戦時下でPRは何ができるのか──ウクライナ女性起業家支援プロジェクトに見る支えるコミュニケーション

戦争や災害のような危機的状況において、PRには何ができるのでしょうか。通常時の広報活動では、ブランド価値の向上や認知拡大、商品・サービスへの関心喚起が主要なテーマになります。しかし社会そのものが不安定化した状況では、コミュニケーションに求められる役割も変化します。単に情報を届けるだけでなく、人々を支え、つなぎ、行動できる状態を取り戻していく。そのような「社会インフラとしてのPR」が問われるようになります。

今回紹介するのは、ウクライナで実施された女性起業家支援プロジェクト「WOMAN IN」です。ロシアによる全面侵攻によって、多くの企業や生活基盤が失われる中、女性起業家の事業継続と再建を支援するために展開されたコミュニケーション施策です。これは単なる支援プロジェクトではなく、「危機の中でPRがどのように人を支えられるか」を示した事例でもありました。

WOMAN INプロジェクトの一コマ(Hoshva PR社提供)

戦争によって変わった「起業支援」の意味

ウクライナでは、この10年ほど女性の社会進出や起業支援が活発に進められてきました。しかし2022年の全面侵攻以降、その前提は大きく崩れます。事業停止、物流網の寸断、原材料不足、避難や移転など、多くの企業が生存そのものを問われる状況に置かれました。特に女性起業家は、家族のケアや生活再建とも並行しながら事業継続を迫られるケースが多く、従来型のビジネス支援では対応しきれない状況が生まれていました。

このプロジェクトが特徴的だったのは、戦争によって変化した現実に合わせ、当初予定されていた施策を全面的に組み替えた点です。平時を前提とした起業支援ではなく、「戦時下で事業をどう続けるか」を中心に据え、支援内容そのものを再設計しました。そこには、PRを単なる発信活動ではなく、「社会状況に応じて目的を更新していくプロセス」として捉える姿勢が見て取れます。

必要だったのは「広告」ではなく「伴走」

プロジェクトでは、女性起業家への資金支援に加え、事業移転支援、セミナー、コミュニティ形成、さらには女性リーダーシップをテーマにしたボードゲームまで、多面的な施策が展開されました。重要なのは、それらが単発ではなく、「事業を続けられる状態をつくる」という目的で統合されていた点です。

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世界の潮流を事例から解説!PRのネクストトレンド
岩澤康一(Key Message International代表取締役)

国内/外資のファームでデジタル、グローバルな広報・PR経験を積んだコミュニケーションの専門家。TBSワシントン支局に勤務後、在シリア日本大使館広報文化担当官、日本国際問題研究所広報部長などを歴任。米アメリカン大学より国際平和紛争解決法修士号、早稲田大学よりジャーナリズム修士号取得。ハーバード・ビジネス・スクールでAIを学ぶ。日本広報学会理事。情報経営イノベーション専門職大学客員教員。弘前大学客員教員。著書に「世界標準の説明力 頭のいい説明には『型』がある」(SBクリエイティブ)。

岩澤康一(Key Message International代表取締役)

国内/外資のファームでデジタル、グローバルな広報・PR経験を積んだコミュニケーションの専門家。TBSワシントン支局に勤務後、在シリア日本大使館広報文化担当官、日本国際問題研究所広報部長などを歴任。米アメリカン大学より国際平和紛争解決法修士号、早稲田大学よりジャーナリズム修士号取得。ハーバード・ビジネス・スクールでAIを学ぶ。日本広報学会理事。情報経営イノベーション専門職大学客員教員。弘前大学客員教員。著書に「世界標準の説明力 頭のいい説明には『型』がある」(SBクリエイティブ)。

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