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ワンダーマントンプソン、人員拡充へ 飲料大手獲得を機に

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即戦力を募集

外資系広告会社ワンダーマン トンプソン トウキョウ(Wunderman Thompson Tokyo)が、全職種での採用を開始している。所属する広告世界最大手のWPPグループが昨年11月、飲料最大手の主軸ブランドの多くの扱いを獲得。これを好機として担当チームをはじめ、他案件でも人員を拡充し、攻勢に出る。

ワンダーマン トンプソンでは、アカウント、クリエイティブ、ストラテジーなどの領域を重点的に担う予定。募集している職種はアカウント スーパーバイザー、グローバル アカウント ディレクター、クリエイティブディレクターなど数職種に及ぶ。人事責任者の山﨑愛氏は、「最低5年程度、広告会社やPR会社で経験を積んだ、即戦力となる方をぜひ迎え入れたい」と話す。

加えて、ワンダーマン トンプソンが重視する4つの「コアビヘイビア」がある。行動規範であり、年次で行われる人事考課でも評価されるポイントとなっている。「創造的大胆さ(Creative Bravery)」「共に取り組む( In It Together)」「前向きさ(Positivity)」「聴く姿勢(Listening)」だ。そのほか、くわしい募集要項は専用のWebページを設置し、紹介している。

「慣習や一般的な認識に挑むような、イノベーティブなアイデアを開発できること。しかしそれは一匹狼的な振る舞いではなく、クライアントも含め、チームワークの精神で共同して力を発揮できること。自分の主張ではなく、相手の意見をよく聴くこと。そして何より前に進み続けられるポジティブさ。これら4つをワンダーマン トンプソンでは重視しています」(山﨑氏)

「チャレンジャー精神と協調性は相反しない」――こう話すのは、チーフクリエイティブオフィサー(CCO)を務める新沢崇幸氏だ。

Wunderman Thompson Tokyo CCO 新沢崇幸氏

「当社は特に、と言えますが、たとえばデータの専門部署やテクノロジーチームの担当者は、従来的な広告会社とは習慣も言語も異なる部分があります。今後の広告業界の変化において、同様に新たな領域から人材を招くこともあるかもしれません。そうしたときに、いかにして早く共通基盤を築き、共に仕事に力を発揮するか。それは協調でもありますが、むしろチャレンジとしての側面も大きい。相反しないどころか、表裏の関係ですらあるとも言えます」(新沢氏)

新しいやり方を取り入れるのは、勤務体制でも同様だ。ワンダーマン トンプソンはコロナ禍の中で、いち早くリモートワーク体制を敷いた。山﨑氏は「仮にコロナ禍が収束しても、ニューノーマル(新常態)として在宅勤務体制を続けていくことを決めている」と話す。

「フレックス制を基本に、仕事とそのほかの生活の調和と融合、いわば『ワークライフ・ブレンディング』を掲げています。実現は簡単ではないのは確かですが、私たちの仕事の場合、フレキシブルに対応できる環境のほうが従業員の満足度も高まり、成果にもつながりやすいことが分かっています」(同)

米コカ・コーラ本社は2021年11月8日付で、WPPグループを世界全体でのマーケティングパートナーとして指名。200以上の国・地域で、同社製品の長期的成長を図るためのマーケティングモデルの実行を委託すると公式発表した。ワンダーマン トンプソン トウキョウは日本国内でWPP傘下の主軸企業として、グループ会社と共に日本市場をけん引する格好。

コカ・コーラ社のグローバルCMO(最高マーケティング責任者)を務めるマノロ・アロヨ氏は指名に際し、「消費者はメッセージとメディアを共に享受し、その体験全体に対して感情や行動の変化を起こすものです」とコメントしている。

「体験に込められた、大きく大胆なアイデア、そしてクリエイティブの力を、メディアとデータの活用で増幅する。消費者から学びながら、豊富なデータによって洞察を深め、ブランドと消費者をつなぐ経路全体で、最適化された体験をもたらせるようにしたいと考えています」(アロヨCMO)

データで増幅するクリエイティブの力

ワンダーマン トンプソン トウキョウは、まさにクリエイティブとデータによって顧客体験の向上を図る企業だ。2019年にWPPグループの中核を担うJWTの日本支社と、WPPの100%子会社ワンダーマンインターナショナルが合併して立ち上がった。54%が女性、国籍でいうと10カ国という多様性のある組織である

JWTは世界最初の広告会社として知られ、日本支社設立は1954年。外資系広告会社の中では最も歴史が長い。

一方のワンダーマンは、ダイレクトマーケティングの創始者で知られるレスター・ワンダーマン氏が1958年に創業。直接顧客にアプローチし、データに基づいて成果を伸ばしていく手法は、同氏が初めて体系化したものだった。その思想と手法は、デジタル化が進んだ現在にも脈々と受け継がれている。

WPPグループは世界的な機構改革の一環で、クリエイティブやブランディングとデータの掛け合わせを図るため、JWTとワンダーマンを合併。90の国と地域に200の拠点を構える広告会社としてネットワークを敷いている。クリエイティブとデータの統合は業界全体の課題だが、ワンダーマントンプソンが選ばれる理由は両社がもともと持つ素地の厚さ、土壌の豊かさがあるからだろう。

