2026年4月27日~29日の期間、東京ビッグサイトで「SusHi Tech Tokyo 2026」が開催されます。「Sustainable High City Tech Tokyo」の頭文字をとって命名された「SusHi Tech Tokyo」は東京都が主体となり、世界中のスタートアップや投資家が集まり、都市課題の解決に向けた技術を展示・議論する、アジア最大のグローバル・イノベーション・カンファレンスです。東京から最先端のテクノロジー、多彩なアイデアやデジタルノウハウによって、世界共通の都市課題を克服する「持続可能な新しい価値」を生み出すことを目的としています。
本イベントには世界からイノベーションの担い手となるスタートアップ、投資家・大企業・大学などの様々な支援者、さらには、世界が注目するテクノロジーを持ち成長を続ける企業など、世界中から多様なプレイヤーが集結。本記事では「SusHi Tech」に参加する世界のVCのキーパーソンの方々に今年の「SusHi Tech」に対する期待、さらに日本のスタートアップに対する期待を聞きました。
2025年12月24日、Alumni Venturesは日本法人Alumni Ventures Japanを正式に設立した。これは、同社のグローバル戦略において重要な節目となる。この決定は、綿密な調査と、日本が重要な転換点に到達したという明確な戦略的判断に基づいている。
同社の判断を後押しした要因の一つが、SusHi Tech Tokyo 2025だ。同イベントは公共政策と企業の取り組み、スタートアップ主導のイノベーションが高度に連携していることを印象づけるものだった。
Alumni Venturesの日本での事業拡大を主導するのは、アジア太平洋地域担当エグゼクティブ・マネージング・ディレクターとして日本に拠点を移したマイケル・フィリップス氏だ。日本法人の立ち上げは「実験的な試みではなく、この地域に対する明確で長期的なコミットメントを表すものだ」と同氏は語る。
「当社は、米トップ20のベンチャーキャピタルとして初めて、日本市場に本格参入します」とフィリップス氏。「これは『背水の陣』の覚悟です。後戻りは考えていません。日本への10年、20年、30年にわたる長期投資の第一歩なのです」
独自の共同投資モデルでスタートアップ・エコシステムを強化
2014年の創業以来、Alumni Venturesは世界でも屈指の投資活動を行うベンチャーキャピタルへと成長した。2022-2023年には、投資件数で米国1位、世界3位となった(PitchBook調べ)。
同社が重視するのは、ベンチャーキャピタルの民主化だ。取締役会の議席を獲得して投資ラウンドを主導するのではなく、共同投資に特化し、通常は各ラウンドの5〜10%を取得する。このアプローチにより、極めて大規模なポートフォリオの構築が可能になっている。
「私たちはリード投資家としてではなく、共同投資家として、非常に多くの企業——現在1,400社以上——に投資しています」とフィリップス氏は説明する。「このユニークなモデルにより、ポートフォリオ企業、出資者(LP)、他のベンチャーキャピタル、約12,000人の個人投資家を結ぶ、極めて強力なネットワークを築くことが可能となっています」
フィリップス氏は、同社のネットワークと協調的なポジショニングが、成長途上にあるスタートアップ・エコシステムにおいて、大きな効果を発揮していると強調する。
「私たちは、ネットワークを通じて、ポートフォリオ企業が必要とする人材や機会を提供し、その成長を支援できるのです」
なぜ日本か、なぜ今か:変革を生む力が重なり合うとき
昨年、日本市場を直接調査するために来日したフィリップス氏は、大規模かつ広範な変革が同時進行していることを実感したという。
「日本はこれまでも、安定した政府とビジネス環境、技術力、強力な知的財産、大きな経済規模、米国との緊密な関係といった魅力的なファンダメンタルズを備えていることで知られていました」と同氏。「しかし実際に日本を訪れ驚いたのは、想像以上にスタートアップ・エコシステムを巡る熱気が広がっていることです」
