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【中国で勝つマーケティング】中国に関する、日本人によくある誤解

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中国への進出や本格的なビジネス展開を考える読者を対象に、『宣伝会議』(毎月1日発売号)では中国市場に向き合うコツを紹介する連載「中国で勝つマーケティング」を掲載しています。日中間でビジネス・コンサルティングを手がける大西正也氏(チャイナ・コンシェルジュ代表取締役社長)が分かりやすく解説します。
※本記事は、雑誌『宣伝会議』2012年1月1日号(連載3回目)に掲載されたものです。

大西正也(チャイナ・コンシェルジュ代表取締役社長)

2010年、日本は、中国にGDP世界2位の座を明け渡しました。しかし、一人あたりのGDPは、中国よりもまだまだ上ですから、日本人は自分たちを「先進国」と思ってしまうのでしょうか。どうしても中国を下に見ているとしか思えないような発言・考え方をしている人も少なくないようです。一方、中国側は日本を、国力なのか歴史的なものなのか、とにかく下に見ています。これが最も大きなギャップとなり、全てにおいての失敗や誤解の元になっているようです。

平均層には売れないから、富裕層を狙え!?

前回までに書いたように、中国は広く、かつ多様な民族と生活習慣の人々が住んでいます。日本の環境と違うことは百も承知でしょう。しかし、恐らく日本人の想像を遥かに上回る規模であるために誤解が生じてしまうのです。

まず、ターゲット設定での誤解。

  1. 中国人の平均月給は3万円程度。だから、5万円のテレビを買おうとしたら、約2カ月分の給与となる。日本で言うと、50万円くらいに相当するから、販売は無理。
  2. 中国人の富裕層はベンツを乗り回し、海外のマンションをバンバン買っているから、そういう人をターゲットとして商売したい。

中国の都市部における労働者の平均年収は、中国国家統計局の公表によると、2008年で2万9229元(約38万円)となります(全国の統計数値はわかりません)。都市部で月給3万円程度、ということです。中国で働きビジネスをしたことのある方は、ここでもう「?」となります。恐らく日本企業で働く、特に上海や北京の方たちは、月給5000元~1万元(約6万円~12万円)を貰っている人も少なくないからです。この平均所得者が実は周りにあまりいないため実感が沸きません。

では平均給与3万円ってどういうことか?

大型百貨店「大悦城」

北京の繁華街に2007年末にできた11階建ての大型百貨店「大悦城」。周辺では比較的新しく、ユニクロ、無印、H&M、ZARA、スタバ、バーガーキングなど人気店舗が相次いで開店している。

貧富の差も激しく、月給1万円強くらいの人が多く、10万円以上の人も億万長者も多くいる中で、それらの平均が3万円になっているだけで、中国の13億人が日本のように「総中流」ではないのです。

日本と比較したり、日本のやり方でターゲットを決めること自体に無理があります。

「日本で考えるといくら?」という質問にもいつも困ります。

5万円は5万円。もし5万円のテレビを売りたいのなら、5万円のテレビを買う人を探して、その人をターゲットとした作戦を立てることです。きっと大都市なら日本で売るのと同じくらいの人数はいるでしょう。しかも、液晶テレビはまだ持っていないかもしれませんから、売れる台数は日本以上かもしれません。

一方で、上記②の「富裕層を狙いたい」(と言いながらイメージしているのは「富豪」レベル)という相談にいつも困るのです。いるかいないか?というと、います。確実に。そして、日本よりもその数はきっと多いと思います。でも、全体からすると1%にも満たない数字なのです。

ある統計によると年収500万円を超える人は、0.4%程度と言われています。人数は決して少なくないですが、出現率は日本よりもかなり低いし国土も広い。
さてこのターゲット設定で、どうやって狙うか。

ちなみに、日本ではこういった「富豪層」向けの雑誌などはドンドン休刊になりました。富豪は雑誌やメディアで簡単に動かないからでしょうか。きっと、人を通じた口コミなどの情報の方が効果があるのでしょう。

では中国はどうか。「富豪層にターゲットを絞った雑誌」や「プラチナクレジットカード保有者向け会員誌」などで果たして購買意欲が上がるのでしょうか。

「日本製」はみんなのあこがれ?

90年代、まだまだ中国に日本人がいることすら珍しかった頃、日本のブランドや日本からの輸入品は高くても売れました。さらに安ければ、飛ぶように売れました。それは「日本製なら安心」「日本製はなかなか手に入らない良いもの」という理由からです。また当時は、他国のものがほとんど無く、中国製のものは粗悪品が多かった。

強調しますが、これはあくまでも「20年も前」の話です。

例えば、洋服などはわかりやすいと思いますが、アメカジ風や渋谷ファッションなどは、韓国メーカーはじめ世界中から入ってきています。価格も中国で作っていますから、本国より安いことも。そのうえ、中国人の好みに合わせて作られています。

こんな状況で、「日本製」というだけで消費者に買ってもらうことができるのでしょうか。

今でももちろん、多くの「日本製」は安心で良いものでしょう。ただ、「日本製」というだけで競争優位に立てた、そんな時代は終わりました。

韓国の有名ブランドも中国人の好みを聞いて、独自の商品を作っています。フランスの某有名老舗ブランドも、ロゴを大きくしたり、たくさん書いたりした商品のラインアップを増やすなど、中国人の好みを研究した売り方で大成功を収めています。

「日本のデザインの良さを中国に広めるんだ!」

先日、こんなセリフと共に中国マーケットへ乗り込んでいる日本のアパレルメーカーを取り上げたドキュメンタリー番組が放映されていました。みなさんはどのようにご覧になりましたか? 放送後、中国駐在の日本人や、日本企業で働く中国人の間では、「まだそんなこと言ってる…」と苦笑いの種になっていたこと、TV局の方はご存知でしょうか…


おおにし・まさや
リクルートを経て中国在住12年、広告会社を北京・上海・大連・香港に創業し17年。現在東京を本拠地に、中国・香港の富裕層向けインバウンド事業に携わる。「宣伝会議」の中国ビジネス関連講座の講師も務める。北海道情報システムWGメンバー、沖縄国際観光戦略モデル事業、成田空港成長戦略会議などに従事。

【シリーズ:中国で勝つマーケティング】