ワンダーマン トンプソン トウキョウの舵取りを担うマネージングディレクター、市原巧氏は日本での合併について、「JWTは世界初のブランディングという考えを打ち出したパイオニア。ワンダーマンはいまで言えばデータテクノロジー。ZIPコードやフリーダイヤルを考え出したのは同社でした。極めて理想的な合併だったと思います。お互いの強みを強化し、足りない部分を補い合うことによって、End to Endのソリューションを提供できるようになりました」と話す。

Wunderman Thompson Tokyo MD 市原巧氏

「これからはクリエイティブとデータいずれか片方で、というのは一つの翼で飛ぼうとするようなものです。すでにその兆しが出てきていますが、データだけをベースにした効率化というのは当然限界があります。しかしいま、各企業で求められているのは、次のステージへの跳躍。効率化がどうしても直面する天井を破るのが、クリエイティブなのです」(市原氏)

合併後の代表的事例となったのが、キオクシアのグローバルローンチ施策となった「TEZUKA2020」だ。データ社会の要諦となる記録用半導体大手の日本企業で、旧東芝メモリホールディングスからの改革と改称を世界的に打ち出すための施策だった。

ターゲットはいわゆる企業のCクラス(役員級)と、大学院生・大学生などの2層構造。世代も大きく離れたふたつのターゲットに国境を超えてどうコミュニケーションを図るか。競合プレゼンで選ばれたのが、ワンダーマン トンプソンによる、手塚治虫の〈新作〉を人工知能(AI)技術を用いて実現するというビッグアイデアだった。

「キオクシアは、〈『記憶』で世界をおもしろくする〉というミッションを掲げています。言葉だけで伝えるのではなく、どう体験に昇華するかが課題でした。そこで最先端の技術を用いて、フィクションではなく〈実体〉を作ること。手塚治虫氏を選んだのは、かつての科学少年、つまりはいま役員クラスの方々と、これからを築く学生双方にアプローチできるからです。彼ら・彼女らにブランドからの一方的なメッセージではなく、彼らが楽しめる実体験を提示する。それが新作マンガでした」(新沢氏)

ⒸTEZUKA2020 Project

制作したマンガは、『週刊モーニング』(講談社)に掲載。さらに広告界を飛び出し、人工知能学会で「現場イノベーション賞・銀賞」を受賞した。「現場イノベーション賞」は、実生活やビジネスの現場における実問題に関して人工知能技術により解決した事例を顕彰するもので、人工知能を創造的作業に活用し、「手塚治虫の新作マンガを完成させたこと」が評価された。

「半導体市場はここ数年で需要がとても伸びており、私たちの生活にも不可欠のものとなっています。この極めて重要な分野においては、常に激化する技術競争に加え、企業の社会における価値を正しくアピールし、“どんな存在としてマーケットに在るか”、そのブランディングが大きなパワーになっていきます。それがキオクシアのケースの背景となっています」(市原氏)

未来に渡って続くブランド構築

ワンダーマン トンプソン トウキョウが掲げる方針のひとつが、「Future Proof」という考え方だ。日本語で対応する言葉を探すとすれば「不朽」。つまりは時代を超えて価値を損なわずに長く後世に残るブランドを構築することである。

2020年、21年に世界を襲った、収束への出口が見えない新型コロナウイルス感染症の拡大。それだけでなく、2008年、09年のリーマン・ショックなど、日本だけでなく世界はたびたび大きな向かい風にさらされるタイミングがある。南太平洋の海底火山の噴火で、地球全体に大気が振動する波が伝わる映像に、たったひとつの変化が、社会そのものを揺るがしかねない姿を重ねた向きも少なくないだろう。

何が起きるかわからない未来。それに向け、一過性ではなく、しなやかに価値を保ち続けるブランドを構築すること。それが「Future Proof」には込められている。

新沢氏は「広告会社もクライアントも、今までのやり方を変える時代が来ています」と話す。

「ひいては『クリエイティブ』が担うことも変わらず残る部分、進化させるべき部分というものが見えてきている。5年後、10年後も続くブランドを生み、育て、残していくことが、私たちの存在意義にもなってきているのではないでしょうか。ぜひ、共に取り組む仲間を増やしたいと考えています」(新沢氏)

「Future Proofは未来のあるべきブランドの姿、ビジネスの成長から逆算したときに、何をするか。いままでにない発想や既成概念を崩す考えをもたらすためにも重要です」とは市原MDの弁だ。

「それはクリエイターだけではなく、データテクノロジーにも、アカウントプランナーにも必要。それは広告会社においては、経理も、人事もアイデアを持っていないといけない。いままでの延長線上にない発想をもたらすことが広告会社の本質的な価値だと私は考えています」(市原氏)

世界最大級の飲料メーカーが新たに指名したWPPグループで、日本での中核を担うワンダーマン トンプソン トウキョウ。そのマーケティング・コミュニケーションの手法はこれまでにないものを新たに構築する部分が多いことは確かだ。その勢いは、他案件にも活性化の波を及ぼそうとしている。

「実際、これは当社に与えられた大きなチャンスだと考えています。世界や日本で、データとクリエイティブの掛け合わせをどう結実させていくか。このふたつの領域に先鞭をつけ、体系化し、リードしてきたのが両社だったと自負しています。それらを融合させ、次のステージへ進めるタイミングがいま。ぜひ一緒に面白い未来をつくりましょう」(新沢氏)

拡大に向けて加速するワンダーマン トンプソン トウキョウのオフィスにて

 



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