横田 一(フリージャーナリスト)
「女が政治に口出しするな」。
そんな風潮が残る保守王国・山口がこの夏の県知事選(7月29日投開票)で変わり始めた。原発から再生可能エネルギーを中心とするグリーンな社会への転換を目指す飯田哲也候補(「環境エネルギー政策研究所」所長)を応援したのは、これまで政治や選挙に関わることが少なかった女性たちだった。一体、何が彼女たちを突き動かしたのか。
女性たちが新しい時代への扉を叩く
7月2日に山陽小野田市で行われたミニ集会には子ども連れの女性たちが集まり、
山口をどんな県にしたいか、本音で語り合った。
7月29日22時すぎ、落選確実となった飯田氏が敗戦の弁を語った記者会見が終わっても、山口市内の会見会場は熱気に満ち溢れていた。いつともなく、選挙中の集会を締める合言葉「(新しい政治を)哲っちゃんと始めよう」という掛け声が支援者の間に響き渡り、「胴上げしよう」という声も上がった。
すると、20人以上の人が飯田氏をすぐに取り囲み、本当に胴上げが始まった。落選した候補者を胴上げするのは前代未聞だが、敗れた側の支援者がこれほど元気一杯であるのにも驚いた。もちろん涙をぬぐう人はいたが、選挙戦を大声で語り合う女性たちの方が圧倒的に多かった。
7月の山口県知事選・飯田哲也氏の支援者たち。これまで選挙や政治的な活動に
か関わったことがなかった女性や若者が参加した。
「当初からボランティア選挙を引っ張ってくれた」と飯田氏が紹介した林美香さん(山口市在住)たちに話を聞くと、こんな熱い言葉が次々と返ってきた。「山本陣営は上からのトップダウンだったけれど、飯田陣営はボトムアップ。誰から言われるでもなく、横のつながりが出来ていった。それで、『ここまで行ける』と手ごたえを感じ、逆に自信がつきました」。
「『哲っちゃんと始めよう』コールはめちゃ、盛り上がりました。全然、負けた感じがしません。新たに結束が固まったという感じです」。「選挙期間中は夢を見たというより、もっとリアル。『世の中を動かせるかも知れない』『歴史の扉が開くかも知れない』という思いでした」。「男性はけっこう呆然としていたけど、女性は元気一杯。俄然、ヤル気が沸いてきました。『地域で出来ることからやろう』という感じです」。
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