コラム

マーケティングからイノベーションを起こすために

消費者の待ち時間を狙ってマーケットシェアアップ!世界で広がる「バーチャルストア」キャンペーン

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「仕事で帰宅が遅くなり、家に食料もないが、どこにも行く気力がない」そんな経験をしたことはないだろうか。そんな多忙な現代人に朗報とも言える、世界のバーチャルストアキャンペーンを紹介したい。

昨年の夏、英国テスコが、店舗数を増やさずにマーケットシェアを増加させるため、ソウル地下鉄駅にバーチャルストアを設置して話題となった。駅のホームに商品の棚に見立てたディスプレイを設置し、肉や魚といった生鮮食品や日用品などを、スマートフォンをかざして購入できるというものだ。百聞は一見にしかず。まずは、動画をご覧いただきたい。


テスコ「ホームプラス」バーチャルストア

新規会員数76%増、売り上げは130%増加

地下鉄の駅のホームで、電車を待っている間、画面上の商品にスマートフォンをかざし、QRコードをスキャンするとオンラインのショッピングカートに商品が入れられ、商品購入できる。

商品は自宅に配達してもらえるため、働くお母さん達には、便利で非常に喜ばれている。3カ月に渡って行われたこのプロモーションで、新規登録会員数は76%増え、オンラインセールスは130%増加したという。

この取り組みは、昨年の「カンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバル」でメディアグランプリを受賞し、マーケター、リテイラーから脚光を浴びた。待ち時間が退屈なのは世界共通であるため、この1年で、同様の取り組みが世界に広がっている。

中国のオンラインストア取り組み~Yihaodian(1号店)

中国の最大級オンラインストアであるYihaodian (1号店)は、昨年8月に上海の地下鉄駅に、小売店舗と見間違うようなバーチャルストアを設置した。上海中を走る9つの地下鉄線に、生鮮食品からオムツまでの様々な商品がLEDスクリーンに表示され、スマートフォンを活用するように誘導している。

ヨーロッパ、チェコ共和国のプラハで行われたP&Gのキャンペーン

ヨーロッパでも同様の取り組みが行われている。P&Gが、昨年10月にチェコ共和国プラハの地下鉄4駅で、駅構内でのバーチャルストアを活用したプロモーションを行った。こちらは液晶画面ではなく、大きなポスターにQRコードを印字している。忙しいビジネスマンや主婦にとって、洗濯洗剤のような重たいものを自宅まで配達してくれるというのは嬉しい限りだ。キャンペーン期間中、2日以内の無料配達が保障されていたという。

米国雑誌『Glamour』による、ホテル内ショッピングキャンペーン

ニューヨークの地下鉄は、残念なことに携帯電話の電波が届かないところがある。今年2月に行われたニューヨークファッションウィーク期間中、『Glamour』はマンハッタンにあるStandard Hotel内にバーチャルストアを設置した。この雑誌が女性誌ということもあり、美容商品を中心に掲載されている。画面ではわかりにくいが、大型液晶パネルに映し出しているのではなく、本物のショーケースに商品が設置されており、QRコードで購入できるようになっている。

英国のバス停のバーチャルストア事例~HMV・20世紀フォックス

次は英国のバス停を利用したキャンペーンを紹介したい。退屈なバス停での待ち時間を利用して、商品を購入してもらうためのキャンペーンが行われた。英国HMVと 20世紀フォックスは、HMVのモバイルアプリを使って、20世紀フォックスのDVDやブルーレイディスクを購入してもらうというキャンペーンを行った。こちらも、やはりQRコードを使用している。

これまで紹介した事例以外にも、世界中でバーチャルストアが広がっているのだ。

まとめ

地下鉄にしても、バスにしても、待っている時間というのは非常に退屈でつまらないものだ。特に、地下鉄の駅には景色がなく、デジタルサイネージがより映えるためインパクトがある。利用者も退屈な時間を有効活用できるため、広告であっても嫌がられることなく、キャンペーンを楽しんでショッピングしてもらえる傾向があるようだ。顧客をリアルからネットへ誘導している点において、こうしたキャンペーンはユニークで素晴らしい。

多忙なビジネスパーソン、特に働くお母さんを引き付けたこの種類のキャンペーンは、世界中の小売業のビジネスに多大なる影響を与えつつある。スマートフォンが普及する前には考えられなかったことだが、本当に便利であれば消費者はサービスにもお金を払う。今後は特定期間のプロモーションだけでなく、常時設置のバーチャルストアが出てくるのかもしれない。小売業やメーカーは、消費者と共に絶えず変化が求められるが、消費者の変化スピードは日々加速しており、追いつくのは並大抵のことではない。

青葉哲郎 「マーケティングからイノベーションを起こすために」バックナンバー


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