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集合知をつくる対話の心・技・体(1)

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小林 正弥 千葉大学大学院人文社会科学研究科教授
戸松 義晴 全日本仏教会、浄土宗総合研究所
枝廣 淳子 環境ジャーナリスト、幸せ経済社会研究所

エネルギー・デモクラシーの実現を目指して

東電福島第一原発の事故によって、原子力エネルギーに関する様々な問題が明らかになった。しかし、これは、東京電力や原子力安全保安院だけの責任だろうか。問題を指摘できなかったマスメディアはもちろん、コンセントの向こう側に無関心だった市民にもエネルギーについて考える責任があったのではないか。

福島第一原発の事故は、市民がエネルギーの問題を自分ごととして考える契機となった。この経験を新しいエネルギー文明を築くための好機として活かすためにも、集合知を生みだす創造的対話が必要だ。公共哲学や宗教における相互理解の手法にそのヒントを探る。

女性や若者の意見が反映されないエネルギー基本計画

――2030年までのエネルギー基本計画をつくる基本問題委員会の委員であると同時に、様々な市民参加型の対話を主催してこられた枝廣さんから、これまでの対話の成果や市民の声を政策に反映させていくうえでの課題についてお聞かせください。

枝廣 昨年の10月から資源エネルギー庁の基本問題委員会(以下、委員会)に参加していますが、エネルギーについて国民みんなで考えてその成果を国政に反映していく仕組みがないことを実感しています。委員会では、今年の夏を目途にエネルギー基本計画(案)をまとめる予定です。

昨年7月に10人の有志が発起人となってスタートした「みんなのエネルギー・環境会議」のやり方に倣い、これまでの審議会と比べて改善点もあります。委員会の議論の様子はすべてネットで中継されていて、アーカイブですべての議論や資料を見られるようになっていますし、傍聴者や視聴者からも意見を寄せてもらって、取りまとめて委員や官庁の方々、関心ある市民も見ています。

しかし、根本的な問題は、国民の意見を代表するかたちになっていないことです。まず、委員の顔ぶれに偏りがあります。

25人の委員のうち、女性は4人。家庭を含めた民生部門のエネルギー消費量が増えていることからもわかる通り、エネルギーは産業経済だけでなく家庭も関わる問題なので、家計を預かる女性の意見が反映されないようでは国民の総意とはいえません。また、25人の委員のうち60歳以上が64%を占めています。一方、日本の人口のうち39歳以下が40%いるのに、委員には1人もいません。一番若い委員が42歳です。

2030年までのエネルギー基本計画を、その頃には社会の中枢にいない方たちが中心になって議論しているという根本的な問題があり、委員会でも繰返し指摘するとともに、女性や若者の意見を聞くために、女性約100人が集まって話合う「エネ女の集い」や高校生・大学生、20代の方が集まって話合う「エネ若(やん)の集い」を行い、その結果を委員会でも報告しました。

そこではいくつかの発見がありました。委員会では、経済性や国際競争力を中心とした議論を行っていますが、「エネ女」では、命や健康や将来世代に対する責任ということが重要なテーマになりました。また、「エネ若」では、「いまの委員会の人たちには彼らの青春時代の思いがあって、その延長線上に未来を考えているかもしれないけれど、僕・私たちの時代に大事なことは違う」という意見が出ました。

――60代の委員の方の青春時代は経済成長の真っただ中で、オイルショックがあって、エネルギーをなんとかしなければならなかった。しかし、いまの若者にとっての最重要課題はまったく違うのですね。

※全文は『人間会議』2012年夏号(6月5日発売)「みんなで考えるエネルギーの未来」特集でお読みいただけます。ご購入はこちらから。


小林正弥(こばやし まさや)
千葉大学大学院人文社会科学研究科教授。1963年東京生まれ。東京大学法学部卒業。専門は政治哲学・公共哲学・比較政治学。NHK の「ハーバード白熱教室」のマイケル・サンデル教授と交流が深く、解説を務める。自身も千葉大学公共哲学センターのほか、丸の内朝大学や建長寺における仏教者と市民の対話など、様々な場で対話型講義を開催する。著書に『対話型講義 原発と正義』(2012
年、光文社)『サンデルの政治哲学』(2010年、平凡社新書)など著書・共著・訳書多数。

戸松義晴(とまつ よしはる)
全日本仏教会前事務総長、浄土宗総合研究所研究員。1953年東京生まれ。ハーバード大学神学校において応用神学と生命倫理学を学び神学修士取得。心光院住職の傍ら慶應大学や東洋大学などで講師を務める。仏教者による終末期医療への取り組みを探求。全日本仏教会による「葬儀は誰の為に行うのか?~お布施をめぐる問題を考える~」シンポジウムを推進。『Never Die Alone』『仏教徒ターミナルケア-エイズホスピス寺院から学ぶもの-』など著書・共著多数。

枝廣淳子(えだひろ じゅんこ)
環境ジャーナリスト、翻訳家、幸せ経済社会研究所所長。1962年京都生まれ。東京大学大学院教育心理学専攻修士課程修了。NGO ジャパン・フォー・サステナビリティ代表。有限会社イーズ代表。有限会社チェンジ・エージェント会長。みんなのエネルギー・環境会議発起人など。総合資源エネルギー調査会基本問題委員会委員。2011年に設立した幸せ経済社会研究所では幸せ-経済-社会の関係性を問い直し、より望ましいシステムや指標を探る。『わが家のエネルギー自給作戦』(エネルギーフォーラム、2012年)『GNH(国民総幸福): みんなでつくる幸せ社会へ』(海象社、2011年)など著書・共著・訳書多数。
『人間会議2012年夏号』
『環境会議』『人間会議』は2000年の創刊以来、「社会貢献クラス」を目指すすべての人に役だつ情報発信を行っています。企業が信頼を得るために欠かせないCSRの本質を環境と哲学の二つの視座からわかりやすくお届けします。企業の経営層、環境・CSR部門、経営企画室をはじめ、環境や哲学・倫理に関わる学識者やNGO・NPOといったさまざまな分野で社会貢献を考える方々のコミュニケーション・プラットフォームとなっています。
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