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商業施設の活性化、在庫ビジネスの活用を睨んだ新戦略

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プロサーチ 代表取締役会長 鷲尾正興氏

トップはアイデア販促マン~経営陣が語る販売促進(販促会議2012年4月号より)

“商業施設の活性化”が狙い、空き区間の解消

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わしお・まさおき/1999年より中国ビジネスを中心にコンサルタント業務を開始。2005年より商業施設の活性化を手掛ける。09年tonyaモールを主宰し、商業施設内に売場を展開して空き区画対策を実践。12年高齢化社会を見据えたリフォームモール(仮称)を立ち上げる。

米国の景況感が持ち直していることなどもあり、日本景気が足踏み状態を脱するとの楽観的な予測も一部には出てきているが、現実には持ち直しの動きは足踏み状態が続いている。製造業、小売業問わず、厳しい状態が続き、各社、試練の時期を迎えているのが現状である。

景気の低迷が続いている中で、ショッピングセンターにテナントで入店している小売店の出入りが頻繁に行われているところも少なくない。撤退した後、空き区間のままのところもある。商店街の空き店舗と同じように、ショッピングセンターの空き区画も目立つような状態だ。

「モノが売れない」状態が長期化している現状では、製造・メーカー、小売業界にとって、「商業施設の活性化」はすぐに解決すべき大きなテーマである。そのテーマに挑み、新たなビジネスモデルを立ち上げているのが、ショッピングセンター・小売業の運営代行とコンサルティング業務を事業展開するプロサーチ(本社・埼玉県越谷市)である。

同社は2年前から、空き区間問題、メーカー・問屋の在庫処分の問題などを解消する目的で新ビジネスモデル「tonya(問屋)モール」を運営している。 現在、tonyaモールがテナントとして入店しているショッピングセンターは8箇所。埼玉(3店)、千葉(2店)、東京、兵庫、群馬で各1店の展開である。

中でも「岩槻ワッツ店」(東武野田線の岩槻駅前)の場合、2階の210坪のフロアに出店している。ほかのtonyaモールの平均坪数は150坪。いままでに、tonyaモールが出店して、次の新しいテナントが決まり、撤退したケースは4箇所である。オープンして3カ月から1年半、続いているケースもある。

一体、「tonyaモール」とはどんなビジネスモデルなのか。目的は「商業施設の活性化」で、狙いはショッピングセンターの空き区画の解消。一方、メーカー・問屋の抱える「在庫ビジネス」のサポートから生まれた、従来にない独特な売り場づくり、顧客の集客装置の役割を担っている仕組み、システムでもある。

具体的には、プロサーチが、ショッピングセンターに代わって、売り場スペースの提供、メンテナンス、委託販売、小売業者の来場促進などを請け負っている。メーカー・問屋は「tonyaモール会員」に登録し、自社の在庫商品を委託して販売する仕組みである。

「卸価格で提供」を消費者にアピール

同社の鷲尾正興会長は「これは従来にないビジネスモデルです。単なる販売小売店でもなく、売り上げリベートに協力する催事業者でもありません。現在、160社のメーカー・問屋が『卸価格で販売』する、この仕組みに参加しています。メーカーや問屋は日用品や衣類、服飾雑貨・アクセサリーが大半です。大手小売企業と取引しているメーカー・問屋ほど、在庫リスクを抱えています。メーカー・卸の在庫販売と商業施設の空き区間、この両方の問題を解消するビジネスです」と話す。

「モノが売れない」という販売不振の状況の中、小売業界も、商品を製造するメーカー、問屋も大きな打撃を受けているのが現実である。メーカー・問屋にとってはtonyaモールを利用することで、自社で商品の販売価格を決められる、というメリットがある。在庫処分も含めて、販売価格を自社が決定できるという方法である。

従来、メーカーには在庫処分として、ディスカウント業界での処分という方法があった。今回、それに加えて「卸売り価格で提供」(tonyaモールでのうたい文句)という販売方法を利用することが実現している。在庫処分ということで買い叩かれていた商品を、ある程度の利益を確保しながら販売できる売り場ができたということである。

出店を希望するメーカー・問屋は、tonyaモールに会員登録し、商品の搬入とセッティングをするだけ。販売は運営会社(プロサーチ)が行う。売り上げから一定の金額を販売報奨金として運営会社に支払う。運営会社はその費用で、販売に関する人件費、賃貸料、什器、光熱費などをまかなうという仕組みだ。

「この仕組みによって、メーカー・問屋の在庫処分が非常に楽になります。残った在庫の一次処分を『tonyaモール』で、二次的には、従来の手法(ディスカウントなど)でと、選択の道が開けています。在庫リスクを軽減できるので、GMSの受注を積極的に進めることが可能になった、というメーカー・問屋の担当者の話も聞いています」と鷲尾会長は話す。

在庫が発生する背景には、モノが売れないというだけでなく、大手の小売業であるGMSなどと取引をする場合、OEM商品と自社商品を納品して、自社商品が返品されるという流れ、現時点での商習慣があるからだ。

メーカー・問屋にとって、現在の流通の仕組みの中では、大きな在庫リスクを背負わなければならない現実がある。この在庫リスクの負担を軽くする意味で、tonyaモールの登場は画期的な手法ということができる。

催事展開のノウハウ、新業態「リフォームモール」による集客策の詳細については「販促会議2012年4月号」本誌をご覧ください。

取材・文 上妻英夫(KIプレス)/経済ジャーナリスト


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