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良品計画「体にフィットするソファ」のリニューアルリリースを公開―『広報会議』2012年2月号より

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広報会議の人気連載コーナー「新任広報のためのプレスリリース道場」に掲載している記事の一部を公開。広報の第一歩である、メディアへのプレスリリースの書き方を学びたい方にオススメのコンテンツです。

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「1リリース2テーマ」で異例のメディア露出

「広報会議」2012年2月号掲載 連載「新任広報のためのプレスリリース道場」より

(執筆者)
井上戦略PRコンサルティング事務所・代表
井上岳久 氏

1968年生まれ。フードテーマパークを「年間200以上のリリース」という独自の手法で復活させたPR戦略コンサルタント。月刊『広報会議』の人気連載「新任広報のためのプレスリリース道場」を執筆しているほか、宣伝会議が主催する「リリース作成講座」や「広報担当者養成講座」の講師としても活躍。

新商品ですら競争が激しいのに、単なるリニューアルではなかなかメディアに取り上げてもらえないのが実状です。そこで今月は、話題を加えて注目度を高める方法を紹介します。テキストは、良品計画の「体にフィットするソファ」のリリースです。

これは2004年の発売開始以来、累計50万個を販売しているヒット商品です。中には微粒子ビーズが入っており、上下と側面の生地の伸縮性が異なるため、置き方によって背中で寄りかかって座ることも、全身を伸ばして寝転がることもできる優れものです。

ただし、ソファは長年使っていると生地がヘタってきて、元の使い心地を維持できなくなってきます。そこで同社では、素材を変更することで、より耐久性の高い商品へと7年ぶりにリニューアルを行いました。それに伴い、以前の商品から今回の商品に買い換える購入者を対象に、使用済商品の引き取りキャンペーンも実施することを、このリリースは告知しています。

MUJI_release201202

私は従来から「原則は1リリース1テーマ」と言い続けています。複数の題材を入れ込むと、何が言いたいのか読み手に伝わらなくなって、捨てられるのがオチだからです。このリリースはその原則に反した「1リリース2テーマ」ですが、それが奏功している珍しい例だといえます。

もしこれが商品リニューアルのみ1テーマだったら、モノ雑誌などでは扱われるかもしれませんが、新聞で記事にしてもらうのはかなり困難でしょう。ですがリリース作成に伴ってこの話を日経新聞の親しい記者に持ちかけたところ、「日経MJ」で見事、写真付きの大きなサイズで掲載されました。その理由はやはり、商品回収やリサイクルが時流・世間の関心に合った話題であったことと、良品計画のブランディングとリサイクルへの取り組みがマッチしていたために、記者にもピンと来たからではないかと思います。新商品の発売やリニューアルだけではネタが十分でない時に、こういう攻め方もあることは覚えておいて損は無いと思います

2つの情報が合わさりニュースバリューが増す

このリリースの最大の特徴は、商品リニューアルと無料引き取りキャンペーンを併せて告知していることです(ポイント1)。その両方が分かりやすく混乱せずに記載されています。原則外の「1リリース2テーマ」ではありますが、連動性があって、2つの情報が合わさることでニュースバリューが高まっています。

このリリースの主題は、あくまで商品のリニューアルであり、本文ではリニューアルポイントを簡潔にまとめています(ポイント2)。「累計50万個」という数字は、一発でこの商品が好評であることを伝えてくれます。図版は、もし商品写真だけだったら四角い黒い物体にしか見えませんが、使用風景をイラストで示すことで、わかりやすくしています。イラストはホームページなどで使っていたものを流用しているそうです。

それからリニューアルのポイントを箇条書きで3つに簡潔にまとめているのも良い点です。広報担当者として、セールスポイントをあれもこれも書きたくなるのはわかりますが、心を鬼にして、項目に優先順位をつけて、潔く絞り込みましょう。それ以外のことは、問い合わせを受けてから説明すればいいのです。

2枚目の添付資料では、リサイクルの流れをスキーム図で示しています(ポイント3)。官公庁のリリースなどに多いのが、スキーム図が複雑すぎてわかりづらいケースですが、良品計画のものは非常にきれいにまとまっています。またこの回収キャンペーンのうち、繊維部分に関してはFUKU-FUKUプロジェクトにつながっており、一過性の取り組みではないことも信頼感を与えています。こうしたキャンペーンは、企業の取り組み方の本気度が問われるものだからです。

リリースは1枚+添付資料を鉄則にしているそうで、無駄なものをそぎ落としたリリース作りのセンスを感じます。「記者クラブで見ていると、多くのリリースは全く見てももらえないでシュレッダー直行ですよ」とも言います。そこでリリースを極力簡潔にし、記者と会話して興味を持ってもらうよう努力しており、工夫が随所に感じられました。多くのトライ&エラーをして、うまく行かなければ工夫をすることで打開していくのもPRの醍醐味だといえるでしょう。

※弊社主催・ニュースリリース作成講座では、執筆者の井上戦略PRコンサルティング事務所・代表 井上岳久氏が講師を務め、リリースをその場で添削する実践的なワークショップを行っています。

※完全版は広報会議2012年2月号にて、もしくはダウンロードサービスをご検討下さい。


【「新任広報のためのプレスリリース道場」バックナンバー】