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コラム

東奔西走 関西の編プロ社長奮闘記

版下の時代にあったモノ

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大学を出て情報誌のぴあに就職した。まだその頃はすべてが版下での進行。ペラ原稿に鉛筆で原稿を書き、写植屋さんに入稿して校正をして、どうしようも無いときには旧版(古い版下原稿)から写植を切り貼りして切り抜けていた。

今で言うデザイン入れは写植入稿と同じ意味だったから、この波を乗り越えると版下(初稿)が上がるまで少しだけど空白の時間が訪れた。編集部に寝っ転がってひたすら寝る奴、自宅に戻ってしまう奴、街にナンパに出かける奴など個性豊かな過ごし方が面白かった。

自分が編集長になった時はちょうど DTPの移行期だったが、この“写植待ちの間”ってのがいかに有益であったかを思い知らされたのである。後輩を呼んで「なんでこの文章を書いたのか?」だとか、「デザイナーへの指示はこうしてみたら…」とか諸々のアドバイスの時間があった。現場の編集者もとにかく写植入稿をすればホットとする。編集作業におけるティーブレイクみたいな時間だったのだ。これはその後の色稿待ちの時間にも同じ事が言えた。

80年代後半に一気にDTP化が進み、ポストプリプレスの時代が訪れて我々出版業界は大きな恩恵を受けた代わりにこの大切な“間”を失ってしまった。インターネットと DTPは休息を与えてくれない。次から次へと原稿(誌面)をアップデートして、どんどんそれがインターネットを介して更新されていく。ちょっと立ち止まって企画を見直したり、反省したり、奮起して考え直したりという時間を与えられない今の編集者はちょっと可哀相だと思うことがある。

あの頃の写植代(当時のぴあB5誌面での平均写植ページ単価は2万7000円くらいだったと記憶する)はいったいどこの誰が吸収してしまったんだろう。平成不況のまっただ中であの時間のふんだんにあった頃を懐かしんでしまうのはボクだけだろうか?

石原卓「東奔西走 関西の編プロ社長奮闘記」バックナンバー

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