AIの時代に自分の言葉を持つってどういうこと?―「宣伝会議賞」中高生部門特別企画:第3回

いよいよ明日に迫った、新体制での「宣伝会議賞」中高生部門の募集開始。立ち上げから10年間、すべての言葉に立ち会ってきた阿部広太郎氏による特別コラムの第3回は、言葉が持つ「本当の力」についてです。AIの台頭など、めまぐるしく変化する社会の中で、なぜ私たちはわざわざ自分の言葉を紡ぐ必要があるのか。コピーライティングの技術を超えて、これからの時代を自分らしく生き抜くための「マインド」を、阿部氏の温かい眼差しから語ります。
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阿部広太郎氏

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クリエイティブディレクター

広告クリエイティブの力を拡張しながら領域を超えて巻き込み、つながり、助け合う対話型クリエイティブを実践する。著書に『コピーライターじゃなくても知っておきたい心をつかむ超言葉術』(ダイヤモンド社)、『それ、勝手な決めつけかもよ?だれかの正解にしばられない「解釈」の練習』(ディスカヴァー·トゥエンティワン)、『あの日、選ばれなかった君へ新しい自分に生まれ変わるための7枚のメモ』(ダイヤモンド社)。

前回は、心を動かすコピーの「書き方」をお話ししました。けれど、コピーを学ぶ意味は、賞をとるためだけではありません。今日は、「言葉を持つことは、生きることにどう効くのか」という話をさせてください。

AIが、なんでも書いてくれる時代に

文章を書くのが、ずいぶん楽になりました。お願いすれば、AIが平均的に上手な言葉を、一瞬で並べてくれます。とても便利です。けれど、AIにできないことがあります。それは「あなたが、何を感じたか」を決めること。

AIは、私の志望校を笑わない。」(第62回・グランプリ/ベネッセコーポレーション)を書いたのは、AIではなく、ひとりの中学生でした。AIという題材すら、自分の心の機微を起点にしてはじめて、あんな一行になる。

何を問いに選ぶか、どこに光を当てるか。それを決めるのは、最後まで人間の仕事です。だからこそ、自分で考え、自分の言葉にする力が、これからいよいよ価値を持つのだと思います。

自分の言葉は、自分の輪郭

コピーを書くとは、突きつめると「自分が何を大事にしているか」を決める作業です。
中高生部門には、協賛企業の課題とは別に、「特別課題」というものがあります。商品ではなく、事務局が出す「テーマ」に答える課題です。

たとえば第60回の特別課題Aのお題は、「悩みを抱えたとき、身近な人に相談したくなるキャッチフレーズ」でした。そこへ寄せられた一行が、「下じゃなくて、横を見て」(第60回・ゴールド/特別課題A)。

つらいとき、落ち込んでしまう自分もいるけれど、すぐ隣にいる人を見てごらん、と。どこを見て、誰と比べ、何を励みにするのか。それを自分で選んだ瞬間、言葉は、生き方の軸になります。世間の正解をなぞるのをやめて「私はこう思う」と一行にする。その積み重ねが、ほかの誰でもない自分の輪郭を、すこしずつ描いていくのです。

言葉は、勇気であり、お守り

私は、誰かを言い負かすためではなく、誰かに手を伸ばすために、言葉はあると思っています。言葉には、二つの顔があります。一歩を踏み出させてくれる「勇気」と、自分を内側から支える「お守り」。

座りたい席が、どんどん前になる。」(第54回・シルバー/河合塾)。

前のめりになっていく自分を、こんなふうに肯定できたら、きっと強い。うまくいかない日、落ち込んだ夜に、自分でつくった一行が、自分をもう一度立たせてくれることがあります。自信とは文字どおり、自分を信じること。書いたコピーは、静かに支えてくれます。

書く力は、コピーライターだけのものじゃない

最後に伝えたいのは、この力は仕事を選ばない、ということです。

私を変えたあの記事は、今でも壁に貼ってある。」(第55回・ブロンズ/読売中高生新聞)。たった一行が、誰かの人生を変え、壁に貼られ、何年も支えになる。あなたが本気で書いた言葉も、いつか誰かの壁に貼られるかもしれません。

コピーライターになるかどうかは関係ありません。自分の感じたことを、自分の言葉にできる人は、どんな時代の荒波も、自分の足で渡っていけます。

書くことは、光を当てること。変化のスピードが上がるほど、暗く見える場所も増えていく。そんな時代に、どこを照らすかを自分で選べる人は、強い。怖くても、本音のほうへ手を伸ばしてみてください。その一行は、これからの時代を生きていくあなた自身を、きっと支えてくれます。

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