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コラム

CSR視点で広報を考える

東日本大震災1年を経て、世界各国から問われる日本の国力、復興力、危機管理能力

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未だ道半ば。あまりにも遅い東日本大震災復興計画の進捗状況

今週日曜日14時46分、東日本大震災の発生1年を向かえ、被害者に対して各地で一斉に黙祷や追悼式が行われた。多くの人々がその悲しみを再び認識し、二度とこのようなことがないことを祈り、一方で復興が思うように進んでいないことに不満や不安を抱えていたことだろう。

財団法人国土技術研究センターでは、東日本大震災発生以降の復興計画を時系列で詳細にまとめている。この時系列表によると、政府・省庁の東日本大震災復興対策本部が「東日本大震災からの復興の基本方針」を策定したのが7月29日、各省庁の復興施策の工程表の発表が8月26日、さらに、野田政権となって以降の工程表の改定の発表が11月29日に行われ、今年の1月31日には、同対策本部より各地方公共団体が復興整備計画を作成する際に参考となるよう「復旧整備計画作成マニュアル」が公表されている。

特に最後の「復興整備計画作成マニュアル」は、各自治体が東日本大震災復興特別区域法に基づく復興整備計画に関する制度を活用するための手続きを解説しているもので、未だ機能が十分果たせていない各自治体の復興活動への警鐘とも言える。

基本方針策定までに4カ月以上を要し、第一次工程表の発表が5カ月以上、さらに改定工程表に至っては8カ月以上を要している。米紙ワシントンポスト(電子版)は、日本在住の元東京支局特派員 Paul Blustein氏の寄稿文として、「日本は悲劇を経ても停滞から脱せず」を掲載し、余りに遅い日本の復興計画が原因で「絆」(Bonds of Friendship)という言葉で象徴される震災直後の団結の精神が失われていると警告した。各テレビ局の11日の特集番組の中では、震災後に使用された複数の媒体によるキーワードに注目、震災後半年までは「頑張ろう!」が最も高い頻度で使用されていたが、その後反転、一報で「不安」という言葉は現在に至るまで継続的に増え続けていることを示していた。

危機発生後の対応ではスピード感を重要視

危機的事態の鎮静化の後の対応で重要視されるのはスピードである。これまでも何度も海外主要国から指摘されていた日本人の発想・弱さは、

  1. 「安全な社会」伝説に依存し、突然の危機に理解不能
  2. 危機時にトップダウンの指示ができない
  3. 専門家が不足
  4. 希望的観測しかできない
  5. 政府の危機管理に一任
  6. 展開の急変・流れについていけない

といった状況がある。

危機管理コンサルタントとして長い年月にわたり危機の現場を見て来た私は、時間の経過とともにステークホルダーの感情や意見に微妙に変化が起きることに敏感となっている。

例えば、誘拐・不当拘留事件などはその典型といってよい。通常、誘拐・不当拘留されると2~3週間以内に解放されなければ、極めて長期化し、2カ月以内の解決は難しくなり、小康状態となる傾向がある。4カ月を超えた誘拐・不当拘留事件は、政府の求心力・指導力不足を指摘するマスコミの格好の餌食となる可能性が高く、最終的には軍当局による強行突入の選択肢が決断されるボーターラインの目安となるとされている。1996年12月17日、ペルー首都・リマで発生した「在ペルー日本大使公邸占拠事件」でも、4カ月が経過した1997年4月22日、マスコミや海外の政府筋からフジモリ大統領の求心力の衰えや指導力が疑問視され始め、それを押さえ込むためペルー警察の突入という強硬手段が取られたと考えられている。

一般的にステークホルダーの反応は、危機的事態が発生してから2カ月までは「事態好転への期待」が、4カ月までは「迷いや疑問」が、6カ月までは「不信感や不安」が、そして6カ月を超えると「反発やあきらめ」に転じることが多い。1年が経過して未だ復興の道筋が半ばという現状は、「絆」の精神を喪失させるに十分な対応の遅さと言えなくもない。言葉では「国民のため」という発言が繰り返されているが、本当に国民のことを考えている政治家がどれほどいるのだろうか? 2月25日に宮城・岩手両県の被災小中学生6人が東京・赤坂の復興庁を訪れ、平野復興相に3項目からなる「復興への意見書」を手渡し、直言した。「復興、本気ですか?」と厳しく問いつめる子ども達に政治家は本当に応えることができるのだろうか?

白井邦芳「CSR視点で広報を考える」バックナンバー

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