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「白い恋人=石屋製菓」というイメージ定着へ、ブランドの確立が課題〜シリーズ「ブランドマネジメントの今」

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石屋製菓の場合

国内企業によるブランドマネジメントの取り組みを紹介する本連載。今回は北海道の銘菓「白い恋人」で知られる、石屋製菓(札幌市)によるコーポレートブランディングの取り組みを紹介する。2008年に新たな企業ロゴなどを導入し、商品開発の強化や販路の拡大に取り組む同社の課題とは。

※『宣伝会議』15日発売号にて、宣伝会議主催のブランドマネージャー育成講座と連動して連載中のシリーズ「日本企業とブランドマネジメントの今」より抜粋。本記事は2012年8月15日発売号に掲載されたものです。

観光需要増加とともに土産物の定番として成長

1976年の発売以来、北海道の銘菓として長く親しまれてきた「白い恋人」で知られる石屋製菓。売上の7割を占める「白い恋人」のほかにも、チョコレート菓子の「美冬」、バウムクーヘンの「白いバウムTSUMUGI」、「白い恋人」と同様にホワイトチョコを用いた「白いロールケーキ」などを製造・販売している。

販路は北海道内の直営店、百貨店内ショップ、500店舗ある道内の特約店と空港が中心だ。道外でも主要百貨店などが主催する北海道物産展への出展、成田空港・羽田空港といった国際線のギフトショップでも販売してきた。

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「白い恋人」のほか、チョコレート菓子の「美冬」、バウムクーヘンの「白いバウムTSUMUGI」、
「白いロールケーキ」が主力商品となっている。

現在では銘菓のイメージが強い同社だが、1947年の創業時は政府委託のでんぷん加工業を営んでいた。その後、ドロップや駄菓子の製造に携わるものの、1960年代には大手菓子メーカーの製品が北海道にも流通するように。価格競争に巻き込まれない付加価値の高い製品づくりを目指す中で、徐々に高級洋菓子の製造を主軸とした現在の事業へとシフトしていった。

やがて1972年の札幌オリンピック開催をきっかけに、北海道の観光地としての人気が高まっていく。それに合わせて、土産物用銘菓の需要が拡大していった。この流れの中で生まれた商品が、ホワイトチョコをラングドシャクッキーでサンドした「白い恋人」だ。

ホワイトチョコは当時、日本国内で人気を集めていたお菓子であり、クッキーで挟んだのは手を汚さずに食べられるようにという配慮から。「白い恋人」という印象的なネーミングは、詩を書くのが好きだったという創業者の石水幸安氏がスキーをしている時、降ってきた雪を「白い恋人たち」と表現したのがきっかけだ。

「藍色をベースに雪の結晶のデザインをあしらったパッケージが今では『白い恋人』の象徴となっているが、お菓子といえば白いパッケージが主流だった当時としては斬新なデザインだと言われていた」と代表取締役副社長の石水創氏は説明する。

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製品の次は「企業」のブランド力強化を目指す

近年は1995年に本社敷地内に集客・観光施設として「白い恋人パーク」をオープンしたほか、96年から現在まで地元のJリーグチーム「コンサドーレ札幌」のスポンサーも務めるなどさまざまなブランディング活動に取り組んできた。

そのような中で2007年に賞味期限の不正表示といった一連の不祥事が発覚する。コンプライアンス対応を強化した上で08年には新たな企業ロゴマークをお披露目するなど、改めて「ISHIYA」ブランドを再生し、広めていくための活動をスタートさせた。

「白い恋人の認知度は全国で98%と非常に高いものの、まだまだ企業名の認知度は低い。“白い恋人といえば石屋製菓、あの石屋製菓が出している商品なら間違いない”といったイメージの醸成を目指して、もっとコーポレートブランドを広めていきたい」。北海道内ではスポット、番組枠ともにテレビCMなどを実施するほか、店頭でも新たなロゴマークなどの浸透を図っている。

さらに2年前に専門部署として「商品開発室」を設置。これまでの洋菓子製造に長けた職人の技術とともに、ネーミングやパッケージ、販促活動を含む戦略的な商品開発をより強化していきたいと考えている。

「日本のお土産」の定番へ、道内需要の喚起も課題に

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(左から)商品開発室課長の鴨川靖司氏、代表取締役副社長の石水創氏、製造部資材課係長の伊藤隆広氏。

直近では東日本大震災による観光需要の減少が見られたものの、商品の売上は横ばいで推移している。注目すべきは、チャネル別の売上構成比が変化しつつある点だ。「成田や羽田など国際線のギフトショップにおける売上が伸びている。海外、特に東アジアからの観光客には自国へのお土産として認知されており、指名買いしてもらえるケースが増えてきた」といい、“日本のお土産=白い恋人”というイメージが定着しつつあるようだ。

将来は海外進出も視野に入れつつ、国内での需要喚起も重点課題となっている。観光客による消費に期待するだけでなく、お中元やお歳暮といった地元での贈答のシーンでも用いられるよう“直需要”をより促す施策にも取り組んでいく方針だ。

シリーズ「ブランドマネジメントの今」