「君は顧客基点になれるか」〈後編〉(岩井琢磨×音部大輔)

コンサルティング・ファーム 顧客時間での数多くの変革プロジェクトを通じて培われた実践知を初めて体系化した『THE CUSTOMER CENTRIC COMPANY 顧客基点経営10の実践』が4月1日に発売されました。これを記念して編著者の岩井琢磨氏と、2024年12月に刊行された書籍『君は戦略を立てることができるか』の著者である音部大輔氏の対談が実現。本書のおすすめの読み方や、デジタル時代にこそ立ち返るべき顧客基点について対談しました。
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顧客不在のマーケティングに再現性はない

岩井前編でも述べた通り、本書は、DXの本質を「既存の経営様式のデジタル化」ではなく、「デジタルによって変化する顧客体験を基点とした経営様式の変革」と捉えるべきだという視点から執筆を開始しました。音部さんは、これまで多くの事業現場において戦略導入に関わってこられました。DXを顧客基点経営の実践に活かせる経営と、そうでない経営の違いはどこにあるとお考えですか。

音部:デジタルの良さはデータが取れることだと考えています。つまり、デジタル化はデータ化と同義です。

こうした前提を踏まえて、現場の方の話を聞いて感じている課題は二点あります。まずはDXで得られたデータをもとに、客観的な意思決定をする習慣があるかどうかです。これができていなければ、いくらデータを回収できていようが、仕組化できていようが、再現性のあるアウトプットは生まれません。

もうひとつは、データを消費者行動としてとらえられているかどうかです。目の前にあるデータは、「買う前、買った後、買うのをやめた」といったさまざまな消費者の行動の記述になっているからこそ意義があります。しかし数値の羅列ばかりを見ていると、どうしても数値が主体のような誤認をしてしまいます。数値やデータの向こうに、消費者である人間がいることを忘れてはいけません。

なんらかの販促活動を行ったから売れたと思いがちですが、その活動によって「消費者が欲しいと思って買う、その結果売り上げが伸びた」という“間”にあるものを忘れてしまうと、マーケティングとしての再現性は低くなります。

クー・マーケティング・カンパニー 代表取締役 音部大輔氏

クー・マーケティング・カンパニー 代表取締役 音部大輔氏

個々の顧客は自由意志で動いていますが、集合体としての顧客は個々の意思決定では動いていません。それは自然現象に近い考え方であり、マーケティングの対象も自然現象だと思っています。自然現象には再現性があります。めったに起きないような事象も少なくないですが、自然現象なので事後的な説明は可能です。

つまり、活動と売り上げの関係を再現性のあるものにするには、自然現象である顧客の意思決定を見る必要があるのです。

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宣伝会議 書籍編集部

宣伝会議書籍編集部では、広告・マーケティング・クリエイティブ分野に特化した専門書籍の企画・編集を担当。業界の第一線で活躍する実務家や研究者と連携し、実践的かつ最先端の知見を読者に届けています。

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