コラム

マーケティングからイノベーションを起こすために

ROI思考を身につけ、競争力を高める3つの要素

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マーケティングコンサルタントの青葉哲郎です。前回は、「マーケティング部門の現状」と題し、経営者に「マーケティングは、経営課題そのもの」だと認識させることが重要であるという話をしました。今回は、マーケティング部門はどのような立ち位置で、社内外の人間を動かしていくのか。マーケティング部門が競争優位を作り出すために必要なステップについて、話します。

投資対効果に向き合い、創意工夫を怠らないマーケティング機能を持つ組織だけが勝ち残れる。

競争に勝つために何が必要か。もし自社に無限にリソースがあれば、競合を上回る予算を投下し続けることで、競争相手に追いつき、やがて勝つことができるはずです。しかし、当然ですが、そのようなことができる企業は限られており、多くの場合、限られた資源の中で、戦っていかなくてはなりません。

2位以下の企業は、投資コストについて緻密に計算し、最小のリソースで最大の成果を出すための創意工夫が求められます。携帯キャリアのソフトバンクを例にとると、ホワイトプランという無料通話や、割賦払いで安く端末を購入できるといった、戦略的で創意工夫あふれるサービスを提供していることに加え、マスメディアを巧みに使った広告宣伝で契約純増数ナンバー1のポジションを確立しました。やみくもに、広告投資を行う、プロ野球球団を持つ、テレビCMで上手に露出する、ということだけでは、競合企業に対して圧倒的に不利な立場から、ここまでの成功を収めることは考えにくかったと思います。

日本企業はROI(投資対効果)を考えるのが苦手。投資対効果を事後検証する企業はわずか13.5%

私は、日本企業・米国企業の両方での就業経験に加えて、起業後は多くの企業をコンサルティングしています。そこで見えてきたことが、得てして日本企業は米国企業に比べ「投資対効果を考えるのが苦手」ということ(下図)です。

さまざまなキャリアを持った人材が一緒に働く米国企業では、コミュニケーションの中心は数値であり、数値での説明責任が求められます。一方、日本企業は終身雇用というシステムの中で、あうんのコミュニケーションを取ることで、これまで物事の決済を進めてきたため、責任を追及することはご法度で、投資対効果の概念が根付いてきませんでした。

グラフはそのことを象徴している日米のROIに関する比較データ(総務省調べ)です。赤が日本企業で、青が米国企業。左から順番に、「導入前の投資対効果の検証」、「投資対効果の定量的な効果検証指標の整備」、「導入後の定期的・定量的な効果測定指標」です。

ご覧いただくと、事前に投資対効果を検討する企業は、米国企業82.9%、日本企業57.8%と、日本企業は米国企業に比べ約25ポイントも低い状況です。特に顕著なのは投資後の効果検証で、米国企業62.4%に対して、日本企業はわずか13.5%となっています。多くの日本企業でお金を使ったら使いっぱなしという状況なのです。

では、ROIが苦手な日本企業は何をすべきか、マーケティングや広告宣伝に携わる我々にできることは何か、これからお話していきます。

企業・マーケティング部門が、競争力を高めるために必要な3つのこと。

企業のコンサルティングを通して、私は成果を出すために3つの重要事項についてしっかり議論するように伝えています。一つ目は「目標の持ち方について」、二つ目は「カギとなる指標(KPI)の設定について」、三つ目は、「決まったことをどのように実行するかについて」です。

1.目標設定について
目標の設定と一口に言っても、短期的に(今期予算を達成するために)しなければならないことと、中長期的に(3年後競合に対して優位性を作るために)しなければならないことがあります。

ポイントは、短期と中長期目標を別々に設定する必要があるということです。当社では、単年度、3か年、5か年の目標設定シートを用意し、それを作ることで実現可能性があるのかどうかを見定めます。自社のリソースが限られていることを痛感してもらい、実態に合った目標設定を経営者から現場責任者まで一体となってプランニングしていきます。

2.KPIについて
KPIを設定する前に、組織にとって最も大きな目標(KGI)が何かを明確にし、それに紐付いたマーケティング上の数値目標(KPI)を決めていきます。事業目標とマーケティングをどのように接触させて、ドライブをかけていくかは、事業構造や事業の状況、マーケティング的ないわゆる3C分析によって決定しますが、難易度や達成実現度を考慮して数値目標を決定していきます。

3.実行体制について
いいプランが出来上がっても、実行するにはさまざまな障壁が存在します。経営側の理解がないと、社内の各セクションからの協力は得られませんし、適切なリソース(人・金)を獲得することもできません。また、プランを実行していくには、優秀な人材の確保も必要ですし、また外部ベンダーを活用するために一定の予算も必要になります。そして、社内の関係者をまとめるリーダーも重要な存在です。プランを理解しコミットしてくれる仲間がいてこそ、さまざまな難局を乗り越えることができるのです。

競争力を高め、より大きな成果を出すために

前回もお話ししたように、マーケティング部門の課題は多岐にわたり、組織横断を伴うプロジェクトを通じた課題解決も不可欠となってきています。ステークホルダーを巻き込んでいくためには、「マーケティング課題は、経営課題そのものである。」ことを全社に知らしめる必要があります。

そのためには、マーケティング戦略の世界観を全社各部門で共有し、全社を巻き込んで実現する目標達成シナリオが必要です。そして目標やKPIが数値として明確に設定されていれば、外部パートナーも社内も経営も、状況を共有することが容易になります。進捗状況の共有がスムースにできると、多くの人が支援しやすくなり、マーケティング部門は、より大きな成果を出すことが出来るようになります。

競争力が高い組織は共通して、上記の3つのことが実現できています。一見、簡単そうに思えるかもしれませんが、それが、組織全体として徹底できているでしょうか?その徹底ができているかの差が、そのまま競争力の差になっていることを忘れないようにしてください。

※用語解説
ROI
Return On Investment。投資対効果。

KGI
Key Goal Indicator。重要目標達成指標。経営・事業目標の数値がそれにあたる場合が多い。例)2012年度Web経由売上300億円

KPI
Key Performance Indicator。重要業績評価指標。目標達成のためのプロセス管理指標。例)サイト訪問数○○万人、購入単価○○%アップ

青葉哲郎 「マーケティングからイノベーションを起こすために」バックナンバー

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