「宣伝会議のこの本、どんな本?」では、弊社が刊行した書籍の、内容と性格を感じていただけるよう、「はじめに」と、本のテーマを掘り下げるような解説を掲載していきます。言うなれば、本の中身の見通しと、その本の位置づけをわかりやすくするための試みです。
はじめに
企業や役所などの広報業務は、記者とのつきあいなしでは成り立たない。
オウンドメディアやSNSなど、情報を直接発信できるツールが増えたことは事実だ。しかし、大手メディアの影響力は今も無視できない。ネットで「バズった(もしくは炎上した)」事例を見ても、規模が大きかったものはSNS単独で情報が拡散されているわけではない。ネットで話題になっていること自体をマスコミが「ニュース」として取り上げ、報道とクチコミの相乗効果によって爆発的な拡散が引き起こされているのが実態だ。
一方、記者の日常業務も、企業などの広報がいなければ成り立たない。ニュースの「ネタ元」のかなりの部分は、記者クラブに投げ込まれるプレスリリースだ。幹部などから話を聞く際も、夜討ち朝駆けなどのオフレコ取材を除けば広報にセッティングしてもらうことが多い。こうした広報への依存度の高さは「発表ジャーナリズム」として批判されるほどだ。
新聞記者だった筆者の経験から言っても、日本における記者と広報は、お互いが最も重要なビジネスパートナーだ。そして、企業などが組織のガバナンス(統治)を強化し、リスク管理の体制を整える中で、取材対応を広報経由に一本化する流れは年々強まってきた。記者の突撃取材に対する典型的な逃げ口上が「広報を通してください」であることは、それを象徴している。
