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「電書が紙の本を再現してどうする!」―編集会議2012年秋号より

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新たなデバイスの登場で、再び注目が集まる電子書籍だが、ただ紙の本を再現するのではつまらない。コンテンツの本質をつかみ、デジタルだからこそできる表現を追求した電子書籍はないのか――『ぷよぷよ』『バロック』など多数のゲーム監督・企画・脚本を手がけ、ライターとして雑誌連載など幅広く活動する米光一成さんに紹介してもらった。
(この記事は『編集会議2012秋号』の記事を一部抜粋・再構成したものです)

従来の「編集」ではない「情報デザイン」

デジタルコンテンツの表現やテクノロジーが進化しているのに、電子書籍の多くは、記事を流用展開した、紙の再現に留まっています。それはそれで、良書もありますが、新しいステージへ進むのならば、ページの概念や紙メディアの枠組みを超えた、デジタルの特質を生かしたインターフェースをつくったほうがいい。

電子書籍は、写真や映像、音声、アニメーションなどでインタラクティブに見せられますが、デジタルならではの編集、情報統合の方法として面白いのが、「the history of JAZZ」。ジャズの歴史を紐解くだけでなく、アーティスト情報、曲の試聴、プロモーションビデオ視聴もできる電子書籍です。制作者が、素材のすべてを、書いてもいなければ、つくってもいないところがミソ。原稿は「ウィキペディア」、動画は「YouTube」、音楽は「iTunes」など、インターネット上にあるコンテンツからセレクトし、情報を整理してデザインしています。

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“the history of JAZZ”

初心者から熱狂的なファンまで楽しめる、ジャズの今日に至るまでをインタラクティブなタイムラインで表現した「iPad」向けアプリ。横断型スクロールは直感的に操作できる上、年代ごとの特徴がわかりやすい。ウッドストック版もある。850円。


インターネットで調べるよりも読みやすく、ジャズの歴史を知るには便利です。同じ方法論で物理学入門の電子書籍をつくったり、いろいろなジャンルに応用できそう。これまでの“編集”の観点とは違う方法論が生まれてきています。

デジタルの特質であるタイムラインを利用した企画では、「いつも、どこかで」と「くらしのこよみ」が秀逸です。アプリを立ち上げた日付や時間に応じて、その時々に合わせたコンテンツを読める仕組み。

「いつも、どこかで」は、日常生活を静かに描いたマンガで、現実とシンクロしているような、不思議なライブ感があります。目次が「時間」になっているのが新しい。その時間が来るまで読めない制約が、かえって蒐集欲を刺激し、つい読み進めてしまいます。

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「いつも、どこかで」

日常の小さな出来事や風景を、1日・24時間分ほのぼの描いたマンガアプリ。アプリを立ち上げた時間と同じ時間帯のストーリーが読める。一度読むと後からいつでも閲覧できるようになり、それぞれの時間帯の物語がつながっていく。文化庁メディア芸術祭マンガ部門審査委員会推薦作品。250円。


「くらしのこよみ」は、日本で古くから用いられてきた季節の区切り方、「二十四節気」と「七十二候」にそって更新される暦アプリ。日付や曜日に縛られない、古くて新しい時間感覚が楽しめます。

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「くらしのこよみ」

「東風解凍」、「桃始笑」、「土潤溽暑」、「楓蔦黄」――自然の変化を表す七十二候の言葉をベースに、その季節を堪能できる写真、図像、俳句や読みものを巻物仕立てで紹介するアプリ。内容は七十二候に合わせて5日ごとに変わり、更新日を過ぎると、その前の候の巻物は見られなくなる。無料。


コンテンツの本質を正面から捉え、最も伝えやすいかたちとは何か。本の構造ではなく、自由な発想で、新たな概念として徹底的に検証すること。そういった工夫を丁寧にやるかどうかが、読まれる電子書籍とそうでないものを隔てる境界線ではないでしょうか。

米光一成(よねみつ・かずなり)
『ぷよぷよ』『魔導物語』『バロック』『トレジャーハンターG』など多数のゲームの監督・脚本・企画を手がける。立命館大学映像学部教授として教鞭をとるほか、ライターとして雑誌の連載や寄稿など幅広く活動中。著書に『自分だけにしか思いつかないアイデアを見つける方法“企画の魔眼”を手に入れよう』(日本経済新聞出版社)などがある。個人ブログは「こどものもうそうblog


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