米国スターバックスの新しい取り組み「Create Jobs for USA」~雇用を増やす取り組みから日本人が学ぶべきこと

米国スターバックスは、昨年11月にOpportunity Finance Networkという機関と共に「アメリカ人の手で米国の雇用を増やそう」という「Create Jobs for USA」プログラムを立ち上げた。スターバックスが500万ドルを寄付し始めたこのプログラムが、ある工場を倒産の危機から救ったことが米国メディアに大きく取り上げられ話題となっているので、紹介したいと思う。

lets create jobs for usa

事の始まりは、Create Jobs for USAプログラムに刺激を受けたHonighausenという人が、米国の陶磁器工場を再生させようとスターバックスの協力を求めたことによる。Honighausen氏は供給業者としてスターバックスと長年に渡りビジネスを行ってきた。彼は、すばらしい技術を持ちながら、解雇され、失業中の人々が多くいることを残念に思っていたが、「スターバックスの『Create Jobs for USA』を知ったとき、『これだ!』と思った」と語っている。彼の言う「再生」とは、工場を新しく建て直すのではなく、昔ながらの方法で作られた陶磁器のマグカップを製造し続けるというシンプルなものだった。

グローバル化の競争の果てに

ビデオの中で、スターバックスのCEOハワード・シュルツが紹介しているのは、かつては「世界の陶磁器の首都」と呼ばれたオハイオ州のイースト・リバプール。

ショートバージョン動画

ロングバージョン動画

グローバル競争の波に飲まれ、最盛期には40以上あった陶磁器工場も、今や2つしか残っていない。そのうちの1つ、「American Mug and Stein Company」は倒産寸前のところまできていた。同社に勤める女性は、夫婦同時に仕事を解雇され、子どもたちを学校の遠足に参加させるためのお金もなかったと語っている。しかし、スターバックスの注文のおかげで、彼女は仕事に復帰することができた。スターバックスの注文の前は、たった4人にまで減っていた同社社員は18人にまで増えたという。多くの人は、彼女のように、以前解雇された元社員だ。

「この5年間は工場の存続をかけて戦っていた」とAmerican Mug and Stein Company のオーナーClyde McClellan氏は語る。不況のため、銀行から融資が受けられなくなったことが大きな理由だ。苦境の中60代になり、自分の夢の多くが叶えられることがないと知り、自分のビジネスに自信を持つことができなかった。同氏は「スターバックスの注文によりここ数年で初めてポジティブになることができた」と語っている。ハワード・シュルツ氏がビデオの中で言っているように値段をつけられない程尊いものである「自尊心」を取り戻したのだ。

このビデオの見所は、インタビューではなく、従業員の作業姿だ。このように手作業で一つひとつ丁寧に物を作る姿を久しぶりに見た気がする。

米国スターバックスのCSR活動 

米国スターバックスは、「収益性と社会的良心のバランスは保つことができる」という信念に基づき、「Create Jobs for USA」プログラムのほかにもCSR活動として以下のような活動を行っている。一部の活動を紹介するが、詳細はリンクを参照してほしい。さまざまな活動があることを知り驚くばかりだ。

lets make our communities thrive

コミュニティストア
ロサンゼルスとニューヨーク市では、地域の活性化の取り組みを支援し、コミュニティの教育、雇用、健康、住宅、安全性を向上させるために二つの革新的な非営利団体と協力している。

コミュニティ・サービス
すべてのスターバックス店舗は、コミュニティの一部であり、スターバックスがビジネスを行う地域の繁栄に努めようと様々な地域でプロジェクトが行われている。ガン生存者のための資金集めや、献血イベント、女性と子どものためのシェルターへミネラルウォーターやペーパータオルを寄付するプロジェクトなど多様な取り組みが行われている。

ユースアクション
コミュニティが繁栄するための最も重要な方法の一つは、若者の関与を通じてであると考え、スターバックスユースアクション助成金として2011年度は合計260万ドルを世界中の若者をサポートする機関に寄付している。

スターバックス財団
コミュニティへの取り組みを促進するために作成した、スターバックス財団は、有意義な方法で地域社会に貢献するプログラムをサポートしている。

まとめ

日本でも高い失業率が問題視される中、多くの企業がアジアを中心とした海外へ進出している。円高の影響もあるが、昨年の震災をきっかけに、自動車業界をはじめ、多くの企業が国内工場に集中していたために、商品の出荷ができないという苦い経験をした。国内雇用を重視しすぎれば、様々な経営上のリスクがあるということもよくわかる。また、企業として、当然コストとの見合いを検討しなくてはならない。この事例で紹介したように、スターバックスのような成功している企業がほんの少し手を差し伸べることで、弱者に大きな影響力を与え、社会をよりよくする流れを作ることができる。

社会が抱える問題は複雑だが、多くの場合、解決方法は小さな取り組みから始まる。スターバックスの取り組みは、米国の失業問題を根本から解決するものではないかもしれないが、そのスタートによって、多くの人に良い刺激を与えている点において、すばらしい。

本コラムは、多くの優秀なマーケッターや広告宣伝担当者にご覧いただいていると思うが、単に売り上げを伸ばすだけではなく、スターバックスのような新しい取り組みによって、社会に良い影響を与える商品やサービスを作り出してほしいと願う。その先には、多くの人々からの賞賛と社会からの信頼という大きな利益があるからだ。

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青葉 哲郎(サイコス代表取締役社長 マーケティングコンサルタント)
青葉 哲郎(サイコス代表取締役社長 マーケティングコンサルタント)

1994年4月 ジャスコ (現イオン)入社。1995年マイクロソフト入社。トップセールスを経て、最年少プロダクトマネージャに就任。米国ソフトウェアのローカライズを担当。MSN事業開発など担当。2001年インテリジェンス入社。マーケティング部を設立し『はたらくを楽しもう。』で同社を転職ブランド1位に。2008年リクルートエージェント入社。『転職に人間力を。』で新ブランドを立ち上げ、コスト減と広告効果の最適化で成功を収める。同年10月リクルート出向。2009年11月サイコス株式会社を設立。2010年より、宣伝会議「インターネットマーケティング基礎講座」の講師も務める。

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青葉 哲郎(サイコス代表取締役社長 マーケティングコンサルタント)

1994年4月 ジャスコ (現イオン)入社。1995年マイクロソフト入社。トップセールスを経て、最年少プロダクトマネージャに就任。米国ソフトウェアのローカライズを担当。MSN事業開発など担当。2001年インテリジェンス入社。マーケティング部を設立し『はたらくを楽しもう。』で同社を転職ブランド1位に。2008年リクルートエージェント入社。『転職に人間力を。』で新ブランドを立ち上げ、コスト減と広告効果の最適化で成功を収める。同年10月リクルート出向。2009年11月サイコス株式会社を設立。2010年より、宣伝会議「インターネットマーケティング基礎講座」の講師も務める。

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