フィリップス氏は、日本法人設立に至った背景として、日本で起きている重要な変化を挙げる。
第一に、積極的な公共部門の関与。岸田政権のスタートアップ育成5か年計画に加え、経済産業省、JETRO、東京都は、米国で効果を上げてきたベンチャーキャピタルのあり方や運営手法を研究し、強い意欲をもって日本に導入している。
第二に、企業の持続的なコミットメント。日本の大手企業はベンチャーキャピタルへの支援とスタートアップへの投資を続けており、エコシステムの成長に主体的な役割を果たそうとしている。
第三に、大学システムの変化だ。学術機関は、特にディープテック分野において、商業化を積極的に推進している。
そして最大の変革は、若者たちの意識に起こっているものだ。「日本の若い世代の方たちは、スタートアップの起業、スタートアップで働くことを、本気で考えています」とフィリップス氏は述べる。「以前であれば政府や大企業への就職を志望していた人たちが、今ではリスクを取ることを厭わなくなっているのです。私はその点に大きな期待を寄せています」
同氏は、2000年頃に米国で起こった変化との類似性を指摘する。日本でも同様に、起業家精神が従来の安定志向のキャリア観に取って代わりつつあると言う。
グローバル展開における日本の戦略的位置づけ
Alumni Venturesの投資は従来、主に米国に対して行われ、海外案件は全体の10〜15%にとどまっていた。しかし、ベンチャーキャピタルの中心であった米国一極集中は、世界各地から優れた企業が生まれるにつれ、次第に崩れつつある。
「米国外の地域でも、有望な投資案件がますます増えています。私たちは、そうした機会を戦略的に捉えていきたいと考えています」
この狙いのもと、Alumni Venturesは、日本をアジア太平洋地域のハブとして選んだ。
「私たちの大きな目標の一つは、世界で最もインパクトのあるベンチャーキャピタル企業になることです」と同氏は説明する。「相互につながるグローバルな枠組みを構築するという私たちの全体戦略において、日本に拠点を置くことは不可欠、かつ極めて重要です。この地から、日本国内のみならず、より広いアジア太平洋地域を対象とした事業展開が可能になります」
投資戦略:教育的支援を重視したアーリーステージ投資
Alumni Venturesの特徴は、シードやシリーズAといったアーリーステージへの投資を重視していることだ。早期に関係を構築し、企業の成長に合わせて追加資本を投入できる。
「日本でも同じアーリーステージ戦略を追求しています」とフィリップス氏。
同社が求めているのは、国内市場のみに焦点を当てた企業ではなく、グローバルな展開を目指す企業だ。
「日本市場では、創業者やステークホルダーとの強固な信頼関係の構築が不可欠であり、アーリーステージ投資はそのための最適な手段です。そして私たちは、企業が次の成長段階で資金調達を進める際には、米国のリード投資家を紹介できます」
他国での事業展開とはやや性格を異にし、Alumni Venturesは、日本では教育的役割を果たすことも念頭に置いている。同社は、日本のスタートアップや研究機関からディープテクノロジーのイノベーションが生まれていることを評価する一方、そのうちの一部は、まだベンチャーキャピタル投資に適した段階に達していないと認識している。
「シード資金を受ける準備が整う前に、米国のベンチャーキャピタルの基準を学ぶことで、成長につながる企業も少なくないでしょう。私たちはそのプロセスに伴走することができます」
Alumni Venturesは、投資の前段階から有望なスタートアップに長期的に向き合い、グローバル市場で成功するために必要な知見や能力の向上を後押しする。
フィリップス氏はまた、同社は、日本のベンチャーキャピタル各社と競合する存在ではなく、相互に補完し合う関係だと強調する。
「私たちは、日本進出を競争とは捉えていません。共同投資を基本とする当社のモデルでは、連携が欠かせません」と同氏は述べる。「より多くの人が投資に関わることで、エコシステム全体が強化されていくのです」
日本のイノベーションをグローバルネットワークにつなぐ
Alumni Venturesの大きな強みの一つは、異なるエコシステムをつなぐ力にある。
