コラム

広告の未来の話をしよう。COMMUNICATION SHIFT

中村洋基さんに聞く(後編)「世界をつまらなくしているものに抗いつづける」

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中村洋基さんに聞く(前編)はこちら

中村洋基 プロフィール:
早稲田大学第一文学部在学中からフリーのWebデザイナー・エンジニアを経て、2002年に電通へ。 当初は、斬新なアプローチのバナー広告を次々と発表していたが、やがてキャンペーン全体を手がけるようになる。Web技術から広告アイデアを企画するテクニカル ディレクターとして活躍。2011年4月より、株式会社パーティー クリエイティブ ディレクター。カンヌ国際広告祭金賞、One Show Interactive金賞、ロンドン広告賞グランプリ、AdFest Cyber/Innovaグランプリ、D&ADなど、内外200以上の広告賞を受賞、審査員歴多数。共著書に『Webデザインの「プロだから考えること」』がある。


(前編)からの続きです。

広告という装置を使って、「いいなあ」と思うことを共有したい。

namikawa

中村:並河さんが言う「ソーシャルデザイン」に、「いいことをしたい」「世の中のためになることをしたい」というまっすぐな原動力があるとしたら、僕の場合は、「面白いことで世の中をわくわくさせたい」「自分が思う面白いことをシェアしたい」という原動力で動いています。実は二人の欲望は似ていると思うんです。

広告なんて、「装置」にすぎない。たとえば、あるクルマのメーカーがクルマをつくる。そのクルマの売り上げの一部が広告費になる。制作費や媒体費に還流して、広告の制作スタッフがお弁当買ったり、コンビニでおいしいお菓子買ったりする。もらった給料でまたそのクルマを買う……という、お金をぐるぐる回していく装置。だからそこに、面白いとか、いいこととか、世の中のためになることとか、そういう個人の主張がないと、広告は「社会に存在している」だけのものになってしまって、まったく意味がないと思うんです。

並河:面白いことって、普遍的。途上国に手洗い場をつくるサラヤのプロジェクトで、アフリカのウガンダに行ったとき、サラヤの代島さんという宣伝部の方が、ウガンダの子どもたちに「変顔」を教え込んでいたんですよね。その変顔の写真がとても良かった。

中村:まさにグローバルですね。恵まれない子がじっとこっちを見ているような既存のフォーマットに沿った写真よりもずっといい。

並河:「うんちで走るバイクを発明しました」というのも、誰でも面白さが分かる。「社会のために何ができるか」って考えると、まじめになりがちだけど、もっとくだらないことを持ち込んだほうがいいのかもしれない。

中村:ほっこりしたり、感動したり、「なんじゃこりゃー!」があったり。人間はいろいろな感動が好きです。 そういう「自分がいいなあ」と思ったことを共有したい。人生の幸せって、多かれ少なかれ、そういう瞬間瞬間でできていると思うんですよね。今、僕は、「謎解き」がすごく面白いと思っていて、「リアル脱出オンラインゲーム」を手がけたりしています。これも、個人的に「謎解きって面白くない?」と思ったことをみんなでシェアしたい、というシンプルな気持ちなんです。

わくわくするようなものをつくるには、本当は、広告って向いていると思っている。

中村:今年のカンヌで2部門のグランプリを、アメリカン・エキスプレスの「Small Business Gets an Official Day」が受賞したじゃないですか。11月のある土曜日をSmall Business Saturdayと定めて、地元の商店街の小売店にみんなで買い物に行こう!と呼びかけるキャンペーンで、これって、日本で言えば「土用の丑の日」みたいなもので、ある文化を浸透させる、という考え方。このキャンペーンを手がけていた広告会社が、Crispin Porter + Boguskyだったのも、僕はしびれたんですよね。Crispinは、ずっと前から「広告ではなく、カルチャーをつくりたい」という一貫した姿勢で広告に取り組んでいて、その意気込みでこういうことをやっているんだったら、わかるなあと思ったんです。

並河:小売業の再生を目指す「Small Business Saturday」にしても、同じく2部門でグランプリを獲った、人工的な大量生産から自然な農業への転換を告げるChipotleのCMにしても、アメリカの面白い部分は、資本主義、大量生産を押し進めてきたにも関わらず、一方で、そうしたことへの批判を称賛する伝統があって、広告にも、自然とそういうメッセージが入ってくるところ。日本は、自国の抱えている課題を批判している人たちに、称賛を贈ろうという文化はあまりないですよね。

中村:日本は、多くの人が、今あるいろいろな問題に対して、「こういうもんだ」みたいなことをとりあえず受け入れるようになっちゃってるんじゃないかと。国が決めたことについても、「まあ、しょうがないか」と。「この国はいつのまにかそうなっている」という感覚を持っている人ばかりのような気がする。

つまらない既存のフォーマット的なものに対して、僕はずっと抗ってきたんだけれど、本当は、そういう日本の大きな問題に対しても、「違うんじゃねえか!」って何かができるかもしれないって、いま、思いました。今日話して、はじめて思ったんですけど。

並河:最後に広告にもういちど話を戻すと、「つまらない広告でも効率が高ければいい」というところを突き詰めていくと、広告は、本当に、ただお金を回していく装置でしかなくなってしまう、ということ。そういう危険性に対して、ちゃんと「闘っていくこと」が大事なんだろうなあと。

中村:僕が闘っているのは……一言で言えば、「面白くなくてもいいじゃんウェーブ」みたいなもの。広告をつくっていると、いろんなところから、その波が何度もおそってきて、日々それとの闘いです。でも、広告には、まだまだできることがあるはず。個人的に「クソ面白い!」と思ったことを、短時間で、大きなスケールで、みんなでシェアする、ということは、広告だからこそできること。世の中がわくわくするようなものを生み出すのに、本当は、広告って向いていると思っているんです。

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「COMMUNICATION SHIFT」第4回は、箭内道彦さん(すきあいたいヤバい)とお話しします。

タイトルは、「バラバラになった日本を、広告の技と愛でつなげたら」。

9月19日(水)に更新予定です。

並河 進「広告の未来の話をしよう。COMMUNICATION SHIFT」バックナンバー

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