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プロジェクトマネジメントを成功させるための3つのフェーズ(後篇)

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デジタル分野の新しいソリューションや考え方が生まれ、統合キャンペーンやデジタルキャンペーンなどのより複雑度が高いプロジェクトが増えてきた。職種の違うメンバーが集まり、一つの物事を進めていくためには、リーダーの進行管理能力だけでなく、チームを束ねてブーストしていく推進力が問われる。そこで、こうしたプロジェクトマネジメントを実行する際のポイントについて、宣伝会議が11月9日に開講する「プロジェクトマネジメント実践講座」の講師であるフロンテッジ デジタルマーケティンググループ グループ長の村上知紀氏に聞いた。


フロンテッジ ソリューション本部 デジタルマーケティンググループ グループ長/シニアディレクター 村上 知紀氏

前篇では、プロジェクトの組み立てのポイントを説明しました。第二回では、組み立てた後に、人をアサインしチームを作ること、そして、実行し、最後までやり遂げること、この2点におけるポイントを説明します。

2)人をアサインしてチームを作る

画像提供:shutterstock

・チームを編成する
プロジェクトの組み立てができれば、次はチームを作ります。プロジェクトの組み立てで、ゴールや作業やスケジュールが具体的にイメージできていれば、それが1人でできるものなのか、誰かを巻き込まないとできないのか、どんな能力を持った人や組織が必要なのか、どのように組み合わせたらよいのかを考えることができます。

前篇でご紹介した「今から2日後の土曜日に発売される商品を60個購入して、火曜日の朝11時までに届ける」というプロジェクトでは、1つの店で購入するのは10個までという制限があったため、1人で6店舗をまわるということは現実的ではありませんでした。そこで、私は、メールで自分のチームにボランティアを募集しました。6人ぐらい募ることができれば、一人10個(2セット)なので、1人1店舗に行ってもらえばよいと考えたのです。結果として、合計7人が手を挙げてくれたのですが、なるべく店舗がかぶらないで、かつ会社に持ってきやすいように事前に担当店舗のリストを作り、共有しつつ、依頼しました。

この事例では、特に特別な能力が必要ではないので、単純に人数だけが問題でしたが、通常のプロジェクトでは、専門領域を持った人をうまく組み合わせてチームを作る必要があります。したがって、能力や稼働日数を見極め、文化や価値観や相性も踏まえた上でメンバーを組み合わせすることも重要になります。

特に、広告業界は、業界全体が変化していますので、昔ながらの文化や価値観を持った人と新しいデジタル領域の文化や価値観を持った人が、1つのチームとして協業しなければいけないことも増えてきており、ゴールを達成するためには、そのチーム編成にも十分なケアが必要となります。

・その気にさせる
もう一つ、重要な視点はモチベーションです。いかにやる気になってもらうか、という視点がプロジェクトマネジメントでは重要です。そのために必要なのは、前回説明した「Why」です。つまり、ゴールを達成する理由と背景をはっきりと自分が理解と納得をすることです。もう一つは、自分の理解や納得をアサインしようとしているメンバーに伝えて、理解と納得を得ることです。

商品購入のプロジェクトの場合は、7人が手をあげて協力してくれましたが、それは、背景や条件を、言葉を尽くして説明したのと、本当に困っているということを人として訴え、みんなで達成したいミッションとして伝えたからだと思います。泥臭いですが、そうした気持ちの部分でのコミュニケーションが、その気にさせる、という意味では重要になってきます。プロジェクトマネジメントというと管理的な側面が強いですが、ゴール達成には、様々な人の協力が必要なので、人間的な面の配慮も必要になります。

3)実行し、やり遂げる

最後は、「実行すること」と「やり遂げること」です。その中には、リスクを読んでオプションを用意すること、ゴール達成に向けて進捗を管理することの2つの視点があります。

・オプションを用意する
プロジェクトにはリスクがつきものです。「メンバーが抜けざるを得なくなった」「作業進捗が遅れた」「依頼内容が変化した」「メンバー間での問題が起きた」。例を挙げればきりがありません。どんなに、事前に具体的にイメージしておこうが、必ず何かが起きます。実際にトラブルが起きたときに、ロープに追い込まれないように、常に別の手立てを用意しておくことを頭に入れてください。そうすれば、あわてずに軌道を修正することができます。ゴールは同じなので、軌道を変えても達成すればよいのです。

・進捗を管理する
最低限、必要とされることは、ゴール達成に向けて、事前に立てたスケジュールと現実の進捗とのギャップをウォッチすることです。ギャップがあれば、他メンバーのアサインなどの選択肢も含めた解決策を実施することで、調整を行います。更に言えば、メンバーとのコミュニケーションをどれだけ密にとるか、というスタンスが大事になります。スケジュールだけでなく、作業上の悩みや課題みたいな陰に隠れがちな点についても密なコミュニケーションにより、早期発見することができます。

さて、ここまでプロジェクトマネジメントの基礎的な考え方について説明しましたが、いかがだったでしょうか。これからの内容は、基礎的とはいえ、ゴールを達成するための本質です。読者のみなさんもすでに何らかのプロジェクトに関わっていると思いますので、それぞれの項目について、確認してみてはいかがでしょうか。


村上 知紀
株式会社フロンテッジ ソリューション本部 デジタルマーケティンググループ グループ長/シニアディレクター

複数の外資系デジタルエージェンシーを経て独立後、2009年から広告代理店の株式会社フロンテッジに参画。 WEB黎明期から現在までの間に、インターフェースの開発、プロジェクト・マネジメント、コンサルティングといった幅 広い業務経験を持つ。直近では、4年程度、グローバル企業に常駐しながら、デジタル関連プロジェクトをリード。著 書に『デジタル・クリエイティビティ』『ウェブ解析力』『Webマーケティング基礎講座』等がある。

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