広報会議の人気連載コーナー「新任広報のためのプレスリリース道場」に掲載している記事の一部を公開。広報の第一歩である、メディアへのプレスリリースの書き方を学びたい方にオススメのコンテンツです。
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「情報の営業マン」が届けるリリースがヒットにつながった
「広報会議」2012年9月号掲載掲載 連載「新任広報のためのプレスリリース道場」より
(執筆者)
井上戦略PRコンサルティング事務所・代表
井上岳久 氏
1968年生まれ。フードテーマパークを「年間200以上のリリース」という独自の手法で復活させたPR戦略コンサルタント。月刊『広報会議』の人気連載「新任広報のためのプレスリリース道場」を執筆しているほか、宣伝会議が主催する「ニュースリリース作成講座」や「広報担当者養成講座」の講師としても活躍。
『体脂肪計タニタの社員食堂』がシリーズ累計485万部のウルトラヒットを記録し、東京都千代田区に開店した「丸の内タニタ食堂」も大人気。今や日本中で知らない人はいないくらい有名になったタニタを今回は取材し、そのリリースやPR戦略を探ります。
レシピ本が出版されたのは、2010年1月のこと。それ以前にも、同社のレシピ本は別の版元から出版されて絶版になっており、社内的には大ヒットは全く予想していなかったといいます。それがなぜ売れたのか。大きく違ったのは、前の本は医師が監修した真面目な本だったのに対し、今回はとっつきやすい本だったことだと広報室長の猪野正浩さんは分析します。「私は〝社食〞という切り口が興味を誘ったのではないかと思います。社食というのはどこかベールに包まれていて、部外者が覗き見したくなる存在です」。
レシピ本のメガヒットを受けて発信したのが、今回取り上げる「丸の内タニタ食堂」のリリースです。さすがにここまでヒットすると、何もしなくても引き合いは多そうですが、猪野さんはオープン前に3つのイベントを用意しました。それはユーザー層を対象とした試食会で、(1)丸の内のOL (2)総務担当者 (3)買い物などで銀座や有楽町を訪れる一般男女、とそれぞれ異なるターゲットを招きました。参加した人たちがそれぞれブログやツイッターで発信すると、オープン前に体験できたというプレミアム感が、見た人たちを大いに刺激しました。その効果もあって、「丸の内タニタ食堂」はランチ営業にも関わらず、朝、配布する整理券はすぐになくなるほどの人気を呼びます。
そのまま記事にできるクオリティを追求
食堂の出店に当たっては、カジュアルダイニングの株式会社きちりと組んだため、リリースも連名で、共同リリースの体裁を取っています。ですがリードを読むと、あくまで主体はタニタであることがわかります。このように共同リリースの場合は、どちらが主体かを明確にすることが重要です。そうでないと、受け取ったメディアが迷いますし、たらい回しにされると印象もよくないので要注意です。
続いて本文。元新聞記者の猪野さんは文章を書き慣れており、記者が必要な部分を抜き出すだけで、そのまま記事になるような文を意識しているといいます。新聞記者は、あふれる情報の中から、限られた時間で記事をまとめなければならないので、一から文章を組み立てる余裕が無いこともしばしば。このようなリリースを重宝する記者も多いでしょう。
また、コンサルティング手法を用いた構成になっていることも特徴的です。コンサルティングは、(1)まず現状を分析し、(2)問題点を明らかにし、(3)改善策を提示するという、三つの段階で成立しています。これは受け手に理解しやすく納得感があるため、リリースなどコンサルティング以外の場でも有効なのです。
またタニタも記者クラブを利用していますが、自社から直接配信する顔なじみのメディアもあります。さらに提携先のきちりからも配信され、同じリリースが何回も届いて記者が混乱しないように、最後に一言を添えているのが親切です。
自社配信はほとんどがメールです。メールはスルーされる心配が拭えませんが、タニタが徹底しているのは、相手に届いているかきちんと電話で確認すること。会話することで、送りっ放しではわからない記者の感触を確かめられます。そして特に掲載してほしいメディアには直接リリースを渡しに行くことに重点を置いています。「広報担当者は情報の営業マン」が猪野さんの持論。今後は効果の高い媒体を選んで配信数を絞り、より効率的な広報を目指しているようです。
※宣伝会議主催・ニュースリリース作成講座では、執筆者の井上戦略PRコンサルティング事務所・代表 井上岳久氏が講師を務め、リリースをその場で添削する実践的なワークショップを行っています。
※完全版は広報会議2012年9月号にて、もしくはダウンロードサービスをご検討下さい。
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