いま広告に何ができるか? 何をすべきか?──学生記者が見た“社会派”クリエイターのアイデアの力

東京・虎ノ門ヒルズで8日間にわたって開かれた広告クリエイティブの祭典「虎ノ門広告祭」。本記事では、10月21日に開かれた「社会課題×クリエイティブの最前線」を、虎ノ門広告祭・学生記者がレポートする。
 
同セッションでは、社会課題の解決に取り組む広告やアイデアについて、第一線で活躍するクリエイターたちがそれぞれの事例をもとに語り合った。スピーカーは、岡本欣也氏(コピーライター・クリエイティブディレクター)、小国士朗氏(プロデューサー・「注文をまちがえる料理店」発起人)、長谷川輝波氏(クリエイティブディレクター・コピーライター)の3人。司会は長谷川ミラ氏(モデル・ラジオDJ/ 映像・メディアプロデューサー)が務めた。
 
※取材・執筆は、虎ノ門広告祭 学生記者の原リドワンが担当しました。
クリエイティブの祭典「虎ノ門広告祭」

クライアントの依頼を“ひっくり返す”

はじめに紹介されたのは、岡本氏が手がけた代表作「日本は、義理チョコをやめよう。」。2018年にゴディバジャパンの新聞広告として掲出されたこのコピーは、大きな話題となった。このキャンペーンは複数社が参加する競合コンペを通して決まったのだと、岡本氏は当時を振り返る。

司会の長谷川ミラ氏は、「チョコレートの売り上げを伸ばしたいはずのクライアントに、なぜ『義理チョコをやめる』という真逆の提案をできたのか?」と訊ねた。この問いに対し、岡本氏は「僕は、ほとんどオリエン(広告主による依頼書)を読まないんです」とにこやかに返す。「オリエンの内容に合わせて広告をつくるのではなく、『バレンタインデーにゴディバが何を発信するべきか?』をいちから考えた」結果が、この広告なのだという。

写真 人物 岡本氏

コピーの背景には、ともにこの広告を手がけたクリエイティブディレクターの原野守弘氏の口癖である「(本当に伝えるべき)ビッグアイデアは何か?」があった。原野氏との議論の末にたどり着いた「ビッグアイデア」のヒントは、「老朽化」だ。建物や道路がだんだん老朽化するのと同様に、社会の制度や慣習も古びていく。私たちが気づかないうちに、そこにひびが入っている。「そんな慣習のひとつが、バレンタインデーの義理チョコではないか?」という議論から、このキャンペーンが生まれた。

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