メール受信設定のご確認をお願いいたします。

AdverTimes.からのメールを受信できていない場合は、
下記から受信設定の確認方法をご覧いただけます。

×
コラム

CSR視点で広報を考える

危機から何も学ばない日本 原発再稼働、本当に大丈夫なのか?

share

「結論ありき」の原発行政のつけが今顕在化する

直前までもめた原発再稼働、松井大阪府知事、橋下市長や関西広域連合などが最終的に条件付きで認めた関西電力大飯原発(福井県)と、北陸電力志賀原発(石川県)の敷地内を走る断層の活動性を検討する経済産業省原子力安全・保安院の専門家会議が7月17日に開かれ、3人の専門家から現地での再調査を求める意見のほか、これまで電力会社から一方的に提出された調査報告書を鵜呑みにしてきた原子力行政のあり方についても厳しい意見が続出し、実質的な再調査が避けられない情勢となっている。

大飯原発3号機は既に今月1日に原子炉を起動し、9日にはフル稼働となり、4号機も18日に起動が予定されている中での課題噴出である。

会議で問題となったのは、大飯原発内の「F6—破砕帯(断層)」と呼ばれる脆弱な断層で、7月13日に超党派国会議員108人の断層調査を求める緊急要望書や市民の緊急署名などによって関西電力は写真を提出していたものの活断層であることは否定していた。しかし、会議において「活断層の可能性を否定できる情報が出されていない」として、活断層かどうかを判断するための再調査を求める意見が相次いだ。

そもそもこの「F6-破砕帯(断層)」は、大飯原発1、2号機と3、4号機の間をほぼ南北方向に走っている断層で、渡辺満久東洋大教授らが、6月に「近くの活断層と連動して地表がずれる可能性を否定できない」と指摘し、警告していた。

会議当日、関西電力から新たに提出された資料でも、専門家は「全体像がつかめない」「資料の提出に問題がある」「なぜ(分かる)写真を保存していないのか」と批判が集中、「これ以上の説得力ある資料は期待できない」「判断するには調査が必要だ」と結論づけた。

また、志賀原発1号機の原子炉建屋直下を南東から北西に走る「S-1断層」をめぐり、活断層の専門家である今泉俊文東北大教授が「典型的な活断層だ。あきれてものが言えない」などと述べ、過去の安全審査にも問題があったと指摘するなど他の委員からも厳しい意見が殺到した。

反原発の戦いは静かに継続されている

このような状況の中、大飯原発運転差し止め裁判が継続されているのをご存知だろうか? 7月9日第三回審尋が行われ、次回8月13日午後1時30分(大阪地裁508号)には結審する。その内容については、大飯原発3、4号機運転差し止め裁判原告団事務局から資料が提供されているので、こちらを参照いただきたい。一方側の情報だけでは事実関係はつかめないが、少なからず関西電力側に不利な状況が見て取れる。

こんな資料も公開されている。こちらは今年6月7日に経済産業省内で行われた原子力安全・保安院プレスブリーフィングの概要についてである。そもそも報告事項は福島第一原子力発電所の状況等についてであったが、途中から西日本新聞記者の質問を受けて、「F6-破砕帯(断層)」の話題になっていく。この中で安全・保安院は渡辺東洋大教授の指摘を「聞いていない」、また、「今後も聞くかどうかも決めていない」と答え、記者からは「情報収集と言いながら、聞くのも決めていないというのはよく意味がわからない」と突っ込まれている。その後も読売新聞や他の記者からも質問を受け、渡辺教授の公表内容について専門家会議委員が現地調査が必要と指摘している点に触れても、「そのような話は聞いていない」と答えるにとどまっていた。

国民生活に直結するエネルギー政策の基盤となる原子力行政であるが、専門家がリスクを指摘しても真摯に受け止めようとしない。「専門家の指摘を踏まえて必要であれば現地調査をする」と言うが、その動きは緩慢で、リスク回避を本気で考えているのかさえ疑わしい。活断層地震が発生すれば原子炉は廃炉となり、稼働していれば事故により広い範囲で環境汚染が再び発生する可能性がある。また起きてから「想定外だった」とでも言うつもりなのだろうか?

白井邦芳「CSR視点で広報を考える」バックナンバー

もっと読む

「CSR視点で広報を考える」バックナンバー