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コラム

最新米国小売業からプロモーションをハカる。

買物をお手伝いするロボットカートと動くチラシ

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米国の流通小売業の店舗のイメージは?というと「とにかく売り場が広い」「大きなカートを押す買い物客の姿」「車数百台が停められる巨大な駐車場」こうした様子が目に浮かびます。面積や人口を日本と比べても、面積では日本の約24倍、人口は約3倍とその土台となる大きさや人の数の違いが感じられます。今、米国でも広い売り場による買物の不自由さや、今後確実に増えてくるシニア層の取り組みとして「次の時代における買物シーンの捉え方」について、リテールやメーカーでも考えられています。今回は、この取り組みをテーマにします。

今年5月に南青山で行われた『売れる店頭セミナー』(主催:売れる店頭研究会)を拝聴した際に、Excell-K ドラッグ代表の松村清氏のお話しの中に、次のような興味深い内容がありました。米国のスーパーマーケットで買物をする際に、バスケットを持たずに買物をした際と、バスケットを持って買物をした場合、またショッピングカートを使用して買物をした際の「買物総額の差」(answer バスケットを持たず:940円 バスケットを持って:2980円 カートを使用して:5400円これらの金額はそれぞれの買物の際の平均額)について。お話しを聞きながら、自分の買物の様子を思い出し、あらためて売り場での取り組みに何が必要かを知る<新鮮な発見>がありました。今回は、まずはこの「ショッピングカート」に関する話しから。

未来型ショッピングカート」

wholefoods

ホールフーズマーケットの店内で目に付くLOCALの文字。 この文字には地域の人と、地域のための、地域と一緒に など様々な意味が込められている。

買物をしている際に、その場で文字や音声で色々な商品情報を得ることができたり、ショッピングカートを押す手間が省けたり、自分の好きな商品のある売り場(コーナー)やショップへと導いてくれたりと、そんな可能性を感じさせる「未来型のショッピングカート」の開発に取り組んでいる米国のスーパーマーケットがあります。「オーガニックフーズ」や「PB商品(365 Everyday Value)が食品の売り上げ全体の8割もある」ことでも知られる全米で人気のお店「ホールフーズマーケット」。

ホールフーズマーケットの実験段階のショッピング カートの様子。
正確さや安全性が高められれば今後 店内での新しい機能になる。

このショッピングカートは電動で動き、カートのハンドル部分にはウィンドウズ8タブレットが装備されています。カゴの部分には商品に付いたバーコードを読み込むスキャナーがあって、購入商品の情報をストックやレジに並ぶことなくセルフによる精算が行えます(この機能が一番買物を助けるような気がします)また、このカートは買い物客のロイヤリティ・カードを読み取り、さまざまな情報を発信することも出来ます。センサー機能によって買い物客の動きを把握、買物の最中に付いて回ったり、探している商品情報を読み取るとその売り場まで誘導する機能まで備えています。ただ、これらはまだ「テスト段階」であり、操作性やスムーズな稼動や安全性など実用的になるまでには、まだ時間が掛かりそうです。

以前からショッピングカートに、電卓や売り場(コーナー)と連動したセンサー機能が付いたカート(商品の置かれたコーナーを通りかかると電子音声や音楽が流れる仕組み)は実用段階でも目にしましたが、これだけ情報提供やシステムが付いたものは初めて。日本でも高齢化問題をはじめ、売り場におけるさまざまな課題の解決として同様の取り組みが進んでいると思います。

日本では動くチラシ

日本のホームセンターのカインズのチラシで「スマートフォンでチラシが動く」こんな見出しがありました。これは、スマートフォンの「QUEMA」というアプリを使って、チラシに掲載の商品のコードを読み取ると商品説明等の動画を見ることができる仕組みです。

商業施設や駅に貼られたポスターや広告から、ウェブサイトへ誘導し「商品やさまざまなサービスの詳細情報」や「クーポンの入手」「懸賞へのアクセス」等は見られましたが、新聞の折り込みチラシを使った取り組みは新しい試みです。こうしたスマートフォンの読み取り機能を使用する際、折り込みチラシの読者層におけるスマートフォンの普及率などの課題があります。普及率は全体や年代で捉えるよりも「ショッパー」や「カスタマー」でハカることが大切です。今回のように、掲載された商品の特徴を動画でより丁寧に説明することは、費用対効果と合わせてキチンと捉えれば、読み手に対する新しいアプローチになります。

以前コラムで「スマートフォンで動くパッケージ」(第11回コラム)について紹介をしました。スマートフォンで対象となるメーカー商品のパッケージを読み取り、専用アプリを立ち上げるとパッケージ自体がゲームの本体(ベース)になり、商品パッケージを利用しながら「もぐら叩き」のようなゲームが楽しめます。これは、飲料や食品で展開をされている総付け(ベタ付け)に対する新しい取り組みのヒントになるかも知れません。現在日本でも、お菓子の「ぷっちょ」でAR機能を活かしたCPN(商品パッケージをARのトリガーとして展開した内容)が見られました。

ココロのコト線について

未来型ショッピングカートも、動くチラシやパッケージもこれからの高齢化への取り組みや、さまざまなシステムの開発により私たちの生活の身近なツールとして現れて来ると思います。自分の欲しい商品を言葉で伝えると代わりに買物をしてくれるカートや、商品を動画でレコメンドしてくれるチラシも登場するかもしれません。

次世代の広告や販売促進を考える際に、こうした技術の進化とその時代に生きるコンシューマやショッパーの気持ちをハカり、折り合いをつけながら進めていく必要があります。

その中で、技術だけでなくココロの琴線(最近この言葉を聞くと、モノ・コトの捉え方からもコト線の表記が頭に浮かびます)を動かすことの大切さも感じています。

次回のテーマ「買い物客がFacebookで売り場の棚に商品をのせる」です。

倉林武也 「最新米国小売業からプロモーションをハカる」バックナンバー