支援はどうすれば続くのか──ウクライナ支援を再び動かした音楽とハッシュタグ

戦争や災害といった大きな社会的出来事は、発生直後には世界中の関心を集めます。しかし時間の経過とともに、その関心は徐々に薄れていきます。情報は次々と更新され、人々の意識は別のニュースへと移っていく。こうした中で、いかにして社会的関心を持続させ、具体的な行動につなげていくのかは、現代のPRにとって重要な課題の一つです。

今回紹介するのは、ウクライナへの支援を呼びかけるために実施された「#HelpUkraineSong」というハッシュタグを活用した国際的なコミュニケーション施策です。音楽という普遍的な文化を起点に、世界中の人々の参加を促し、関心と支援を再び呼び起こした取り組みです。

#HelpUkraineSongキャンペーンの一コマ(Hoshva PR社提供)

関心の低下という見えにくい課題

ロシアによる全面侵攻以降、ウクライナは長期間にわたり国際的な注目を集めてきました。しかしその一方で、時間が経つにつれてメディア露出は減少し、支援の熱量にも変化が生じていきます。実際、2023年には寄付額が大きく減少する傾向が見られ、支援の継続性が課題となっていました。

この状況に対して求められたのは、新しい情報を発信することではなく、「もう一度関心を取り戻すためのきっかけ」をつくることでした。しかも、それは大きな広告投資に頼るのではなく、人々が自発的に関わりたくなる仕組みである必要がありました。

「ユーロビジョン」という世界的な瞬間を活用する

着目されたのが、ヨーロッパ最大級の音楽イベントであるユーロビジョン・ソング・コンテストでした。2023年大会は本来ウクライナで開催される予定でしたが、戦争の影響により英国で開催されることになりました。この状況は、ウクライナへの関心を再び高めるための象徴的な機会でもありました。

ユーロビジョンは世界で1億人以上が視聴するイベントであり、国境を越えた共通体験を生み出します。ここに、PRとしての可能性が見出されました。単なる情報発信ではなく、「世界中の人々が同時に参加できる行動」を設計することで、関心を再び可視化しようとしたのです。

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世界の潮流を事例から解説!PRのネクストトレンド
岩澤康一(Key Message International代表取締役)

国内/外資のファームでデジタル、グローバルな広報・PR経験を積んだコミュニケーションの専門家。TBSワシントン支局に勤務後、在シリア日本大使館広報文化担当官、日本国際問題研究所広報部長などを歴任。米アメリカン大学より国際平和紛争解決法修士号、早稲田大学よりジャーナリズム修士号取得。ハーバード・ビジネス・スクールでAIを学ぶ。日本広報学会理事。情報経営イノベーション専門職大学客員教員。弘前大学客員教員。著書に「世界標準の説明力 頭のいい説明には『型』がある」(SBクリエイティブ)。

岩澤康一(Key Message International代表取締役)

国内/外資のファームでデジタル、グローバルな広報・PR経験を積んだコミュニケーションの専門家。TBSワシントン支局に勤務後、在シリア日本大使館広報文化担当官、日本国際問題研究所広報部長などを歴任。米アメリカン大学より国際平和紛争解決法修士号、早稲田大学よりジャーナリズム修士号取得。ハーバード・ビジネス・スクールでAIを学ぶ。日本広報学会理事。情報経営イノベーション専門職大学客員教員。弘前大学客員教員。著書に「世界標準の説明力 頭のいい説明には『型』がある」(SBクリエイティブ)。

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