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もうコピーライターはいらない? 菅付雅信×河尻亨一

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人生を作品化できる クリエイターが生き残る

菅付 TwitterやUstreamで好むと好まざるに関わらず、情報が“ダダ漏れ”する時代だからこそ、クリエイターは“人生を作品化”しないといけない。なぜなら黒子的なクリエイターでも、その人生がメディアでダダ漏れしているから、評価されるには評価される人生を送らないといけない。

たとえばレディー・ガガは、今世界で最高のコミュニケーターだと思うんです。自分の人生がメディアに露出していくことに、ものすごく覚悟がある。彼女はデビューしてからヘアメイクなしで外出したことは一度もないと言ってるくらいですから。

―菅付さんのお話は、コピーライターという枠を取り払って、とにかく面白いヤツになれということですね。プライベートで変わった活動をするなど、時代に乗っかった面白い活動をしている人が「コピーライター」を名乗っていると、「コピーライターって面白いじゃないか」と世の中に認識されてくる。そういうことですか?

菅付 そうです。僕自身、紙の編集の仕事は全体の一部ですが、人生で「編集者」以外の肩書きを名乗ったことはありません。今後のクリエイターは「コピーライター」や「編集者」というわかりやすい肩書きを持ちながら、それ以外のもっと採算性の高い仕事をしていくようになるんじゃないでしょうか。

十数年前、ヨーロッパの数々の雑誌の編集部を訪ね、ほとんどが雑誌で食べてないことにがく然としたんです。ヨーロッパの雑誌は日本の雑誌よりもはるかにマイナーなのに、編集者たちはいい服を着て、いい家に住んでいる。それは他の仕事で食べているからなんです。編集者は欧米では最高のコンサルタントなんですよ。

河尻 雑誌は趣味ということですか?

菅付 いや、銀座の路面店みたいなものです。それ単体では維持費が高くて儲からないけれど、強力なブランディングになる場ですね。今は広告会社も出版社もテレビ局も、皆が仕出屋化、ケータリング屋化に向かってますよね。なるべく店舗を持つリスクを減らして、注文に応じててんぷらでも寿司でもフレンチでも出しますよと言う。でも、仕出屋はたいして美味しくない。仕出屋にすしや蕎麦の名店はありませんから。皆が無店舗販売に向かう今こそ、路面店を持ちのれんを出すことが大事だと思う。

河尻 その話で言うと、僕は屋台かな(笑)。うん、サイコーにクールなチャルメラの“三ツ星オヤジ”になりたいです。求められている場所に、絶妙なタイミングで持ってきて、そこそこ美味しく、客も自分もハッピーで、あとを濁さず笛吹きながら去って行く。表現とコミュニケーションのダイナミズムをその中に見いだすことができれば、新しい道が拓けるかもしれないと考えています。

プロフィール

すがつけ・まさのぶ
1964年生まれ。編集者。『コンポジット』『インビテーション』『エココロ』編集長、『リバティーンズ』共同編集長を務める。現在フリーマガジン『メトロミニッツ』クリエイティヴ・ディレクター。出版からWeb、広告、展覧会、ラジオパーソナリティーまで手がける。著書に『東京の編集』『編集天国』がある。

かわじり・こういち
1974年生まれ。編集者・東北芸工大客員教授。元『広告批評』編集長。エディターズブティック「銀河ライター」主宰。同時に2010年8月よりHAKUHODO DESIGNにもキュレーターとして在籍。『日経トレンディネット』などでの連載のほか、広告関連書籍の編集、「東京企画構想学舎」のプランナー兼サポートなど、幅広く活動。