自販機と「友達」になる仕掛け
一方、コカ・コーラ社が11月14日に事前登録を開始した“ハピネスクエスト(ハピクエ)”は、コカ・コーラの自動販売機と友達になってもらうゲームである。利用はするが個人的な関係性の薄い街中の自動販売機に、個別の名前や性格をつけ、友人のようにコミュニケーションしてもらうというコンセプトで企画したものである。自動販売機とのコミュニケーションは携帯電話あるいはスマートフォンやタブレットなどの端末で行われ、登録した自動販売機からメールが届くという具合である。
12月5日以降、色々な自動販売機にチェックイン(ハピクエでは“挨拶をする”に近いコンセプト)したり製品を購入することで、ユーザーはポイントやアイテム、バッジやクーポンなど様々な特典が与えられる。そして自動販売機の中から数台(当初3台)を“お気に入り(フレンド)”として登録し自分好みにカスタマイズし育成できるほか、そのうちの1台をMy自販機(ベストフレンド)として登録すると、その自販機から毎日いろんな情報を含んだメールが届くようになる。
筆者としてはこの「名前」をつけるというのがこのプログラムのポイントであると考えている。自動販売機の名前は1000種類以上用意しており、それに加えて個別認識のための番号1000を用意している。まだ、プレートの設置は始まったばかりなので名前がついたプレートを見かけることは少ないだろうが、皆さんは街角で自分や家族、知人の名前と同じ自販機を発見したらどう思うか。企画した側からすると、製品の購入は別として、その自販機を登録したくなることを期待している。しかも、その名前は1000種類もあるので、自分や家族の名前の自販機と出会う確率は相当低いはずである。例えば、知人の名前の自販機を発見した場合、その人とソーシャルメディアでつながっていれば、教えたくなるのが人情であろう。また、例えば自分の好きな有名人の自販機を発見した場合なども、思わず登録したくなるのではないだろうか。結果的にコカ・コーラ社の自動販売機を探し始める、あるいは最低でも街中で見かけたときに意識を向けることにつながると期待できる。
ただし、あるユーザーにとってメールが送られてくるMy自販機(ベストフレンド)の名前や相性が良くない場合もあるだろう。あるいは配偶者や恋人がいる人の場合には、知らない名前からメールが送られてくることが快くないと思われる可能性もある。そのような事態を避けるためにメールが送られてくるMy自販機(ベストフレンド)だけは「ニックネーム」をつけることができ、性格も変更できるようにサービスをスタートする予定である。
このように実売り上げに直結する可能性があるゲーミフィケーションに関してはこれから色々と試行錯誤を行いながら洗練させてゆくことが必要であろう。皆様もこれらのサービスを是非体験し、気がついたことや意見があればどんどんいただきたいと思っている次第である。
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