ChatGPTやGeminiにキャッチフレーズをお願いしても、最初からは、なかなかいいコピーができあがってこない。コピーライターなら、そんな経験があるのではないでしょうか?本記事では、『AIネイティブマーケティング』著者で電通チーフ・AI・オフィサーの並河進氏が、AIを猛特訓する様子を大公開。その方法は名付けて「ベスト・キッド方式」。有名なあの映画のやり方で、AIを育てるとはどういうことなのでしょうか?(本記事は、『AIネイティブマーケティング 人、企業、AIの幸せな関係をつくる』から一部を抜粋・編集して掲載しています)
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私はコピーライターとしてキャリアをスタートし、コピーライターの先輩の下について(電通ではメンター制度と呼ばれ、教えてくれる先輩はメンターと呼びます)、入社から最初の数年間、コピーを教わりました。大学の学部は理系でしたから、コピーなんて書けるわけもない。思い返すと、あの手この手で先輩は教えてくれました。
そうした先輩から後輩に教える方法は、AIに対しても応用可能です。
並河流、AIを育てる方法は次の5つがあります。
・ 助手方式
・ ダメ出し方式
・ メソッド方式
・ OJT方式
・ ベスト・キッド方式
ここでは、書籍発売後もっとも反響をいただいている「ベスト・キッド方式」をご紹介しましょう。
『AIネイティブマーケティング 人、企業、AIの幸せな関係をつくる』(並河進著/定価2,200円+税)
『ベスト・キッド』とは1984年に公開された有名な空手映画です。若者が師匠に弟子入りするのですが、なぜかワックスがけしかやらせてもらえない。若者は不満を覚えますが、実は、このワックスがけの動きが、空手の技につながっていた!というストーリーです。
一見関係のないことをさせることで、AIを鍛える。
それがこのベスト・キッド方式です。
ところで、AIに足りないと私が常々思っていることがあります。「生死や時間、人生の不可逆性の重みをわかっていない」ということです。コピーは人生の明るい部分だけからは生まれません。人生の有限性、不可逆性、その悲しみからも名コピーは生まれています。
名コピーライターである児島令子さんが、ペットフードを販売する会社の広告として書いた名コピーに、「死ぬのが恐いから飼わないなんて、言わないで欲しい。」というコピーがあります。このコピーには、ペットを飼うことの喜びと悲しみ、生きるということが詰まっています。ですが、これを、AIに一言で伝えることは難しいです。
試しに、「生死や時間、人生の不可逆性を胸に、東北新幹線のコピーを書いてください。」とLLMに投げかけてみると、こんなコピーが返ってきました。
「時は戻らない。だから、前へ進む。」
「一度きりの風景を、一度きりの速さで。」
「いのちの速度で、北へ。」
うーん…。そういう単純なことじゃないんです。
そこで、こんな特訓を課してみました。
