IT分野のカンファレンス「インフィニティ・ベンチャーズ・サミット」が7日から9日にかけて、500人以上の参加者を集めて京都で開かれた。筆者もセッションに登壇したほか、数多くの新ビジネス関係者と意見交換することができ充実した会合だった。その中で強く感じたのが、「自分化」に対して存在感を示しつつある「我々(われわれ)化」の概念である。
まず筆者の解釈による「自分化」とは、世の中で起こっていることについて、その情報を得ることから一歩進んで何らかのかかわりを持つことを指す。例えばテレビCMの世界観をゲームで体験する、あるいはニコニコ動画にコメントを残すといったことや、あるニュースについてブログやツイッターで意見を書くこともこれに当たるだろう。もちろん心の中にとどめておくだけの「自分化」もあるだろうが、インターネットの発達で能動的にアクションを起こす手段が増えたことで、それらが「見える化」されやすくなった。
そういった中、「ソーシャル」の中でも特にツイッターの発達によって起こっている現象をあえて「我々化」と呼ぶこととしたい。
従来の「我々化」は「自分化」の集合体として成立していた。その典型的な例がコミュニティーであろう。同じものに関心のある人同士が、それぞれの「自分化」体験をシェアしているものと言い換えてもよいかもしれない。それらは長時間存在し、深いつながりで行われることが多かった。
このような強固なコミュニティーに対して、現在ではツイッターを中心に、もっとゆるいつながりが数多くできている。そのつながりには「パッション」と「同時性」に特徴があると筆者は考えている。
例えばツイッター上で「昼食なう」とつぶやくと、「食べたい!」といった叫びからメニュー内容への質問やお勧め料理など色々な関連ツイートが出てくる。つまり、「食欲」という「パッション」に共感した人たちがグループ(=「我々」)になっているのである。
また、ツイッターには新しいツイートが優先的に表示され、古いものは押し出されて見えなくなる特性がある。スポーツの中継時などではその内容で盛り上がるが、終了して数時間もすればすっかり消えて他の話題に移る「同時性」がある。つまり、時限的にパッションを捉えるというビジネスが存在しうる基盤になるのだ。
その都度発生する「パッション」と「同時性」によって「我々化」されたコミュニティーによるゆるい集団性が、クーポン共同購入サービス「グルーポン」に代表されるフラッシュマーケティングを成立させた大きな要因であると考えている。次回この内容をより深く検証してみたい。
江端浩人「i(アイ)トレンド」バックナンバー
- マルチタスキング、仕事も生き方も(12/8)
- フェースブック、日本では携帯電話との競争に(12/1)
- 「ソーシャルメディア文化」めぐる日米の違い(11/24)
- ネットサービスの可能性、ソーシャルグラフで拡大(11/17)
- キーワードは「見える化」 携帯端末の普及が後押し(11/10)
- 変わるコンテンツづくり クリエーターとの協業が鍵に(11/4)
「i(アイ)トレンド」バックナンバー
- すべてのマーケティングがサブスクリプション化する?~マーケティング協会のイベントで感じたこと~(2018/5/11)
- 高付加価値経済の実現のために、なぜ賃上げが有効なのか(2018/4/23)
- デジタルテクノロジー/マーケティングの進化で実現するシェアリングと所有の二極化経済(2018/3/13)
- 2018年の日本はデジタルテクノロジー・マーケティングの進化により、ようやく適正価格の高付加価値エコノミーに進化する(2018/1/26)
- ピザ生産遅延、無料クーポン行列、集配遅延はなぜ起きたのか?(2016/12/26)
- まだ始まっていない日本航空の「どこかにマイル」の大ヒットを予想する理由(2016/12/01)
- AI(人工知能)は人類を超えるのか?(2016/7/20)
- カンヌ・サイバー部門総括「社会派の作品はチタニウムに集約へ」(2016/6/24)
新着CM
-
販売促進
ファンタジー好きに訴求するグミ カンロ、空想の果実をイメージした新商品
-
AD
宣伝会議
【広報部対象】旭化成のグローバル社内イベント成功事例を紹介
-
販売促進
横須賀市、メタバースで観光誘致 AIアバターの実証も開始
-
AD
広報
生活者の目線で考え、ブランドやコンテンツを幅広く届ける
-
コラム
サムライマックのCMに「ありがとう」と言いたい(遠山大輔)【前編】
-
クリエイティブ (コラム)
アイデアが苦し紛れにくっつく瞬間がある――「KINCHO」ラジオCM制作の裏側
-
販売促進
ベビー用品の速達デリバリー 日本トイザらス、30分以内におむつやミルクを配達
-
販売促進
「認知獲得」「販促」の両方使えるリテールメディア特性がメーカーの混乱を招く
-
AD
特集
広報業務が変わる!PRのデジタルトランスフォーメーション