WWFジャパンは2021年から5年間、インターナショナルなブランド思想を組織に実装するため、全スタッフ向けワークショップ、スタッフへの個別説明、年間100案件を超える制作運用を続けている。なぜいま、世界的なNGOがブランドをつくる取り組みに注力することになったのか。WWFジャパン ブランドコミュニケーション室ブランドコミュニケーションディレクターの渡辺友則氏、同室アートディレクター/デザイナー/ブランド担当の山下ゆかり氏に話を聞いた。
WWF(世界自然保護基金)は、「人と自然が調和して生きられる未来」の実現を目指し、100カ国以上で活動する国際環境保全団体である。1961年にスイスで創設され、日本では1971年にWWFジャパンが設立。生物多様性の保全や気候変動対策、森林保全、海洋保全など幅広いテーマに取り組みながら、企業や行政、市民との協働を通じて環境課題の解決を目指している。
そんなWWFジャパンが近年、力を入れているのがブランドマネジメントである。同団体では2021年から5年間にわたり、ブランドコミュニケーション室を中心に、組織の価値観を職員一人ひとりの活動やコミュニケーションを通じて体現するための取り組みを進めてきた。
特徴的なのは、ブランドガイドラインを整備すること自体を目的とするのではなく、組織内外のさまざまな接点を通じてブランド思想を共有し、活動の中で実践していくことを重視した点である。その取り組みは、ガイドライン制作にとどまらず、採用活動、制作物の刷新、体験型展示、デザインシステムの構築へと発展していった。
活動の広がりとともに見えてきた「WWFとは何者か?」を伝える難しさ
WWFジャパンがブランドマネジメントに本格的に取り組み始めた背景には、活動領域の広さがあった。気候変動、生物多様性、森林、海洋水産など、WWFが取り組むテーマは多岐にわたる。そのため、人によってWWFに対する認識は異なっていた。
山下ゆかり氏は、「ある方にとっては動物を守る団体ですし、別の方にとっては気候変動対策を行う団体に見えています。活動範囲が広がるほど、それらをひとつのブランドとして束ねていく必要がありました」と説明する。
一方で、WWFにはグローバルで整備されたブランドガイドラインが存在していたものの、日本の現場では十分に活用されているとは言えなかった。渡辺友則氏は、「ガイドラインは存在していましたが、忙しい業務の中で読み込んでもらうこと自体が難しい状況でした。本当に重要なのはガイドラインを整備することではなく、その価値観を日々の活動の中で体現することだと考えていました」と振り返る。
資金調達を目的としたコミュニケーション活動だけでなく、組織として中長期的なブランド形成に取り組む必要も高まっているのではないか。そうした考えのもと、2021年にブランドコミュニケーション室が発足した。









