「客離れ心配ない」――。10月14日に平均6%の値上げを発表したサイゼリヤの松谷秀治社長の強気な発言が注目を集めた。長年にわたって低価格を維持してきた同社にとって、値上げは大きな経営判断だ。一方、顧客に謝罪しながらも、経営への逆風には自信を持って答える松谷社長の姿勢がSNSなどで好意的に受け止められている。
日本企業の経営トップには、謙虚で慎重な発言を好む人が少なくない。しかし、そうした姿勢がメディア対応では裏目に出ることもあるという。「広報勉強会@イフラボ」を主宰する危機管理広報・謝罪会見アナリストの長沼史宏氏は、業績が好調な企業でも、社長の「弱気な一言」が報道の中心になる可能性があると指摘する。サイゼリヤの事例をもとに、「謙虚な社長」がメディア対応で損をする理由を聞いた。
「9割がポジティブ」でも、残り1割が見出しに>
サイゼリヤは10月14日、29日からメニュー全般を平均6%値上げすると発表した。看板商品の「ミラノ風ドリア」は300円から320円になる。同社は原材料価格やエネルギーコストの上昇を背景に挙げ、「当社の努力不足」と説明して顧客に理解を求めた。
一方、同日放送のテレビ東京「ワールドビジネスサテライト(WBS)」では、食料品の消費税減税などが外食産業に及ぼす影響について、松谷社長が「あまり気にしていない」と笑顔で回答。16日付の日本経済新聞でも「客離れ心配ない」という発言が紹介された。
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こうした発言に長沼氏は注目した。日本企業には業績が好調でも、将来の見通しについて慎重に語る経営者が少なくないからだ。
業績などの見通しで、「まだまだ油断できません」「需要が冷え込む可能性もあります」といった発言は多いが、本人は謙虚さや慎重な姿勢を示したつもりでも、記者には経営者自身が市場環境への懸念を示した言葉として受け取られる可能性があるという。
「私の経験上、メディアはポジティブな発言よりも、ネガティブな発言をニュースとして取り上げやすい傾向がある。たとえ発言全体の9割がポジティブでも、残り1割のネガティブな発言が記事の中心になってしまうことがある」と長沼氏は説明する。
