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コラム

CSR視点で広報を考える

ハッカー集団アノニマス 攻撃対象はアジア圏!?

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Anonymous Analytics(アノニマス・アナリティクス)

昨年9月30日、ネットの自由を訴えて政府や企業のサイトを攻撃してきたハッカー集団アノニマスは、突然「ユーチューブ」でAnonymous Analyticsと名乗り、新たな声明を出した。世界中から不正告発情報を受け付け、調査し報道することを目的とするという。これまで場当たり的にある目的のために集まり、やみくもに攻撃してきた旧アノニマスと異なり、妙に組織的なイメージを感じさせた。しかし、センセーショナルなデビューとは裏腹にその後は目立った動きもなく沈黙を保っていた。 

動きがあったのは今年3月30日、Anonymous Chinaと名乗る謎の集団がツイッターで登場。それを皮切りに約500の中国当局や著名企業の関係サイトを乗っ取り、改ざんするなどの行為を行ったほか、中国当局のファイヤウォールをどのようにしたら見つからずに突破できるかなどの情報を公開し、中国政府を震撼させた。

しかし、これは攻撃の序章にすぎなかった。4月下旬には、香港市場に上場しているたばこ・食用香油大手メーカー「華宝国際」による「粉飾決算」「役員の不正蓄財」などが記載された44ページにもわたる詳細な報告書がネット上に公開され、大きな話題となった。

報告書によれば、これらは彼らの内部告発用サイトに寄せられた情報をもとに、昨年秋以降に中国のほか、研究開発拠点のあるドイツ、企業買収をしたボツワナに実際に出向いて取材を重ねた上、コンピューターの専門家、会計士、弁護士などの外部の専門家を入れたチームで裏付調査を行い公表したとしている。

その詳細な内容には、同社が売上高や利益率を不正に偽り、株価を不当につりあげたと指摘し、若くして億万長者となった女性創業者に狙いをつけて「私腹を肥やしている」と非難するなど、攻撃の手を緩めず徹底的な不正の告発を行った。この結果、同社株は断続的に下落し、投資家からの問い合わせに追われる緊急事態に陥った。

アジアに目を向けたアノニマスの狙い

これまで北米・南米を中心に動いてきたアノニマスは、最近幹部グループがFBIに逮捕されたり、南米マフィアに命を狙われるなど、負け戦を強いられてきた。一方、現在、ユーロ圏では多くの国で経済的な危機の直面下により国力が低下しており、彼らの成果に対するインパクトは少ないと考えたのだろう。その点、世界の中で、指導的立場を築き、疑うことができないレベルまで発言権を得た中国を中心に、アジア圏に関心を持ったことは避けきれない状況であったと言えなくもない。攻撃対象が大きいほど彼らの士気も上がることになる。

5月に入り、アノニマスは中国だけでなく、日本・韓国における企業に関しても攻撃対象とする含みのある発言を行っている。すでに内部告発情報をもとに内偵を重ねているのか不気味である。彼らの攻撃対象は基本的に著名企業や上場企業であると考えてよいため、万一特定の国内企業がそのターゲットになった場合には、相当のダメージと信用喪失につながる可能性があると考えられる。オリンパス事件は、国内でのインパクト以上に海外での金融機関、投資家、アナリスト、企業経営者などの間で風評となった。コーポレートガバナンスがない、コンプライアンスの意識が低い、などいずれにしても耳に痛い話題ばかりである。オーナー系企業が多く、特殊な企業風土を醸成してきた日本企業に対して、オリンパス事件をきっかけに、アノニマスが日本に大きな関心を持ったとすれば厄介なことだ。

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