9月16日に開催された「アドタイ・フォーラム」(宣伝会議主催)に登壇したアドビの今井裕志氏は、生成AIによる検索行動の変化をデータとともに紹介。SEO(検索エンジン最適化)に加え、生成AIの回答でブランドを正確に発見・参照してもらう「GEO(Generative Engine Optimization:生成エンジン最適化)」の考え方を解説した。
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生成AIは「検索」から「購買判断」へ
生成AIの利用は、情報収集の補助にとどまらない。OpenAIの2026年8月31日の発表によると、ChatGPTの週間ユーザー数は10億人に到達。アドビが世界3000人の経営幹部や実務担当者、約4000人の顧客を対象に実施した「2026 AI and Digital Trends Consumer Report」によると、情報検索や購入意思決定、おすすめ情報の収集で「最もよく利用する情報源」として生成AIを挙げた回答者は25%となり、検索においてもAIが利用されている実態がわかる。
さらに今井氏は、米国在住者2300人以上を対象としたSemrushの調査を紹介。AIチャットボットが提供した情報を理由に少なくとも1回は購入を見送った経験があるAIユーザーは57.5%に上った。一方で、73.5%のユーザーはAIが推奨した商品を購入したことがあると回答したという。こうしたデータから、AIが購買行動に関与している、また、ブランドのインフルエンサーにもなっている、という実態がみえる。
これまで、検索は企業サイトやECへの「入口」として捉えられてきたが、生成AIは、ユーザーがサイトを訪れる前に、候補となるブランドや商品を比較し、説明し、推奨する役割まで担っている。AIの回答に自社ブランドが表示されるか、また、どのような文脈で自社ブランドが説明されるかが、購買判断にも関わるようになっている。
クリック率低下の一方でAI経由の流入は増加
同時に進んでいるのが「ゼロクリック」だ。これは、検索結果や生成AIの回答だけで必要な情報を得て満足したユーザーがWebサイトに遷移しない行動を表す。今井氏が示した事例では、あるサイトで2024年5月から2025年9月にかけてインプレッション数が2倍以上に増えた一方、クリック率は1.5%から0.5%未満へと低下した。一部の事例ではあるが、他の企業のサイトでも同様の「ゼロクリック」が起きている可能性があると、今井氏は言及した。Pew Research Centerの調査でも、GoogleのAIオーバービューが表示された検索結果ページで通常の検索結果リンクがクリックされた割合は8%だった一方、表示されなかった場合は15%だった。
こうした傾向がみられるものの、生成AI経由のサイト流入は増えている。業界別に2026年の生成AI経由の流入を見ると、前年(2025年)比で、小売が前年の5.6倍、旅行が同3.23倍、金融サービスが同2.32倍と急増している。ただ、現時点では生成AI経由の流入が全体に占める割合は数%程度とみられ、まだオーガニック検索が圧倒的に多いという。
一方で、流入したユーザーの「質」には特徴がある。Adobe Digital Insightsが米国の大規模小売サイトを対象に実施した調査では、生成AI経由の訪問者は非AI経由と比べ、コンバージョン率が31%高く、滞在時間は45%長かった。また、訪問あたりのPV数は13%多く、直帰率は33%低いとの結果が出た。今井氏は、「ユーザーが生成AIとの対話を重ねて情報を得ているため、目的や意図が明確になった状態でサイトに到達しているためではないか」と背景を分析。「従来の検索順位だけでなく、生成AIでどう発見され、扱われているかという点が新しいブランド課題として浮かび上がっている」と話した。
アドビ ソリューションコンサルティング本部 プリンシパルソリューションコンサルタント 今井裕志 氏
生成AIを「新たなオーディエンス」と捉える
こうした変化を受けて注目されるのがGEOだ。アドビは、ブランド情報を生成AIが発見、取得、理解、要約しやすくし、正確で信頼できる情報として回答に反映される可能性を高めるための最適化と定義している。
その出発点として、生成AIからブランドサイトが見えているか、という点が挙げられる。今井氏は、生成AIを単なる流入チャネルではなく、ブランドを「発見し、認知・評価し、回答の中で推奨する新たなオーディエンス」と位置付け。ユーザーのプロンプトを受けた生成AIは、外部情報を検索・取得し、関連性を評価して回答を組み立てるが、その過程でブランドが「発見」「正確な認知・評価」「回答・推奨」の各段階で適切に扱われているかが、ビジネス成果にも影響をもたらすという。
まず確認すべきは、自社ブランドがAIに発見される状態になっているかどうかだ。今井氏は発見を妨げる要因の例として、生成AIクローラーを拒否していること、JavaScriptなどでコンテンツを動的に構築しているため初期HTMLの情報が乏しいこと、サイトページのレスポンスが遅いことを挙げた。
生成AI に発見される状態であっても、ブランドを正しく認知されることが求められる。自社の情報が読み取りにくい、複数の自社サイトで記述内容が異なる、外部サイトに誤った情報がある、参照情報が古いといった状態では、AIの認知にずれが生じる可能性があると指摘。自社サイトの整備に加え、生成AIが参照する情報全体を見渡す必要がある。
「SEOをやればGEOも充足」はなぜ違うのか
今井氏は、「GEOはSEOの前提の上に成り立っているもの」としたうえで、「SEOを行えばGEOも充足するとはならない」と説明した。生成AIサービスは複数存在し、参照する情報源も一定ではない。一部の検索エンジンが読めるページでも生成AIが十分に取得・解釈できているとは限らず、自社サイト以外の情報も回答に使われるためだ。
象徴的なのが、AIが参照する情報源の変化だ。Semrushの調査では、2026年1月時点でChatGPT、Perplexity、Google AI Modeの引用ドメインランキングでは1位がRedditで、11.29%を占めていた。さらにChatGPTでのRedditの引用シェアに限ってみると、7月18日~8月7日には平均3.8%だったものの、8月14~17日には0.5%まで低下したという。こうした動きからも、特定の媒体だけを意識して対策するのではなく、広く継続的なブランドの可視性の向上に努める必要があると指摘する。
AI検索とSEOの統合運用は22% まずは現状把握から
企業側の対応はまだ途上にある。481人のマーケティング担当者を対象にSemrushが実施した2026年調査では、85%が「AIによって検索戦略が変化した」と回答した一方、AI検索とSEOを統合して運用しているのは22%、重要な指標を計測できているのはわずか8%だった。
アドビは、AI上でのブランドの可視性や引用されたページ、モデル別・市場別の言及状況などを把握できるGEOツール「Adobe Brand Visibility」を提供している。サービスでは現状把握にとどまらず、改善施策を推奨・実行する点が強みだ。Semrushと連携して約2億8000万件のプロンプトと回答データを活用。大きなデータベースとつながっているため、準備も必要なく、ドメインを入れるだけで関連データが表示される仕組みだ。マーケットを絞り込めば、実データベースを見ることが可能。サービスでは、こうした市場把握に加え、ブランドが登録したプロンプト単位の継続的な分析、改善施策の推奨・実行、URL別の引用状況などの追跡までを支援しており、自社サイトのコンテンツについて生成AIが情報を取得できているかを確認する「AIコンテンツ可視性チェッカー」も無償で提供している。
今井氏は、SEOをGEOの基盤と位置づけつつ、特定のチャネルだけに依存せず、AIから正しく見られ、引用・推奨される状態を継続的に確認する必要性を強調。「まずは現状確認から始めていただきたい」と話し、まずは可視性のないコンテンツを特定し、ブランド戦略上で必要な情報を初期HTMLに加えることが実践の出発点になると締めくくった。
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