なぜ小学館は自ら火に油を注いだのか 性加害問題で露呈した危機管理広報の「失策」とは、後手対応が招いた高い代償

小学館は3月、同社をめぐる2件の人権問題について相次いで声明を公表した。ひとつはマンガアプリ「マンガワン」での作家起用をめぐる問題、もうひとつは「週刊文春」2026年3月19日号が報じた元従業員の不適切行為に関する件だ。

いずれも被害者への謝罪を表明し、再発防止に向けた対応を進める考えを示したが、一連の対応には厳しい視線が向けられている。東北大学特任准教授で、アステリア執行役員コミュニケーション本部長の長沼史宏氏に、危機管理広報の観点から小学館の広報対応の問題点を聞いた。

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「マンガワン」をめぐっては、2020年2月に「堕天作戦」作者の山本章一が児童買春・ポルノ禁止法違反(製造)容疑で逮捕され、連載が中止となっていた。その後、小学館によると、マンガワン編集部は2022年から山本を別のペンネームに変更したうえで、新連載「常人仮面」の原作者として起用していたという。この対応が明らかになったことで、加害者を別名義で再起用した判断や、被害者への配慮を欠いた制作・管理体制に批判が集まった。

一方、「週刊文春」が報じた元従業員の不適切行為について、小学館は、2018年に元従業員が取引先従業員に対し、取引関係上の優位性を利用した状況のもとで性的な行為を求め、その後も不謹慎な連絡をしていたと説明している。2020年に被害者から刑事告訴を受けたことで事案を把握し、被害者や関係者に謝罪したとしている。その後、2025年には同一従業員による別の不適切な行為も明らかになり、調査の結果、本人が責任を認めて退職したという。

この2件に対する一連の発信について、長沼氏は危機管理広報の観点から「まず後手後手になってしまった点が大きな課題だった」と指摘する。

初動が「後追い」に見えた理由

マンガワンをめぐる問題の発端は、2月20日の札幌地裁判決だった。判決とその後の報道で、和解協議への編集者の関わりが問題化し、加害者の氏名や関係する漫画作品との関連性も含めて注目が集まった。その結果、マンガワンの運営体制そのものが問われる状況になった。

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