近年、食品の生産履歴を公開するトレーサビリティーの仕組みが広がっている。ECなど新たな流通形態に取り組む生産者も増え、食の安心・安全を伝える情報発信は商品のブランド化においても欠かせない要素となっている。
※本記事は3月15日発売『宣伝会議』の特集「食品・風評・自分の将来~心配を安心に変えるプロモーション」から抜粋したものです。
「6次産業化」を背景にソーシャルコマースも導入
フェイスブック上の商品ページで、九州産のブリのトレーサビリティー情報を確認。生産者の情報や養殖に使われた飼料、放射能検査の結果などを見て、安心して注文ボタンを押す。すると翌日には鮮度が保たれた状態で、自宅にブリが届く。さらに商品に添付された識別番号をフェイスブックの専用ページで入力すると、ブリの養殖履歴データをPDFファイルでダウンロードできる―。
日本IBMでは、養殖魚の生産者向けに飼料を扱う熊本市の企業「植松」が2011年10月から立ち上げた産直支援のフェイスブックページ「Smartmart」を支援している。植松では養殖された魚を販売するソーシャルコマースを開始し、ブリや真鯛などを取り揃える。日本IBMは2010年から養殖魚のトレーサビリティーの仕組みに関する有効性を検証してきたが、ソーシャルコマースとの連動を取り入れたのは初の試みだ。今回は養殖魚の情報を提供。トレーサビリティー公開により、食の安心・安全への関心に応える。
背景には、生産者が自らECなどを通じて消費者への直販にも取り組む“6次産業化”という流れがある。6次産業化とは、1次産業が2次産業(加工)と3次産業(販売)を行うもので、農業・水産業の活性化を目指し農林水産省でも推進してきた。
「フェイスブックで生産者と消費者がより近付くことで、購入者の口コミや調理した写真なども共有できる。その口コミの価値を高めるためにも、トレーサビリティーの公開によって“安心・安全”という購入時の大前提となる判断基準を担保する必要がある」と解説するのは、日本IBMの久保田和孝氏(スマーターコマース事業開発部長)だ。
「例えば、水揚げしたばかりの新鮮な魚を産地から適切な温度で運んでいるという追跡情報を発信すれば、商品の付加価値の証明になる。鮮度の良い魚をお届けすることが何よりも商品の価値を高め、産直品のブランド化にもつながっていくのでは」と久保田氏。直販に乗り出す生産者が増える中、商品のブランド化においてもトレーサビリティーは必要不可欠な要素となりつつある。
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