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地域の資産をそのまま生かす エコでヘルシーな“いまどき”ドリンク——炭農家うえの(信級玄米珈琲)

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株式会社宣伝会議は、月刊『宣伝会議』60周年を記念し、2014年11月にマーケティングの専門誌『100万社のマーケティング』を刊行しました。「デジタル時代の企業と消費者、そして社会の新しい関係づくりを考える」をコンセプトに、理論とケースの2つの柱で企業の規模に関わらず、取り入れられるマーケティング実践の方法論を紹介していく専門誌です。記事の一部は、「アドタイ」でも紹介していきます。
第3号(2015年5月27日発売)が好評発売中です!詳しくは、本誌をご覧ください。

成熟化したと言われる環境下でも、新たな顧客を創造し、市場を創る経営トップがいます。そして、そこには瞬間的に売れるだけでなく、売れ続けるための全社を挙げた取り組み、さらには仕組み化があります。商品戦略、価格戦略、流通・販路戦略、プロモーション戦略に着目し、売れるためのアイデア、仕組みを解説・紹介していきます。


植野 翔(うえの・かける)
炭農家うえの 代表
東京生まれ。大学卒業後、2007年に長野市の山間地へ移住。2010年から信級在住。米、炭、玄米珈琲の生産・販売をしている。
www.nobushina-coffee.com

地域資産の価値を“翻訳”

長野県長野市の山間地にある「信級(のぶしな)地区」。いまでは人口130人ほどの小さな山村だが、かつては1300人が暮らし、麻や養蚕、米、麦、わさび、林業、炭焼きと、山の恵みを存分に生かした生活を営んでいた。それは現在にも受け継がれており、古民家と棚田が織りなす風景からも垣間見ることができる。

そんな信級地区で、100%玄米を原料とした珈琲「信級玄米珈琲」を製造・販売しているのが、炭農家うえの 代表の植野翔さんだ。生まれも育ちも東京の植野さんは、大学院修了後に長野へ移住。農業を中心とした生活を志し、閑散期の冬の間は炭焼きの仕事を手伝うことになった。いまも現役で炭を焼き続ける80歳の炭焼き職人の技を受け継ぎながら、ふと目が留まったのは炭焼き窯の中。その職人は窯の中で玄米を炭化させ、それをお茶代わりに毎日飲んでいた。それが、信級玄米珈琲の着想の原点だったという。炭焼き窯の余熱で玄米を焙煎したところ、珈琲に近い味の飲み物ができ、「これはいけそうだ」と商品化を決めた。商品開発やブランディングの経験はゼロ。食への関心はあったものの、マクロビやフードマイレージといった専門領域を学んだこともなかった。

ノンカフェインなので、妊婦や子どもも安心して飲める。玄米珈琲を含む穀物コーヒーを、健康食品としてではなく、嗜好品として楽しんでもらいたいと植野さんは話す。

100%玄米が原料で、ノンカフェインであることから、妊婦や子どもも安心して飲めるのが玄米珈琲最大の特徴だ。「コーヒーは苦手だが、お茶だと物足りないときに飲みたくなる」「コーヒーが好きで飲み過ぎているので、夜は玄米珈琲に替えている」といった声も寄せられるという。栄養バランスの良い穀物として知られるものの、消化吸収しにくいのが難点の玄米だが、焙煎し粉末状にすることで栄養が吸収しやすくなっているのも、玄米珈琲の魅力の一つだ。

昼夜の激しい寒暖差の中、山からの湧き水で育てた信級産玄米を、炭焼きをした後の余熱で焙煎する。全方位からの遠赤外線で焙煎することで、伝導熱での焙煎に比べて深部への熱の伝わり方が早くなり、サクッと煎り上がる。「炭出しのたびに何度も焙煎して最適な焙煎時間を探り続け、独特の風味のある味わいに辿り着きました」。

大学・大学院在学中は、農山漁村もフィールドとするまちづくりの研究室に所属していた。農山村を訪れるにつれて、過疎にあえぐ日本の農山村への関心が高まるとともに、そこに暮らす人々の生き生きとした姿やコミュニティの強さに惹かれていった。

ロゴやパッケージ、Webサイトといったコミュニケーションツールは、信級玄米珈琲のメッセージを前面に押し出すのではなく、相手を信級という場所に引き込むようなデザインを意識した。手掛けたのは、ロンドン在住のデザイナー・石井挙之さん。

自然に従い、自給自足の生活を送りたいと思ったものの、平地に比べて営農条件が厳しい信級では、農産物の販売だけで生計を立てるのは難しく、2次・3次産業によって付加価値をつける必要があった。お米と炭焼きという、地域にもともとあった資産を組み合わせることで、他にない付加価値が生まれた。

いま、コーヒー市場の競争は激化している。しかし、植野さんは、差別化は特に意識していないという。「玄米珈琲自体が特異な存在なので。むしろ、コーヒー文化の中に加えてもらえるように、香りとコク、味わいを追求していきたいです」。チコリや大麦、タンポポや、玄米などの穀物を焙煎して粉末にする穀物コーヒーは、「健康食品」や「珈琲の代替飲料」と捉えられることが多いが、植野さんは、玄米珈琲を嗜好品としても十分に満足してもらえるものにしていきたいという…

「続きは100万社第3号本誌をご覧ください」


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