コラム

最新米国小売業からプロモーションをハカる。

「買物客が Facebookで商品を売り場の棚にのせる」

share

スーパーマーケットでもコンビニエンスストアでも、売り場の棚に並ぶ様々なメーカーの商品。カテゴリーによって違いはありますが、年間で数百から数千というアイテムが新商品として開発され、メディアで伝えられ売り場に並んだりそうでなかったりが繰り返されます。

「この商品を売り場の棚にのせるかどうかを決めるのは誰か?」米国では、それを決めるのにFacebookを使ったキャンペーンが行われ話題を呼びました。日本でも「お客さんの声から商品の値段を決める」キャンペーンが行われましたが、今回はこれらをテーマに紹介します。

米国のリテールのマーケティングにおける大きな実績のひとつに「カテゴリー・マネジメント」があります。この意味は売り場における商品のカテゴリーを「戦略的ビジネスの単位として管理していく」ことであり、買物客に価値を提供することに集中することで、業績を改善していく事です。つまり、リテールがしっかりと管理をして、買物客に買いやすいお店や売り場を整えることです。メーカーは自社の商品(ブランド)の最大の魅力や実績をリテールのバイヤーに紹介して、バイヤーが「商品を自店の棚にのせる」わけです。本来は……

ウォルマートの Get On the Shelf

getontheshelf

棚にのせたい商品を公募を掲載したウォルマートの ホームページ。同社のソーシャルメディアコマースの 研究開発チームが主体となり行う。

getontheshelf2

ホームページに投稿された「棚にのせたい商品」 の紹介動画。4000以上の商品の情報が投稿された。

ウォルマート(全米で3500店舗、世界第1位の売上)は2012年4月に次の様なキャンペーンを展開しました。「Get On the Shelf (商品を棚にのせろ!)」というもので、ウェブサイトを使って、一般の視聴者に売り場の棚にのせたい商品を公募。

そして、投票数の多い商品をウォルマートの店頭と同社のウェブサイトで実際に販売するものでした。仕組みは、まずは視聴者が自分が棚にのせたい商品を紹介動画を使って投稿、その内容を見て視聴者がFacebookなどを通じて投票します。

1ヶ月間に投稿された商品の中から上位10アイテムを選び、次に最終決戦投票として上位の3アイテムを選びます。この上位3アイテムは、ウォルマートのウェブサイトで販売され、最優秀商品はウォルマートの一部のお店でも棚が与えられて販売されました。期間中、約100万票が投じられました。

この企画を担当した同店のソーシャル・コマースチームは「ウォルマートでは、EDLPにこだわり多くの素晴らしい商品を販売しています。ただ、私たちのまだ知らない魅力的な商品もあります。お店の棚にのせるのはバイヤーが長年行ってきました。今回の企画は誰もがそれを行うチャンスがあります」リテールの考え方を伝えるとともに、Facebookを活用することでの、口コミ効果や関心アップ、それをリアルな店舗の棚で最終的に展開をするという仕組みになっていました。さて、この結果選ばれた商品は…

選ばれた1位の商品は売り切れ。

4,000以上の商品の応募からグランプリに輝いたのは、非営利団体が提供するミネラルウォーター「ヒューマンカインド・ウォーター」。利益はすべてアフリカで清潔な水を飲める活動に役立てられています。同商品の出品動画は「アフリカでは、この動画を見終えるまでに、クリーンな水を飲めない人たちが10人亡くなっています」というコピーから始まっています。

2位は食品が乗ったお皿にふたを被せるだけで簡単に保存の出来る「プレート・トッパー」、3位はお年寄りでもメガネの修理が出来る「メガネリペアセット」。これら上位3位までの商品はウォルマート・コムでも販売され、1位のミネラルウォーターは発売後直ぐに品切れになりました。また、同商品はウォルマートの一部のお店でも「売り場の棚」が与えられました。

Facebookを使って「あなたの親切な行いで棚から商品をもらう」

米国ではありませんが、Facebookを使用したプロモーションで、キモチがなんとなく柔らかくなるような展開を紹介します。110余年の歴史を持つデンマークの老舗チョコレートブランド「Anthon Berg」が手がけたプロモーション「Generous store!」です。

これは、お金やクレジットカードではなく「あなたの大切な人への親切な行いをすることでAnthon Bergのチョコを購入出来る」という特別なお店がオープンしますというもの。お店の中に陳列されているすべての商品の値札には、値段ではなくて30種類以上の様々な「親切な行い」が記載されています。

その内容は「あなたの彼女の運転に1週間文句を言わない」「愛する人のベッドサイドに朝食を運ぶ」「1ヵ月間友達の家の掃除を手伝う」といったもの。

そしてお店のレジに行き、買い物客は商品を手に入れるためにiPadを使い特別な“支払い”が要求されます。買い物客自身が選んだ商品の値札に書かれている「親切な行い」を実行する相手をFacebookで自由に選んでもらい、その行いを“必ず実施する”というメッセージ(約束)をFacebookで相手に送る必要があります。Facebookでの投稿により特別な“支払い”は完了となります。

プロモーションの内容は、下記の動画でご覧下さい。お店での準備の段階から買物客の様子、反応が感じられます。

Facebookやtwitterは販売促進に不向きでは?という声があります。

確かにソーシャルな活動や声を、商品を売ることや来店を促進することへ直接結び付けようとすれば、課題やズレは生まれます。しかし、ここで紹介した二つの内容は、これからのソーシャルメディアと販売促進をつなぐプロモーションを考える上でのヒントになります。

ソーシャルメディアのリテールにおける活用のポイント。

まず展開の主旨や自らの考え方についてキチンとメディアの視聴者や買物客に伝え、同時に関心を持ってもらうためのテーマを設定し(Get On the Shelf やあなたの親切な行い)、それを広めてリアル店舗への来店や売り上げにつなぐ考え方を設計、この考え方は「ストーリー」や「物語」と表現した方が分かりやすいと思います。ソーシャルメディアのリテールのプロモーションへの活用は、価格の訴求や何かが貰えるといったお得感といっしょに、自分たちの声や行動が「正直さ」であったり「約束」といったキモチの奥(インサイト)にあるものと結びつくと、そこに想像以上の大きな効果が生まれる気がします。リテールは生活者の日々の暮らしに近い存在だからこそ、これらを大事にする必要を強く感じます。

次回のテーマは「だれがショールーミングを行うか?

倉林武也 「最新米国小売業からプロモーションをハカる」バックナンバー

Follow Us