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スマートフォンの普及であらゆるデータが取得可能に 日本企業は先進技術のさらなるマーケティング活用を

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WPPグループの ワンダーマン ネットワークの会長兼CEOであるダニエル・モレル氏がこのほど来日した。ダイレクトマーケティングの概念そのものを世に出した同社は、2012年米国の『アドエイジ』誌の「#1 Digital Agency Network in the World」「# 1 CRM/DM Agency in the World」に選出されるなど、デジタル領域に注力している。モレル氏に、デジタルマーケティングの潮流などについて聞いた。

ダニエル・モレル氏 ワンダーマン ネットワーク 会長 兼 CEO

インターネット普及前から顧客とのインタラクティブな関係づくりに取り組んできた

ダニエル・モレル

ダニエル・モレル会長兼CEO

現在、「ネットを使って顧客とインタラクティブな関係を築きたい」という風潮はより強くなっています。われわれワンダーマンは、会社の創立時からの特性として、顧客とインタラクティブに関わる施策を行ってきました。つまり、プラットフォームこそ違っていても、インターネットが始まるずっと前、1958年の創業時から、顧客とインタラクティブな関係を築くことを強みにしていたのです。

インターネット登場前に、顧客とインタラクティブな関係を築くために活用してきたのはカタログ、クーポン、1-800と呼ばれるトールフリーの番号、ダイレクトレスポンスTVといったプラットフォームでした。現在、モバイルの時代となっていますが、こうした昔から行ってきた積み重ねを生かして、インタラクティブなコミュニケーションを実施しているのです。

こうした背景があるため、当社がネットによるインタラクティブな関係構築の重要性を理解するのは早かったと言えます。そして、これからは、データがビジネスにとって非常に重要であり、さまざまなデータを状況に合わせて形を変えなければならないことも、同様に早くから理解していました。

従って当社は、これまでの施策で培った既存データとデジタルデータ、その両方を取り込んでいくという施策を取っています。

ここで言う「データ」には3種類あります。店舗での購買などに紐づく「トランザクショナルデータ」、家族形態や車の所有、そして旅行などの個人的な行動や趣味嗜好に紐づくデータである「ビヘイビアルデータ」、そしてさらに拡大していく「ソーシャルデータ」です。もともと保有していたデータに、これら3つを中心とした各種データをいかに取り込んで統合された顧客像をいかに導いていくのか。それがワンダーマン、さらには我々のような業態にとっては、新たなチャレンジになるでしょう。

必要なのは、まずは、それらのデータをどうやって集めてまとめるか、ということ。そして、それらの膨大に集まるデータについて、何が有益で何が不要なのかを仕分けるデータそのものの分析です。新しい業界なので、そのデータが本当に必要かを見極めるのもまだまだ難しい状態です。現在CNBC(米国のニュース専門局)などで放映されていることとして、フェイスブックやグーグルが直面しているチャレンジはすべてデータに関することなのです。各社とも、どうデータを取り扱い・分析してビジネスを生み出すのかに力を注いでいるのです。

スマートフォンの普及で取得できるデータは一気に増加

そして、現在のデジタル活用のトレンドは、一般消費財の大企業であるユニリーバ、ダノン、クラフト、P&Gなどが、「第二の波」に乗って自社の商品を販売するために消費者との新しいコミュニケーションを開始していることです。その前に第一の波としてやってきたのは、ヘルスケア、自動車メーカー、クレジットカードといった業界でした。

そしていま、第一の波、第二の波、いずれの業界からも同じような質問を受けています。それが、「どうやったらソーシャルメディア上の会話をより効果的にマーケティングコミュニケーションに活用できるのか」ということです。

それまでも、デジタルマーケティングは複雑な状況だったのですが、さらにここ2、3年でスマートフォンが登場しました。これにより、新たなデバイスの登場と共に、さらにビヘイビアルやトランザクショナルを含むデータソースが追加されたことによって、消費者とコミュニケーションをする機会が創出されました。これ1台で各種データが取れるし、オンラインショッピングをする人も増えてきているので、企業にとっては新たな課題が追加されてきている状態です。

このスマートフォンの普及は、さまざまなところでプラットフォームの変化を生み出しています。例えばシティバンクのウェブサイトに行くと、2、3カ月ほど前に同社のCFOが投資家向けに行ったプレゼンが見られます。この中には、非常に重要な数字が二つありました。

一つが、世界中に小切手が20億冊くらいあるという数字。そしてもう一つが、世界にはその2.5倍にあたる50億台の携帯電話があるという数字です。

つまり、銀行業界の悩みは、さまざまなチャネルを使って口座を新設してもらうことではなく、携帯電話を持っている人々にそれを使ってどれだけ銀行の振込みなどのトランザクションを行ってもらうかに変化してきているのです。従って、銀行にとって突然30億人のマーケットが加わったということを意味します。口座を持っているからではなく、携帯電話を持っているという理由で、これまでとは全く違うマーケットに対応しなければならなくなったのです。

同様にプラットフォームの変化という意味では、ゲーム業界もそうです。これまで、ゲームをすると言えば、ソニー「プレイステーション」、マイクロソフト「Xbox」などのようなゲーム機が中心でした。しかしスマートフォンが登場したことにより、ゲームのマーケットはゲーム機でゲームをする人々に限らず、携帯電話他スマートフォンを持っている人々に一気に広がったのです。

そうした意味で、2012年は非常に面白い年であると言えます。世界の携帯電話50億台のうち33%がスマートフォンになってきています。つまり、多機能なデジタルデバイスでつながることができる人々が世界に一気に増加したということなのです。

ですから、このスマートフォンの台頭というのはチャレンジであると同時に大きなチャンスでもあります。なぜなら、テレビと違ってモバイルは1台に対して所有者は1人であり、かつ所有者の情報が事前に登録されています。さらに、オンライン上での買い物行動やGPS機能によって、どこにいてどんなトランザクションを行ったかについてもデータを取得することが可能になってきているからです。

これだけ詳細なデータを取れる環境が整ってきたというのは、マーケターにとってみれば、夢がかなった状態と言えると思います。なぜなら、マーケターはどこにいるか、何をしているのかも分かっている、よく知っている一人のお客さまにダイレクトにコンタクトを取ることが可能になってきたからです。
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