「米国では、ポートフォリオ企業のCEO、個人投資家、戦略アドバイザーを結びつけています。日本でも同じことを実現し、日本と米国を、実質的にもっと近い存在にしたいと考えています」
日米双方向のつながりによって、日本のスタートアップは、どの市場に進出すべきか、どのような法的枠組みを選ぶべきか、どのアドバイザーと組むべきかといった、グローバル展開に必要な実践的な知見を得ることができる。同時に、海外の投資家にとっては、日本発のイノベーションに触れる機会となる。
「両方のネットワークが持つ力が合わさることで、エコシステムの成長は大きく加速するでしょう」とフィリップス氏は自信を持って語る。
グローバル投資家が注目すべき日本の重要セクター
日本において、グローバル投資家がどの分野に注目すべきかという問いに対して、フィリップス氏は、日本ならではの強みを背景にしたいくつかの重点分野を挙げる。
まず、ディープテクノロジーは今後も日本の中核であり続けるだろう。特にロボティクス、精密製造、エネルギーは、世界トップクラスの専門性を有する分野だ。
人口構造の変化は、一見すると逆説的だが、大きな機会を生み出している。社会の高齢化によって、住宅、医療、モビリティ、自動化といった分野でのイノベーションが進んでいるのだ。
「日本における高齢化のソリューションは、他の先進国も同じ課題に直面する中で、世界中で求められるようになるでしょう」とフィリップス氏は指摘する。
また、エンターテインメントとテクノロジーが交わるクリエイティブ産業にも、大きな可能性がある。
「アニメや漫画は世界中で非常に人気があります。AIとエンターテインメントが融合すれば、さらに大きなチャンスが生まれます。日本はこれまでもこの分野をリードしてきました。今後もそれは変わらないでしょう」
転換点としての日本
将来を見据え、フィリップス氏は、日本の今の状況を「新興市場としての物語」ではなく、構造的な変化が起きている重要な局面にあると捉えている。
「日本は今、大きな転換期を迎えています」と同氏は語る。「5年後、10年後には、『2026年に日本に投資したのは当然正しい判断だった。結果的に、とても良い投資だった』と、多くの人が振り返るはずです」
同氏はこの機会が完全には認識されていないこと、一定のリスクがあることを認める。しかし、必要な要素はすべて揃っている。フィリップス氏は、料理に喩えて、日本のエコシステムの成長についての見方を説明する。
「エコシステムというケーキを焼こうとしているとしましょう。小麦粉も砂糖も卵も揃っています。あとはそれらを混ぜてオーブンに入れ、膨らむのを見守るだけです。上手くいかないかもしれません——リスクはゼロではありません——しかし、きっと美味しいケーキになる。私たちはそう確信しています」
フィリップス氏は、複数のポジティブな要因が重なり合い、互いに作用することで、日本のスタートアップ・エコシステムが、直線的どころか、指数関数的に成長すると予測している。
今年4月27日から29日に開催されるSusHi Tech Tokyo 2026では、Alumni Venturesは参入候補としてではなく、すでに日本市場で事業展開するプレーヤーとして参加する。
「ベンチャーキャピタルの仕組みやAlumni Venturesの投資モデル、私たちの取り組みについて、そしてポートフォリオ企業とその製品について、知っていただける機会となりますので、イベントが始まるのをとても楽しみにしています」
Alumni Venturesに関心を持つ起業家に対して、フィリップス氏は同社のオープンな姿勢を強調する。
「日本でスタートアップを立ち上げ、ビジネスを構築することに興味がある方は、ぜひ私たちにお気軽にご連絡ください」とフィリップス氏は呼びかける。
Alumni Venturesは、スタートアップとの接点を積極的に広げ、短期的な投資に限らず、長期的な関係構築を重視している。こうした関係が、将来の投資や他の投資家との橋渡しにつながっているのだ。

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