験であればたくさんのeスポーツプレイヤーに楽しんでいただける可能性があるのではないかと考えました。

今年のSpikes Asiaでも「WTF」という概念が紹介されており、多くの人が参加することを「Wish」し、自分も「Try」したくなる、そして「Fun」になれる体験の提供が今後求められてくるという話です。Pocky K.O.でそれを実現できないかと考えました。

そこでグローバルに活躍するeスポーツ選手が参加し、Street Fighter VのNo.1の座を競い合う「CAPCOM CUP 2019」(2019年12月13日〜15日)の会場に、今回特別に「Pocky」仕様に変更した「Street Fighter V Pocky Edition」が登場し、会場にいらっしゃる方なら誰でもPocky K.O.に挑戦できる試遊台を設置します。

それだけでなく、世界最高峰のプレイヤーたちが、Pocky K.O.を競い合うスペシャルマッチも開催。その様子は、カプコン様の公式Twitch(ゲーム実況プラットフォーム)とYouTubeで世界中に配信される予定です。

また、開催会場が米・ロサンゼルスであるため、なかなか会場には足を運べないという方のために、ご家庭でも疑似参加できる仕組みも導入しました。

ご自身のゲーム機でのオンライン対戦時に、「Pocky K.O.」を行った静止画をキャプチャして特設サイトにアップロードすると、「Pocky K.O.」に成功しているかどうかを判定することができます。判定の結果、見事「Pocky K.O.」に成功された人が、ハッシュタグ「#PockyKO」をつけて成功動画をTwitterに投稿すれば、抽選で11名の成功者の「Pocky K.O.成功動画」がCAPCOM CUP 2019期間中に会場の巨大スクリーンで紹介されます。

今回の取り組みを通じて、まずはeスポーツにおいて、ブランドのロゴ掲出や商品提供といったことだけでなく、ブランドがどの様にeスポーツに関与していけるかに挑戦したいと思っています。そして今後、真の意味での「eスポーツ」が現実のものとなった時に備えたいです。

以前、カンヌライオンズで出会ったアメリカ人のプロデューサーがこう言っていました。「世界的に強いブランドをつくるには、次の3つのうちいずれかと組むとよい。それは音楽、映画、そしてスポーツだ。世界的に強いブランドはこの3つのいずれかと必ず組んでいる」この話が本当なら、eスポーツが拡大した際、ブランドにとって強い味方になることだと思います。

PockyK.O.とは、自分の体力ゲージをPockyの様に見える状態で相手をK.O.すること。
今回、特別に開発されたStreet Fighter Pocky EDITIONでは、PockyK.O.を体験できる。
©CAPCOM U.S.A., INC. 2016, 2019 ALL RIGHTS RESERVED.
今回のスペシャルコラボを記念した特別Pocky10個セットも限定販売。「Pocky」はプレイ中にプレイヤー同士で分け合って食べることができるのでeスポーツにぴったり。

著者
玉井博久

広告会社側(リクルートとTUGBOAT)のクリエイティブと、広告主側(江崎グリコ)のブランド構築の両方の経験を生かして、デジタルを活用したマーケティングイノベーションをプロデュースし、カンヌライオンズなど受賞多数。現在グローバルブランドPockyの全世界の広告を統括。またシンガポールに駐在し、ASEANのECビジネスを立ち上げる。著書『宣伝担当者バイブル(宣伝会議発刊)』は若手マーケター・宣伝部員・広告会社社員に好評。