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フェイスブック景気は米大統領選を左右する

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フェイスブック景気に沸く米市場。ザッカーバーグはさながらロックスター

フェイスブックのNASDAQ上場の話題が連日ニュース番組を賑わせている。若き経営者、マーク・ザッカーバーグが、まるでロックスターのようにもてはやされる様子は、スティーブ・ジョブスを失ったアメリカの株式市場が、次のスターを渇望する心を映し出しているかのようだ。

ロイターなどが報じたところによると、ナスダックOMXグループの幹部は「フェイスブックの上場で市場が活気づき、新規株式公開(IPO)が急増するのではないか」との見方を示している。

15日には、米アップルの共同創業者、スティーブ・ウォズニアック氏が、フェイスブックの上場時に同社株を買い入れると述べ、注目を集めた。時価総額はインターネット企業としては最大規模となる960億ドルに達すると予想されている。

投資家らのキャピタルゲインが、新たな投資意欲を生むことが期待されており、NASDAQ関係者は、「今後6~12カ月以内に200~300社がIPOを申請するのではないか」との見方を示している。昨年のNASDAQ新規上場企業数は151社と、前年の195社を下回ったことから、景気浮揚への期待の大きさがうかがえる。

今年は大統領選挙の年であり、再選を狙うオバマ陣営としては景気の底上げが不可欠だ。その意味で、目先の景気指標を押し上げるフェイスブック景気は、オバマ再選に有利に働くと予想される。

選挙でのインターネット利用の規制はビジネスの発達に不利

日本では、選挙にインターネットを使うことは規制されている。一方、アメリカでは大統領選をきっかけにソーシャルメディアの活用法が活発化し、ビジネスにも応用できるさまざまな手法が活発化してきたことを考えると、日本での規制は国際競争力のうえで、マイナスが大きいのではないか。

そうした問題意識を背景に、アメリカの政治におけるソーシャルメディアの活用に詳しい、前嶋和弘・文教大学教授に、今年の大統領選とソーシャルメディアの活用状況を聞いた。 

ソーシャルメディアはよりよい民主主義を導けるか

オバマ陣営の選挙公式サイトのトップページに掲載された新しいプラットフォームを含んだオバマ陣営のソーシャルメディア一覧
(2012年5月13日にアクセス)

前嶋 和弘(文教大学准教授)


2008年の大統領選挙におけるオバマ陣営が先鞭をつけて以来、ソーシャルメディアの活用はアメリカの政治のツールとして完全に定着した。注目されるのは、そのツールを使って、有権者の政治との関わり方や有権者どうしの関係にも質的な変化が少しずつではあるが現れてきたことである。

ここ数年のアメリカ政治におけるソーシャルメディアの利用について分析しながら、ソーシャルメディアは潜在的に政治をどのように変革していくのか、そして今年のアメリカ大統領選の行方についても考えてみたい。

ソーシャルメディアの王様はザッカーバーグではなくオバマ

オバマ陣営の選挙公式サイト (2012年5月13日にアクセス)


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オバマ米大統領のKloutスコア(ソーシャルメディア上の影響力を示すスコア)は94と最高レベル。


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共和党候補のロムニー氏のKloutスコアは84(2012年5月15日現在)。対立する共和党陣営も必死でスコアを伸ばす。

ここ数年のアメリカの政治の変化の中で最も目覚ましいものの1つが政治過程の様々な段階でのソーシャルメディアの頻繁な利用である。選挙運動の動員から特定の政策についてのPRや政敵の批判など、政治家や候補者が利用するだけでなく、利益団体のロビー活動、さらには市民運動の様々な局面で、ツイッターやフェイススブックが広範に活用されるようになった。

ソーシャルメディアを本格的に政治に使いこなす戦術の先鞭をつけたのが、日本でも広く知られている2008年大統領選挙のバラク・オバマ陣営である。オバマ陣営は技術に熟知したスタッフをそろえ、選挙公式サイト内に特設したSNS(「マイ・バラク・オバマ・ドットコム」)で、支持者相互の「水平型」な支援構造を作り出していった。

ソーシャルメディアの効果はオンラインからオフラインに参加者の思いが昇華した時に発揮される。オンラインで知り合ったオバマの支援者は、実際に街に出て他の支援者と触れ合うことで、草の根レベルでオバマを支援する輪が広がっていった。さらに、SNSが呼び水となったインターネット献金は対立候補を大きく凌駕した。特に、小口の献金者は熱心な若者が多く、小口献金が増えれば増えるほどオバマ支持は熱を帯びていった。このようにソーシャルメディアを利用し、オバマ支援が社会運動化する中、オバマは民主党の予備選、大統領選挙でも勝利していった。

2008年の段階ではフェイススブックやツイッターの普及も今に比べると非常に限られていた。ツイッターは登場したばかりであり、同年8月のフェイススブックの利用者は1億人と現在の9分の1程度だった。それでも特設のSNSにフェイススブックを積極的に組み入れるなど、オバマ陣営は様々な技術的な変化を自らの力とし、アメリカの政治に“ソーシャルメディア革命”をもたらした。

ワシントンポストが「ソーシャルメディアの王様」とオバマをよんだのも、大きくうなずける。

前嶋 和弘(まえしま かずひろ)
1965年生まれ。文教大学人間科学部人間科学科准教授。上智大学外国語学部英語科卒業後,新聞記者生活を経て1994年渡米、ジョージタウン大学大学院政治修士課程修了(MA)、メリーランド大学大学院政治学博士課程修了(Ph.D.)。専攻はアメリカ政治(とくにメディア,議会)。主要著作は『アメリカ政治とメディア:政治のインフラから政治の主役になるマスメディア』(単著、北樹出版、2011年)、『インターネットが変える選挙:米韓比較と日本の展望』(共編著、慶応義塾大学出版会、2011年)、『オバマ政権と過渡期のアメリカ社会』(共編著、東信堂、2012年)など。

※続きは『人間会議』2012年夏号(6月5日発売)「ソーシャルメディアの本質」特集でお読みいただけます。ご予約はこちらから。

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